『ヴィンチェンツォ』8話『パラサイト 半地下の家族』のモノマネだ!シリアスの後にはギャグ、それが『ヴィンチェンツォ』流

2021.6.5


『パラサイト 半地下の家族』のものまね

義兄ジュヌの影響か、ハンソ(クァク・ドンヨン)もサイコっぷりが増してきた。バベル建設に恥をかかせたとして、冷凍室に監禁されているアントカンパニーの面々。経理の女性(チョン・ジユン)まで一緒に監禁されてしまった。凍死寸前で励まし合うパク代表(キム・ヨンウン)たち。BGMとして4話でホン・ユチャン(ユ・ジェミョン)が亡くなったときに流れていたモーツァルトの「レクイエム」から「ラクリモーサ(涙の日)」が流れていたが、これはオペラ・ギャグ。

ここで新しい登場人物がひとり。ミョンヒがバベルグループへの融資を強引に依頼するシングァン銀行の若き頭取、ファン・ミンソンだ。演じるキム・ソンチョルはミュージカルの舞台で活躍後、ドラマに進出し、『風が吹く』(19年)や『ブラームスが好きですか?』(20年)などでメインキャストを務めたほか、ソン・ジュンギ主演の『アスダル年代記』(19年)にも出演している。

ミンソンが「おばさん」と呼ぶのは余命わずかなヴィンチェンツォの母親、オ・ギョンジャ(ユン・ボクイン)だった! 彼女にセクハラを働いた挙げ句に死んだのがミンソンの父親で、ファン一家は彼女に罪を着せて知らぬ顔をしていた。刑の執行停止を知って脅しに来た息子のミンソンに、オ・ギョンジャが死力を振り絞って掴みかかるシーンは鬼気迫るものがあった。こういうシーンを作るのが韓国ドラマのすごいところ。

シリアスなシーンのあとにはギャグを入れるのが『ヴィンチェンツォ』流。チャヨンが後輩のソ弁護士に『パラサイト 半地下の家族』のパク社長(イ・ソンギュン)のものまねをさせるシーンがあるが、ソ弁護士役のヤン・スンウォンは声帯模写が有名なコメディアン。3話では『タチャ』のものまねをさせられていた。

めくるめくBL展開!?

ミンソンはマザコンで人間不信の上、デートDVの常習犯という最悪の男だった。元検事のミョンヒは彼の弱みを握っていたというわけ。

チャヨンが考えた同性愛者のミンソン攻略法、それは男の色気を利用して近づくことだった。「絶対に嫌だ」と抵抗するヴィンチェンツォを説得して、乗馬が趣味のミンソンのもとへ向かわせる。

逆光の中、スローモーションで白馬に乗って現われるヴィンチェンツォはまさしく王子様。ミンソンならずとも乙女の気持ちで見とれてしまう。ふたりが近づくたびに流れるムーディーなBGMはAaliaの「Adrenaline」(イタリア語バージョン)。おもしろくてずるい。

こんなことされたらミンソンじゃなくても落ちる/Netflixオリジナルシリーズ『ヴィンチェンツォ』独占配信中
こんなことされたらミンソンじゃなくても落ちる/Netflixオリジナルシリーズ『ヴィンチェンツォ』独占配信中

ヴィンチェンツォが名乗る偽名の「テ・ホ」は、ソン・ジュンギ主演の映画『スペース・スウィーパーズ』の役名キム・テホから採られたもの(遊園地でミンソンが「それいけ、スペース・スウィーパーズ!」と叫ぶ)。弁護士事務所の名前が「オンリー・ユー」ってのが本当にくだらない。

ハードなストーリーなのに、やっていることはギャグそのもの。だけど、すぐさまシリアスな展開になる。酔っ払ったミンソンが語るのは、ヴィンチェンツォの母親が無実の罪を着せられた話だった。嫌がっていたヴィンチェンツォがミンソンの話を聞き、スイッチが入る流れもうまい。

遊園地デートでは、ニットキャップに前髪ありというカジュアルな装いのヴィンチェンツォにミンソンが抱きつきまくる、めくるめくBL展開。ミンソンを心配する体で、ヴィンチェンツォはバベルグループへの融資をやめさせようとする。安い芝居だが、まんまと乗ってくるミンソン。雨の中でヴィンチェンツォに抱きついて、ついに融資をやめることを宣言してしまう。手を頬に当てられて至福の表情を浮かべるミンソン──。とことん悪いヤツなのに、なんだかかわいくなってきたぞ。

ニットキャップもお似合い/Netflixオリジナルシリーズ『ヴィンチェンツォ』独占配信中
ニットキャップもお似合い/Netflixオリジナルシリーズ『ヴィンチェンツォ』独占配信中

二転三転、勝つのはどっちだ?

そして迎えたバベルグループとシングァン銀行の融資協定の調印式。ジュヌやミョンヒらが見ている前でミンソンにとどめを刺したのは、ヴィンチェンツォがスマホの電光掲示板で流した「テ・ホは君を信じてる 愛してる」というメッセージだった。「署名しません」と宣言し、記者たちの前で「バベルグループは不誠実な悪徳企業」と言い放つミンソン。

ヴィンチェンツォの完全勝利かと思われたが……そこへ登場したのが会長であるミンソンの母親! 彼女がミンソンを一喝して融資協定に署名してしまった。すべてはミョンヒの仕掛け。過去の醜聞をもとに権力者を従わせたのだ。

しかし、まだ勝負は終わらない。失意のミンソンをクムガ・プラザの面々が誘拐&監禁! 彼が大の苦手だというゾンビに襲わせる。もちろん、ゾンビたちはレリー院長(キム・ソルジン)とクムガ・プラザの女性たちだ。そして、記者たちの前でミンソンを暴行の容疑で逮捕させる。通報者はヴィンチェンツォ・カサノ。ミンソンの耳に顔を寄せて囁く。

「ヴィンチェンツォ・カサノ。俺だよ」

ミンソンは去り、ヴィンチェンツォ、チャヨン、ジュヌ、ミョンヒ、ハンソ、ウサンのハン代表(チョ・ハンチョル)が一堂に会する。ミョンヒが殺された父親のことを持ち出してチャヨンを挑発し、チャヨンは堂々と宣戦布告。完全に目が据わっているチャヨンを守ろうとするヴィンチェンツォ。ふたりそろって漏らす不敵な笑みがたまらなくカッコいい。戦いはこれから本格化するぞ。デデン!

『ヴィンチェンツォ』予告編 - Netflix


この記事の画像(全27枚)



  • ヴィンチェンツォTOP

    『ヴィンチェンツォ』

    出演:ソン・ジュンギ、チョン・ヨビン、テギョン
    原作・制作:キム・ヒウォン、パク・ジェボム

    関連リンク


この記事が掲載されているカテゴリ

大山くまお

Written by

大山くまお

1972年生まれ。名古屋出身、中日ドラゴンズファン。『エキレビ!』などでドラマレビューを執筆する。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

⾃⾝の思想をカタチにする「FLATLAND」

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

「BiSH」元メンバー、現「CENT」

アーティスト

セントチヒロ・チッチ

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)

最新ニュースから現代のアイドル事情を紐解く

振付師

竹中夏海

平成カルチャーを語り尽くす「来世もウチら平成で」

演劇モデル

長井 短

子を持つ男親に聞く「赤裸々告白」連載

ライター・コラムニスト

稲田豊史

頭の中に(現実にはいない)妹がいる

お笑い芸人「めぞん」「板橋ハウス」

吉野おいなり君(めぞん)

怠惰なキャラクターでTikTokで大人気

「JamsCollection」メンバー

小此木流花(るーるる)

知らない街を散歩しながら考える

WACK所属「ExWHYZ」メンバー

mikina

『テニスの王子様』ほかミュージカル等で大活躍

俳優

東 啓介

『ラブライブ!』『戦姫絶唱シンフォギア』ほか多数出演

声優

南條愛乃

“アレルギー数値”平均の約100倍!

お笑い芸人

ちびシャトル

イギリスから来た黒船天使

グラビアアイドル/コスプレイヤー

ジェマ・ルイーズ

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。