3.アフリカ系アメリカ人のスターとして
今、コロナと共にアメリカを席巻しているのが「Black Lives Matter」(黒人の命は大切だ)運動だ。5月に起きたジョージ・フロイド死亡事件をきっかけに広がりを見せ、アメリカ・スポーツ界にもさまざまな問題を投げかけている。
たとえば、『ラストダンス』にも登場する元スター選手ジェイレン・ローズは、「黒人カルチャーだけでなく、黒人も愛してくれ」とコメント。また、現代NBA最高のスターである“キング”レブロン・ジェームズは「黒人の投票を促す団体」を設立。アメリカ4大スポーツで最も黒人比率の高いNBAでは、シーズン再開にも影響を及ぼしかねない問題として注目を集めている。
この問題の知見を深める上でも『ラストダンス』は意義深い。第5話では、ジョーダンが社会に与えた影響について、功罪両面から描かれている。
大のブルズファンとして知られるオバマ元大統領は、「偉大な選手が社会的な力を持つとは限らない。でも、中には文化を牽引するアスリートもいる。それがマイケル・ジョーダンだ。アフリカ系アメリカ人選手のイメージを彼が変えた。いわば、アメリカの広報大使。世界に誇る文化の象徴として、マイケルとブルスが文化を変えた」とジョーダンの功績を評価する。
一方で、ある識者は「マイケルが受け入れられたのは誰も怒らせないから」と語り、アフリカ系議員の選挙運動で支持を求められても態度を明確にしなかったと言及。「人種問題より自分の金儲けが大切なのか?」と問題提起される場面もある。
彼らの問いに対してジョーダンはこう語る。
「俺は政治家ではない。だから自分の仕事に集中した。自己中心的かもな。でも、それが自分の情熱だった」
4.兎にも角にもジョーダンを堪能しよう!
〈“完璧な技術”と“美しい創造性”の掛け算、人はそれを「芸術」と呼ぶ。〉
以前、DVD『マイケル・ジョーダン/HIS AIRNESS』の紹介記事を担当した際、ジョーダンのプレーについて記した拙文の一部だ。
スターぞろいのNBAでも群を抜くテクニックとイマジネーションで一時代を築いたマイケル・ジョーダン。Netflixには「10秒巻き戻せる機能」があるが、これはジョーダンのプレーを堪能するため?と思ってしまうほど、何度もリプレイしてしまう。改めてジョーダンの残したプレー、言動、生き様を味わってほしい。
その源泉にあるのは、「神」と呼ばれながらも、ただただ負けず嫌いな男の人間味あふれる姿だ。
若手選手に37点取られた翌日、前半だけで36点奪い返す大人気ないジョーダン。
ギャンブル依存症を疑われ、世間からの非難とマスコミの喧騒に、「人生をやり直せるならロールモデルにはならない」と珍しく弱音を吐くジョーダン。ただ、プレーでの雄弁ぶりは変わらない。
1度目の引退から復帰後、バスケ感を取り戻すため、映画撮影の合間を縫ってトレーニングを積むジョーダン。その練習相手になるため、敵チームのスター選手までもが続々と登場……もはや、どっちが映画かわからなくなる。
2度目の引退直前、最後の試合で45点。まさに絶頂期のまま迎える優勝を決めた“ラストショット”……優勝決定直後、スタッフルームに祝福に訪れた俳優レオナルド・ディカプリオは、こんな言葉をかけていた。
「感動したよ。芸術的だった」
スポーツを芸術にまで高めた男の姿を味わい尽くしてほしい。
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