B型の男はブレない。緊迫感のある日々に安らぎをくれた『山下達郎のサンデー・ソングブック』(ヒコロヒー)

2021.1.17

ピン芸人・ヒコロヒーは、「迫感のある日々の中」でひとりの男のラジオに救われていた。その番組への想いを自らが綴る──

※本記事は、2020年10月24日に発売された『クイック・ジャパン』vol.152掲載のコラムを転載したものです。

淡々と、音楽にことづけて

28周年を迎え、29年目に突入するという『山下達郎のサンデー・ソングブック』が10月4日に放送された。この長い歴史の中で私がリスナーになったのはここ10年ほどのことである。

放送1000回目や、25周年のときなどは、達郎氏は少なからずうれしそうにしていた気がしたものだが、28周年の放送では、26周年や27周年のときと同じくして淡々と長年番組が継続できていることの感謝を述べ、目指すは1500回放送、そして 30周年であると語った。本当に、きりが良くない数字ではあまり喜ばないパーソナリティであると感じて可笑しかった。

達郎氏のラジオパーソナリティのあり方というのは、華やかなエンターテイナーのそれとは異なる側面がある気がしている。過剰なサービス精神はなく、飾り気もない。時折飛び出すジョークは可笑しいのだが、ユーモアあふれる装いというわけではない。丁寧で美しい話し言葉と涼しい語り口ゆえか、彼の喜怒哀楽の温度感というものもわかりやすく伝わってきはしない。

しかしそれこそが音楽人である彼らしい自然なあり方で、彼が私達になにか強く届けたいメッセージがあるとき、彼が用いるのは多くの言葉ではなく、常に多くの音楽にある

2011年3月のころ、私は早い段階で、過酷な映像が流れ続けるTVが精神的に観られなくなっていた。そんな折、番組での彼は被災地と被災者へのお見舞いを丁寧に述べた後「私もミュージシャンなのでこんな空気の中でも聴いていただける曲を持っているつもりです」と言い、多くの音楽を流してくれた。

次々と流れ来る心地よい音楽は、緊迫感のある日々の中で張り詰め続けていた心に弛みを与えてくれ、非常事態だからこそ、こともなげなような穏やかな彼の語り口にはたしかな安らぎがあった。そしてその回でも流れていた彼の「ずっと一緒さ」という曲は、この10月4日にも放送された。

交流のあった女優さんが亡くなったことに触れ、彼女との思い出を言葉少なに語った後に同曲は流れた。多くを語らない配慮の中で、彼はまた音楽を以てしてピリオドを打った。そして曲が終われば何事もなかったかのように涼しくおしゃべりをする。

きっとこんなイカしたことをセイムタイム、セイムチャンネルで 28年間ずっとやってきているのだ。やっぱりB型の男はブレない、B型の男はこういうところが良い。私はといえば、こんな雑な言葉をピリオドと代えるのが精一杯のようである。


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