いよいよ第2シリーズの配信が開始される『3年B組金八先生』。伝説の「腐ったミカンの方程式」もこのシリーズだ。『金八』マニアのライターで漫画家の北村ヂンが、ドラマ史に残る傑作回誕生の裏側をディープに読み解く。
桜中学に伝説の番長がやって来た!?
動画配信サービス「Paravi」で順次配信されている『3年B組金八先生』(TBS)。今月配信されるのは、「腐ったミカンの方程式」(第5、6回)と「卒業式前の暴力」(第23、24回)で知られる、1980~81年放送の第2シリーズ。『3年B組金八先生』の最重要シリーズであるのはもちろん、「日本ドラマ史」という教科書があったとしたら絶対に取り上げられるであろう歴史的シリーズ。『金八先生』未履修の人も、ひとまずこれを観ておけば間違いない。
『金八』のモノマネやパロディで演じられるのは、たいていこのシリーズが元ネタなのだ。
シリーズ通してのメイン生徒は、加藤優(直江喜一)と松浦悟(沖田浩之)というふたりの不良。
校内暴力でメチャクチャ荒れる荒谷二中の番長だった加藤が、「箱の中に腐ったミカンがひとつでも入っていると、ほかすべてのミカンが腐ってしまうから、すぐに捨てなければならない」という「腐ったミカンの方程式」で荒谷二中から排除され、桜中学に転校してくることに。
転校早々、桜中学内での不良キャラだった松浦悟と衝突することになる。
……といっても松浦がやっていたのは、デブな生徒にまんじゅうをいっぱい食わせるという超・牧歌的なイジリ程度のもの。ガチの不良校からやって来た加藤とはレベルが違い、椅子を振り回して大暴れをする加藤を見てボーゼンとするばかりだった。
この登場シーンでいきなり「何だかんだで平和な桜中にヤベエやつがやって来た!」と強烈なインパクトを残した加藤だったが、バックグラウンドが明かされるにつれ、さらに心をワッシリ掴んでいく。
父親がサラ金で大借金を作った末に蒸発。借金取りに責め立てられる母親を守るため、自らも働きに出るが、そのせいで学校の勉強についていけなくなってしまう。学力低下をなじり、暴力を振るう荒谷二中の教師たち。そんな“わかってくれないオトナ”に反発し、不良になったのだ。
「不良だけど本当は母親を大切に思っている優しい子」という、「番長が捨て犬を拾っていた」的なベタ設定ではあるが、まんまと感情移入してしまう。
すでに竹の子族として人気者になっていた沖田浩之のシュッとしたルックスとは対照的な、ずんぐりむっくりした体型に、目つきは鋭いものの朴訥とした顔。そこに浮かべる哀しみをたたえた表情が、なんとも切ないのだ。