わかり合えなくても、私たちは友達になれる。『スキップとローファー』が描く“フラットな目線”

2021.4.14


大人になってもすれ違いはあるけれど

2021年3月23日に発売された最新5巻は、登場人物それぞれの過去や思いが交錯した慌ただしい文化祭を終えて、クリスマス・冬休みシーズンへ。

「女の子とちゃんと友達になるのは初めてかも」と話す志摩くんとみつみちゃんの友情は、これまでと違う方向へと色づいていく予感が。高校生ならではの「とりあえず彼女が欲しい!」というど直球な欲望、女の子のおしゃれ、ちょっと気になる先輩の存在など今回も人間同士のやりとりが丁寧に描かれている。「うん、いいね」「今日めっちゃくちゃかわいいね!」など、壁がなくなってきたからこその親密なやりとりも増え、自然とこちらも素直な気持ちになる。

そして、物語に欠かせない存在であるみつみちゃんの叔母・ナオちゃんについてのエピソードも。みつみちゃんの悩みにいつも的確なアドバイスをくれる頼れるナオちゃんは、トランスジェンダーで、現在は東京でスタイリストとして活躍する。「地元に嫌な思い出がいっぱいある」という彼女の学生時代の姿は、みつみちゃんたちの物語とまた違った視点があり、今後も語られていきそうだ。

人間関係を育んでいくことは、大人になっても難しい。言葉がすれ違ってしまったり空気を読みすぎて疎遠になってしまったりすると、そこからもう一度関係を結び直すことはとても体力がいる。みつみちゃんたちだって、言いたくないことを口走ってしまったり相手を勘違いさせたりして、眠れなくなるほど悩む。

だけれど、遠慮せずに呼び止めて、面と向かい合って自分の気持ちを話すことを忘れない。意見の正解/不正解はない、それよりも大切なまっしろでまっすぐな行動が、時には必要なことをいつだって教えてくれる。

『クイック・ジャパンvol.155』(4月24日より順次発売)では、『スキップとローファー』(講談社)の作者・高松美咲先生のインタビューを掲載しています。


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羽佐田瑶子

(はさだ・ようこ)1987年生まれ、執筆・編集。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体は『クイック・ジャパン』『She is』『BRUTUS』『TV Bros.』『CINRA』など。岡崎京子と女性アイドルなど、ロマンティックで力強いカルチャーや人が好き..

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