『ヴィンチェンツォ』8話『パラサイト 半地下の家族』のモノマネだ!シリアスの後にはギャグ、それが『ヴィンチェンツォ』流

2021.6.5
Netflixオリジナルシリーズ『ヴィンチェンツォ』独占配信中

文=大山くまお 編集=アライユキコ 


『愛の不時着』超えを噂される大人気ドラマ『ヴィンチェンツォ』を韓ドラ大好きライター・大山くまおが各話を解説する土曜日。ヴィンチェンツォ&ホン・チャヨンの痛快な立ち回り、かっこいい煽り文句、時にギャグのの応酬など見どころだらけの8話を振り返っていくと、え、まさかのBL展開?(8話までのネタバレを含みます)。

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“王”と“民衆”の戦い

イタリアからやってきたマフィアの顧問弁護士が、韓国の悪辣な大企業グループと戦う韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』。背景や小道具の解説なども含めてじっくり振り返っていく。今週は第8話。シリアスな展開とギャグとBLが渾然一体となって大爆発したエピソードだった。

第7話のラストでは、立ち退きを迫られているクムガ・プラザの住人たちがバベルグループの下請け、アントカンパニーのチンピラを撃退し、その姿がドラクロワの名画『民衆を導く自由の女神』の構図と完全に一致しているという芸術的なギャグをぶちかましていた。

もちろん、ただのギャグではない。『民衆を導く自由の女神』はフランス7月革命がテーマ。貴族や聖職者を優遇する政策に怒った民衆が蜂起して国王シャルル10世は退位した。現代の韓国で“王”を名乗るのは、莫大な資産と巨大な権力を持つバベルグループの真の会長、チャン・ジュヌ(オク・テギョン)だが、なんの力もないクムガ・プラザの人たちだってやられっぱなしではないということだ。

オク・テギョンのインスタグラムより

ヴィンチェンツォとチャヨンの煽り芸

すっかりヴィンチェンツォ(ソン・ジュンギ)の相棒となった弁護士のホン・チャヨン(チョン・ヨビン)はマフィアのことが気になる様子。「さすがマフィア!」と言ってヴィンチェンツォにたしなめられると「マカロン! マカロン!」と連呼するのがかわい過ぎる。「今日も救ってくれてありがとう」と素直に礼を言うチャヨンにヴィンチェンツォはこう返す。

「恩返ししてくれ。マフィアは受けた恩を必ず返すんだ」

立ち去るヴィンチェンツォを見送る目は、恋をしているというより、頼もしい父親を見ているよう。

一方、ヴィンチェンツォに負けて、ジュヌになじられた悪徳弁護士チェ・ミョンヒ(キム・ヨジン)は怒り心頭。ジュヌに「辞めるくらいなら首を括ります。私もあなたと同じで生まれてからずっと負け知らずなんです!」と啖呵を切る。ジュヌは大喜びだ。

「俺は弁護士より、悪魔が必要なんです」

しかし、サイコパスのジュヌと“デビル精神”の持ち主のミョンヒを前にしても、ヴィンチェンツォとチャヨンは一歩も退かない。むしろ、煽り芸は一枚も二枚も上手。バベル化学の補償案をめぐる交渉のテーブルでも、ヴィンチェンツォが「沈没した船に穴を開けるのは意味がない」と言えば、チャヨンは「沈みゆく甲板の上でバイオリン演奏でもどうぞ」と言ってミョンヒとジュヌを煽りまくる。

さらに「好きな韓国の言葉があるんだ」とヴィンチェンツォ。チャヨンに顔を近づけて一緒にこちらを向き、声をそろえてひと言。

「“まだ懲りてない”」

平静を装いながらジュヌがパソコンに「I WILL KILL HIM today!!!!! FOOK!!!!!!!」(“この男を殺してやる!”)と打ち込んでいるのがたまらなく痛快だ。

ヴィンチェンツォとチャヨンの煽り芸

『パラサイト 半地下の家族』のものまね


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