木いちごのジュース登場
アドベンチャーゲームでいう「提灯分岐」だ。
AとBの選択肢、どちらをプレイヤーが選択しても本筋に戻ってくる。構造図を作ると提灯型になるので「提灯分岐」と呼ばれる。
マリラの大切な紫水晶(アメジスト)のブローチがなくなり、アンを疑う。
アンは嘘の告白をし、マリラはアンを許せないと思う。
ここで分岐点に立つ。A.部屋から出さない/B.孤児院に返す
原作ではAを選択した展開、ドラマ版はBを選択した展開になる。
違う世界線が描かれるが、どちらも結果的には和解し、より深い絆が結ばれるのだ。
しかも、原作では「愉快きわまるひと時だった」(『赤毛のアン』第14章・松本侑子訳/文春文庫)と語られるピクニックを反転させる。意地悪を言う人たちに耐えられずアンは泣いて逃げ出す。ツンデレ・マリラは泣きじゃくるアンに寄り添い、ようやく自分の気持ちを語ることができる。
「ほんの少しでも私のことを信じる気になって、許してくれるなら、もう1度やり直しましょう」
“If you could find it in your heart to believe me…and forgive me…then we can start anew.”
見事に原作の和解シーン「だから私を許してくれるなら、私もあんたを許してあげるよ。また二人で一から始めようじゃないか。さあ、ピクニックの準備をなさい」(松本侑子訳)へと戻ってくる。
原作を乱暴に改変するのではなく、現代のドラマとして見ごたえのあるものにどう組み立て直すのかを考え抜いて制作されているのだ。
もうひとつ。新聞少年が「号外! 研究者が温室効果を予測」と叫んでいるのは、さすがにイマドキの話題をねじ込み過ぎでしょと思って調べてみたら、1827年にジョゼフ・フーリエが温室効果を発表し、1896年、スヴァンテ・アレニウスが著作『宇宙の成立』で気温上昇の可能性を示しているとのこと。
和解したマリラとマシューとアンは、儀式を執り行う。
カスバート家の聖書にアンがサインをして、カスバート家の一員になるのだ。
「私に初めて家族ができる。だから特別なことをすべきよ」
アンがそう願い、マリラが木いちごのジュースを出してきて乾杯をする。
木いちごのジュースをここで出してくるところも憎い(原作を読んでない人へ。このあとキーアイテムとして登場します)。
今夜2020年10月4日NHK総合夜11:00からの放送は第4話「若さとは強情なもの」。ついにギルバートの登場。石板でバーンの巻です。
『アンという名の少女』
原題:Anne with an “E” 制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
NHK総合で日曜の午後11:00から全8回
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