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池田家総出のアフタートーク、開催決定するも……
『姿』の後、母と父は以前より仲よくなったというか、お互いの情報をいち早く共有していることに気付きました。今度の『姿』再演ではアフタートーク出演の依頼を母に出したのですが、その次の日に父にも依頼を出すと「聞いたよ」とすでに詳細を知っていたりと、母と父の共有事項が増え、結束が強くなっていることを感じました。晴れて、5月23日の上演後には、実物の池田母と池田父が登壇するアフタートークを開催する運びとなりました。
しかし、新型コロナウイルス感染症予防ワクチン接種への対応や緊急事態宣言の延長に伴う業務が増えたため、5月12日に母から「自治体の職員としての本職を今は優先させていただきたい」との連絡をもらい、今回は登壇を見送ることとなりました。
『姿』の劇中で母役を演じる高野ゆらこさんが代わって登壇します。母から事前に預かった質問や、『姿』初稿の脚本へのダメ出しや添削について、今回のアフタートークでさまざまお伝えしようと考えています。また、兄にもアフタートークに登壇してもらうことになりました。
以前、演劇の劇中歌を兄にお願いしたことがあります。兄が公務員として働きながらたまに曲を作ってネットに上げていたことを知り、またその曲がとてもよかったのです。そこまで話したこともなかったし、仲がいいというわけでもなかったけど、曲を作ってほしいとお願いしたときはうれしがっていて、今まで兄とLINEした数の100倍ぐらい多くLINEし合って、でき上がった曲を聞いたときは、兄でなくミュージシャンとして彼を尊敬したほどでした。
兄弟ではなく、共に作品を作る相手として会話するようになり、共感できる部分がたくさん生まれました。「実は仕事だけじゃなくてこういうこともしたかったんだよね」と言って笑った兄の顔を見て、こういう瞬間を描きたいと思いました。自分の知らなかった人の新たな側面を知った現実の出来事を、今回の『姿』再演でも描いていきたいです。
本来ですと、母は今年退職だったので、自由の身になっていろいろなことに挑戦したいと意気込んでいました。なので芸劇進出の暁には母本人にもぜひ出演していただこうと考えていました。ですがコロナの影響もあってもう1年職場に留まることになり、今もまだ現役で働いております。そういったことも含めて、初演時に2021年の様子を描いていた『姿』を、現在の視点から改めて作り直し、母や誰かがいつかやりたいことを実現するための願いを描きたいと思っています。
仕事をつづけていても、定年を迎えたあとも、芸術が側にあることを母は重んじているし、それが少なからず救いになっていたと思います。それは自分も同じで、生きていくなかでの興味を生むものであったし、「こうだ」と決めつけていたものを解したり、「いややっぱりこうだ」と自分の中で再確認できるものなので、上演を機に、改めて今後を考えて探っていきたいです。
2020年に起きたことと「演劇では食べていけない」と聞くこと
2019年の初演時には台風に見舞われましたが、今回はコロナに苦しんでいます。2020年は、たび重なる公演中止を中心に、頭が重くなることばかりでした。メンバーの精神的不安を解消すべくサポートの手を尽くせど、抱え過ぎたのか自分も混乱してコントロールできなくなることもありました。本当にさまざまな方々に迷惑をかけたし、傷つけてしまったときもありました。誰かの言葉に耳を傾けたはずなのにしっかりと理解できていなかったり、自分が「こうしたほうがよいです!」と言っても耳を傾けてくれないことに「信頼されてないんだな」と必要以上に落ち込み、気持ちが下がる一方だった気がします。
今もまた緊急事態宣言下で、「演劇では食べていけない」ということを以前にも増して何度も聞くようになりました。観客も公演する側も不安がつづくなか、予算も収入の見通しが確実でなかったりと「なぜやるのか」という問いを常に持ちつづけています。
ただ、団体としても自分としてもおもしろいことをこれから何年先もやっていきたいし、更新していきたい。それに、ゆうめいのメンバーはめちゃくちゃおもしろいという思いには変わりがありません。そのおもしろいは「笑える」だけではなくて、つらいと思っていたことが別の意味合いに変わるおもしろさでもあります。
さまざま書いてきましたが、「食べていけない」と言われながらも、演劇をつづける理由は、家族や演劇といった枠を飛び越えて、その人の生きてきた今までを知ることを現在猛烈に求めているからです。
ゆうめいの由来は「夕と明」「幽明」人生の暗くなることから明るくなるまでのこと、「幽冥」死後どうなってしまうのかということからきています。「有名になりたいから“ゆうめい”なの?」と普段思われがちの名前から、由来のように「物事には別の本意が存在するかもしれない」という発見を探究する団体として、これからも演劇を作っていく所存です。
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