徒歩で10キロ歩いてうまいビールを飲むだけの旅(パリッコ)

2020.12.10


辿り着いたのは思い出の地……

パリ さて、時刻はもう4時近く。まだ折り返し地点なのでスパートかけねばと思い、さっと深大寺にお参りだけして、ずんずん進むことにしました。深大寺エリアを抜けると、スーン!と景色が元に戻るのが、夢でも見てた?って感じでおもしろかった。

現実に引き戻された感じ

ナオ ちょっと空が暗くなってきてますしね。

パリ そうなんすよ。早く帰りたくなってきて。

ナオ はは。弱音が。

パリ だから、たまにいい看板撮るくらい。

ものすごい歯っぽい歯の漢字
この店が超かっこよかった
この看板を見てください

パリ 凡人だったらここに、「名物餃子」とか書いてしまいません?

ナオ 確かに。潔い。うまそうじゃないですかなんか。

パリ ね。食に自身あり!っていう。で、裏はどうなってんだろう?と見てみたら。

これまたひと言

ナオ ははは!

パリ 人間の二大欲求。

ナオ それだけでいいっていう。欲しいなこの看板。

パリ 部屋に飾って光らせときたいですね。このあたりで久しぶりに地図を開くと、8kmくらいの地点でもう調布に着いちゃいそうなんですよね。で、その先に多摩川があるので、そこまで行ってみっかと思って、とにかくずんずん。

ナオ 川があったら目指しますよねー。

パリ ねー。それで辿り着いたのが京王相模原線の「京王多摩川」駅。ここまで来ると川はもうすぐ。

改札の目の前にこんな施設

パリ 競輪場かな。

ナオ おお! 競輪場っぽいですね。「京王閣」って聞いたことあるな。

パリ もっと早い時間だったら開いてたのかな? ただ、もうなんか片づけ中っぽい雰囲気でした。なので川を目指し、9.5km歩いて辿り着いたのが、ここでした。

この先がきっと
多摩川

ナオ いい時間だ。

パリ でね、途中からうすうす感づいてはいたんだけど、この鉄橋に見覚えありません?

ナオ そうか、京王多摩川駅って次の駅は京王稲田堤ですか?

パリ そうそう! つまりあの対岸。

ナオ 「たぬきや」跡地だ!

パリ 稲田堤駅が最寄りの、多摩川河川敷のあの場所に、かつて「たぬきや」っていう、嘘みたいな川茶屋があったんですよね。

かつてのたぬきや
まさにあのあたりにあった

パリ 我々、たぬきやが大好きでよく飲みに行ってましたよね。あまりにも天国みたいな店なので、「天国酒場」なんて呼んで。惜しくも2018年に閉店してしまったんですが。

ナオ そうか、さっきの「京王閣」、たぬきやから見えてましたもんね。あれなんなんだろうってずっと思ってたんだ。

パリ 初めてこちら側からその場所を見ました。

ナオ 確かに。

これはもう

パリ 持ってた酒開けました。

ナオ いいなー。旅の終わりっぽい。今はなき、たぬきやに捧ぐ。

パリ 切な酒。まさか長い多摩川沿いの中で、ぴたりとここに辿り着くとは。

ナオ かなりの確率ですよね。

パリ ただ、実はまだ500m残ってるので、駅方面に戻って周囲を徘徊して距離を稼ぎ、ついに10km!

ナオ お疲れさまでした!

ぴったり10km

パリ 京王多摩川駅前、かなり寂しい感じでした。入れそうな店はそば屋がひとつと、居酒屋がひとつだけ。

ナオ そうなんだ。

パリ けっこう賑やかな稲田堤とはだいぶ雰囲気違います。

「酒処 八重」

パリ なのでこの「八重」に入りました。そしたらここが、超〜名店なの。

ナオ へー!

とりあえずお疲れビールいただきます

ナオ 歩いたあとは格別。でもさっき氷結飲んだか。

パリ そう。今日もう3杯飲んではいるんですが、でも格別!

明るく広々とした店内

パリ お母さんと娘さんでやってる的な感じの店で、常連さんがひとり。静かな時間。

ナオ メニューの並べ方もなんかいいな。のどか。

パリ 確かに「短冊メニュー」みたいな意識がないですね。

ナオ そのとき必要なものを必要な大きさの紙に書いて貼ったという。圧がない感じでいいっすねー。

パリ しかし、自分とは縁のない、しかも有名でもない街の、なんでもない酒場。そのよさこそ、街歩きの楽しさだな〜としみじみ。

ナオ そうですね。ふらっと偶然辿り着くというのがたまらないな。

「つくね(2本300円)」

ナオ うまそー。

パリ 本気でうまかった! なんかね、ふわふわなんだけど、ぷりんっていう噛みごたえもあって、タレは甘めで。

ナオ そのうまい球がまだ6球もある。

パリ そこに追い討ちをかけるようにこれ!

「シメサバ(500円)」

ナオ なんか一品一品がきれいですね。

パリ ですよね。それでいて、ちゃんとボリュームがある。シメサバも絶品だったなー! わざわざ八重に行きたいもん、また。と、ここで旅はフィニッシュでした。

ナオ いい旅になりましたね。

パリ 歩き出す前は、何もなかったらどうしようって不安なんですよね。一応取材だし。でも、何かしら発見があるのが徒歩の旅のいいところだなって、改めて思いました。それ以上の速度で移動していると見過ごしてしまうものがいろいろと見つかって。

ナオ ね! 10kmというのもちょうどいい感じ。

パリ ちょうどよかった。あんま疲れ過ぎない。次回は京王多摩川駅からスタートしてみようと思ってますよ。

ナオ いいですね。そこからまた先へ。

パリ というわけで、次は「スズキナオ編」、楽しみにしてます!

今回の旅の全工程

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    本体1600円(税別)/184頁/四六判
    ISBN 978-4-760151-48-6 
    発売日:2020年9月24日/発行:柏書房
    「普段、何気なく過ごしていると見落としてしまう。だけど一歩入り口を入れば、そこには天国のような空間が広がっていて、夢心地に酔うことができる」――すなわち、川のほとりのパラダイス、江戸から続く老舗茶屋、山上の回転喫茶、動物園前の売店食堂、地下街の迷宮店、線路際に佇むおでん屋台などなど、「日常の隣にある非日常空間」を持つ酒のレガシー的名店、それが「天国酒場」だ。
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Written by

パリッコ

1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、ほか。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』『酒場っ子』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』、スズキナオ氏との共著に『“よむ”お酒』『酒の..

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