「こんなボロ雑巾みたいな出方が俺の夢のANNじゃねえぞ」
この番組と佐久間の間に起きた大きな事件が3つある。ひとつ目は2013年8月22日(※編集部注:以下、ANNに関する日付けはすべて該当日の深夜を指します)の「ハワイあるある&ステーキないない」事件だ。
この日のメールテーマは、ハワイロケ直後のアルコ&ピースに合わせた「教えてハワイ情報」。ハワイアンミュージックがかかるなか、真偽不明のハワイ情報を紹介しつつ、自宅で常夏気分を味わうというユルい内容だった。しかし、翌週のスペシャルウィークの内容にたまたま反応した佐久間のつぶやきが、“速報”として番組に報告されると、内容が一変。「コネ入社」「アホの佐久間」「佐久間の野郎」など挑発的なメールが続々と届き、「コネ入社って言われるのが悔しいなら、ツイッターでハワイあるあるをツイートしろよ」という要求まで紹介されたのだ。
ほとんどの人間たちが寝静まった深夜4時に起きた出来事。本来なら冗談として処理されるはずが、引くに引けなかったのか、それともラジオリスナーの血が騒いだのか、佐久間は「ホテルのプールの外国人、思いのほかみんなタトゥーが入ってて、怖い」と“ハワイあるある”をツイッター上で絞り出した。
すると、リスナーの要求はさらにエスカレート。番組内で「ハワイのステーキがおいしかった」という話題が出た流れで、「今度は“ステーキないない”をツイートしろ」というメールが差し込まれる。本人は「思いつかないよ…」とツイッターでいったん白旗を挙げたものの、アルコ&ピースはそれを許さず。最終的に佐久間は番組終了7分前に「ステーキないない。どの店にも裏メニューでシェフのおしっこソースがある」とつぶやき、エンディングで紹介され、一応の決着を見た。
この日、“佐久間宣行”の名前は深夜ラジオリスナーにしっかりと刻まれ、共通用語となった。もちろん佐久間自身はほとんど反応していなかったが、この番組内では“準レギュラー”のような存在になったのだ。
『アルコ&ピースのANN』は人気を得て、翌年から1部に昇格した。定番になったことで、佐久間への激しいイジリは沈静化したが、執念深いラジオリスナーたちはその存在を忘れていなかった。そんな思いが一気に爆発したのが2014年10月17日の「佐久間乱入事件」である。
この日のメールテーマは「アイ・アム・ヘラクレス選手権」。“ヘラクレスリスナーから我こそはヘラクレスというエピソードを送ってもらう”という企画で、キング・オブ・ヘラクレスに選ばれたリスナーには、発売したばかりだった佐久間の著書『できないことはやりません ~テレ東的開き直り仕事術~』をサイン入りでプレゼントすると告知された。
かつてはリスナーを止めていたアルコ&ピースも、このころになると慣れたもの。気を遣わずに過剰なほど佐久間をイジり倒してリスナーを扇動する。本の帯からめざとく「企画書は“ラブレター”」という文言を見つけたのもこのふたりだ。久々の展開を受けて、リスナーからも「グラビアアイドルとやれる方法が書いてある」「圧力をかけて宣伝させているのは強要罪」「本の感想をリツイートしているのはダサい」「ツイッターアカウント名のノブロック(@nobrock)ってカッコいいの?」と喜々としたメールが集まった。ここから番組内での佐久間の愛称……いや、愛のある蔑称が「ノブロック」となる。
なんとか方向性を修正し、リスナーに電話出演させて「アイ・アム・ヘラクレス」と叫ばせたものの、爆発的には盛り上がらない。この番組においてリスナーと電話をつなぐのは鬼門。企画は失敗に終わるかと思われたそのときだった。深夜2時半過ぎ、突然佐久間が乱入してきたのだ。
テレビ東京に報告せず、自宅からタクシーを飛ばしてやってきたという佐久間は、第一声の「ツイッターの画像は自撮りだよ」で一気にリスナーの心を掴んだ。「本なんか出すんじゃなかった」「おめえらのリスナー超怖えな。震えてたよ、自宅で」と番組内ではぼやきっぱなし。それでもゲストというかたちであれ、夢のANNに関われて、どこかうれしそうだった。
平子に「夢叶ったな」と挑発されると、佐久間は「こんなボロ雑巾みたいな出方が俺の夢のANNじゃねえぞ」と反応しつつも、エンディングでは乗せられて、「佐久間宣行のオールナイトニッポンR!」とタイトルコールにまで挑戦。単発を想定して「R」をつけたところにも、佐久間のラジオ愛が垣間見えた。
ラジオ界の片隅に熱狂を生んだリスナーと佐久間の絡みもこれで一段落ついた。翌週の放送の冒頭で、平子も「長きにわたりつづいたリスナーとの戦いに終止符を打つことができた」と断言している。が、この日の放送で、早くもこの発言が覆される。それがこの番組の歴史を語る上でも欠くことができない「ハガキ職人vs読モ事件」だ。
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