『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の始まりは『アルピーANN』にあり? 8年前からのサーガを辿る
2021年3月末でテレビ東京を円満退社したテレビプロデューサーの佐久間宣行。『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』など数々のバラエティ番組を手がけ、映画・マンガ・ドラマなど業界でも屈指のエンタメウォッチャーとしても知られている。
そんな彼がパーソナリティを務める『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』が今春で3年目を迎える。言わば一介のおじさん会社員であった佐久間氏はなぜ、ANNパーソナリティになることができたのか。
そのきっかけは2013年7月11日深夜に放送された『アルコ&ピースのANN0』にあるという──。
何気ないツイートがすべてのキッカケに
『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』はこの春で3年目に突入する。テレビ界のプロデューサー、しかも2021年3月末までテレビ東京の社員だった人間をパーソナリティに起用するのはラジオ界全体を見ても異例だ。なぜ佐久間が『オールナイトニッポン(ANN)』のパーソナリティになったのか。本人の口から何度も語られてきたが、全体の流れを知るのは一部の古参リスナーだけだろう。この春から新たに聴き始めるリスナーのためにも、改めて一介のテレビマンがパーソナリティになった過程を紐解いてみたい。
ラジオのディレクターを志した佐久間が、三次面接でニッポン放送を落ち、その後、テレビ東京に入社したのは有名な話だ。テレビマンになってからもラジオ愛は失われず、趣味が高じて、2010年に自身がプロデューサーを務める『ゴッドタン』(テレビ東京)内で「芸人ラジオサミット」の企画を実施。ほかにも担当する番組と連動したWEBラジオを立ち上げている。また、2013年6月には『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)に松丸友紀アナと共にゲスト出演。同時期に、『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)にも電話出演している。
当時は時折、ツイッターで番組感想をつぶやく程度で、ラジオに直接深い関わりはなかった。そんな佐久間は2013年7月、望むと望まざるとにかかわらず、深夜ラジオに飲み込まれることになる。舞台になったのは『アルコ&ピースのANN0』だ。
7月11日、ちょうどアルコ&ピースは『ゴッドタン』の収録に参加し、その直後に生放送があったため、番組内で佐久間の名前が出たが、ここでは普通のトークで終わっている。その翌週の放送中、佐久間が「アルコのオールナイト聞きながら、寝る」とツイッターでつぶやいたのがすべてのキッカケだった。ある意味、このつぶやきが今につながるのだから、人生なんてわからないものだ。
リスナーがそのつぶやきをめざとく見つけ、番組に報告したことで事態は動き出す。リアルタイムで聴いていたハガキ職人たちの嗅覚がなぜか反応したのだ。佐久間のなりすましメールを皮切りに、当時は本人の横顔だったツイッターのアイコンを「カッコつけてる」とイジるなど投稿が殺到。アルコ&ピースが必死に止めに入るが、火に油を注ぐ結果になる。翌週以降の放送にも飛び火。佐久間自身はほぼ何も反応していないにもかかわらず、番組内で定期的に名前が出るようになった。
昔から深夜ラジオではふとしたトークから、芸能人・著名人に話題が集中し、それがコーナーに発展したり、ゲスト出演につながったりするパターンは多い。佐久間が特殊だったのはテレビ業界の裏方で、かつ番組のリスナーだった点。テレビマンをイジるのは芸人ラジオの伝統だが、それはパーソナリティにごくごく近い相手に限られる。佐久間の場合、アルコ&ピースと仕事でほとんど絡んだことがない状態だった。
それでも大きな波が起こった理由は、佐久間がラジオ好きだったからではないだろうか。同じリスナーならば親近感が生まれ、ラジオのノリがわかっているだろうから、躊躇する必要もない。ハガキ職人の筆は過剰なほど踊った。
『アルコ&ピースのANN』シリーズの特徴は、“茶番”と呼ばれるコント仕立ての展開。毎週異なるメールテーマが設けられ、リスナーからの反応によってそのあとの流れが二転三転し、とんでもない神回が生まれることもあれば、尻つぼみで終わることもある。まさにリスナーのメールにすべて委ねる番組スタイルだった。ちなみにこの番組のディレクターは石井玄、構成作家は福田卓也。のちに佐久間のANNを担当するふたりである。
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