『呪術廻戦』9巻「もうあの人ひとりでよくないっすか?」最強が故に軽蔑される五条悟の過去編

呪術廻戦9サムネ

文=さわだ 編集=アライユキコ 


作者・芥見下々の復調を願いながら(連載再開決定!詳しくは本文で)、映画版の公開(今年冬の予定)を待ちながら『ジャンプ』大好きライター・さわだが『呪術廻戦』(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)の既刊を1巻ずつ振り返っていく企画。今回は9巻、人気キャラ五条悟と因縁の夏油傑の過去が描かれる(以下考察は、9巻までのネタバレを含みます)。

【関連】『呪術廻戦』映画を待ちながら1巻から読み直す「第1話から傑作」感がないのが逆にすごい

芥見先生、無理はしないで

『呪術廻戦』において五条悟(ごじょう・さとる)の役割は大きい。作中最強キャラであり、強さのインフレの天井役でもあり、人気も一番だ。ある意味では、主人公の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)よりも物語の中心に居座っている。

9巻は、そんな五条と、元盟友で敵対関係にある呪詛師・夏油傑(げとう・すぐる)の過去が描かれた。主人公よりも他のキャラクターが人気が出ることは少年漫画においてよくあることだが、9巻を読んでいると『呪術廻戦』はそれを狙っていたように感じる。もちろん作者の芥見下々が、虎杖より五条に思い入れがあるとか肩入れしているとかそういうわけではないが。

『呪術廻戦』4巻と16巻はついになっている
『呪術廻戦』4巻と16巻の表紙は、五条と夏油の対になっている

『週刊少年ジャンプ』では6月から芥見下々の体調不良で休載していたが、8月2日発売の35号で復帰となる予定。めでたいことではあるが、無理だけはしないで欲しい。たぶんもう少しくらいならファンも待てると思う。

「過去編」を免罪符に残虐描写の筆がノる

呪術高専に在学中の五条と夏油は、星漿体(せいしょうたい)と呼ばれる少女の護衛任務に就く。呪詛師「Q」を相手に爽快感あふれる無双っぷりを見せるが、五条は宗教団体である盤星教「時の器の会」に雇われた伏黒甚爾(ふしぐろ・とうじ)に刀で身体を貫かれてしまう。

初登場の甚爾は、後に五条の教え子となる伏黒恵(ふしぐろ・めぐみ)の父親(パパ黒とも呼ばれる)。呪力が完全に0という特異体質で、代わりに驚異的な身体能力と五感を手に入れている。そのため気配が読み取れず、不意をつかれた五条は刺されてしまった。五条いわく「ニットのセーターに安全ピンを通したみたいなもん」だそうでその後も問題なく戦うが、結局はパパ黒に八つ裂きにされて完敗してしまう。

『呪術廻戦』<8巻>芥見下々/集英社(62〜70話)
伏黒恵の父・伏黒甚爾(ふしぐろ・とうじ)が表紙の<8巻>芥見下々/集英社

だが、どれだけ身体をバラバラにされてもこれは過去の話。五条が死んでいないのはわかりきっている。喉をブッ刺され、そこから下にオロすように胴体を真横に斬りわけられ、おまけに足と頭部を「ザクザクザクザクッ!」と貫かれても、読者は「おいおいおい、これでも五条は死なないんかい!」という目線で読む。過剰に演出するすればするだけパパ黒の残酷さと強さが際立つが、相手の五条の格は落ちず、どっちの強さも立てられる作者にとってやりたい放題のシチュエーションだ。八つ裂き描写も筆がノっている。

孫悟空(『ドラゴンボール』)でさえ言われなかった言葉

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