『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』がうまい!うまい!うまい!何を不安がってたのだろう、完璧じゃないか



原作、アニメ作画、声優の演技が至ったひとつの境地

ネタバレ最小限ということで具体的には書かないが、「無限列車」編では主要キャラクターたちの夢、心の中にあるインナースペースが大きな比重を占めている。単なるうたた寝の幻ではなく、人格の深いところに関わるもうひとつの世界であり、「そこに広がる森羅万象がキャラクターそのもの」という難しい境地でもある。

善逸は片想いしてる禰豆子と白詰草がたくさん咲いてる中で念願のデート、伊之助は子分たちを率いて洞窟探検隊。完全にギャグシーンなのだが、原作を最終回まで何度も何度も(コミックは完結してないがデジタル版ジャンプはバックナンバーが読める)を読み返していると、この子たちはこういう世界を抱えているよなあ……としんみり。あとオマケ漫画のネタまで拾っている!という喜びもあり。

竈門禰豆子(かまど・ねずこ)鬼になってしまった炭治郎の妹(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス
竈門禰豆子(かまど・ねずこ)鬼になってしまった炭治郎の妹(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)炭治郎の同期の鬼殺隊剣士。「雷の呼吸」の使い手。禰豆子にぞっこん(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)炭治郎の同期の鬼殺隊剣士。「雷の呼吸」の使い手。禰豆子にぞっこん(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス

そして炭治郎と煉獄、今作での主役に位置づけられるふたりの心象風景。かたや幸せな“はず”だった瞬間、かたや“あり得たかもしれない”幸せ。どちらも架空の幸せが深まるほど、喪失感も深まるやるせなさが改めて。特に炭治郎パートは物語の序盤と切っても切れない関係があるので、未見の人はアニメ版の第1話を観てから劇場に行きましょう。

炭治郎の無意識領域(夢の奥深くにある場所)は、本人の美しさそのもの。よく「息を飲む景色」「心洗われる風景」とは常套句になってるものの、本当にアニメの中で文字どおりの体験をすることになるとは。パッと青空が広がった瞬間、これまでの炭治郎の生きてきた道のりが走馬灯のように脳内を駆け巡り……鬼が首を斬られた直後ってこんな感じかと思いつつ、花江夏樹さんの演じる炭治郎の声、ひたむきさ、まっすぐさが繋がったという感動が駆け巡った。原作、アニメの作画や音楽、声優さんによる演技の総合力が到達したひとつの境地だろう。

竈門炭治郎(かまど・たんじろう)鬼に殺された家族の仇を討つため修業を経て、鬼殺隊に入隊する(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス
竈門炭治郎(かまど・たんじろう)鬼に殺された家族の仇を討つため修業を経て、鬼殺隊に入隊する(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス

その後の無限列車での激闘に決着がついたとき、大作映画を観終えたような充実感タップリ。さらに……は誰もが劇場で観届けていただきたいところ。まぁ現在の破竹の勢いがつづけば、日本全国でも「観ていない人」がどんどん減っていき、いずれネタバレという概念もなくなるはず。その暁には、改めてすべて解禁して隅々まで語り尽くしたいところです。


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  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』

    原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
    監督:外崎春雄 
    キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃 
    脚本制作:ufotable 
    サブキャラクターデザイン:佐藤美幸・梶山庸子・菊池美花
    プロップデザイン:小山将治 
    コンセプトアート:衛藤功二・矢中勝・樺澤侑里 
    撮影監督:寺尾優一 
    3D監督:西脇一樹  
    色彩設計:大前祐子 
    編集:神野学 
    音楽:梶浦由記・椎名豪 
    主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
    アニメーション制作:ufotable
    配給:東宝・アニプレックス
    【キャスト】
    竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
    竈門禰豆子(かまど・ねずこ):鬼頭明里
    我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野紘
    嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞
    煉?獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう):日野聡
    魘夢(下弦の壱)(えんむ・かげんのいち):平川大輔

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