何度でも泣けるシーンで涙を止める方法
名作ドラマを紹介する番組で「金八先生」が取り上げられる際、必ず流されるのが「卒業式前の暴力」で加藤と松浦が荒谷二中に乗り込んでいくシーン。
あれだけ観ると、自分を排除した教師たちに復讐しに行くバイオレントなエピソードに思えるが、実際はまったく違う。
金八や3年B組のクラスメイトたちと触れあう中で清い心を取り戻した加藤は就職先も決まり、
「オレ、まともに卒業できるんでうれしいよ。ホント、みんなありがとう。墨東工業に行ったらとにかくがんばるよ。だから……みんなもがんばれよ、な」
なんてあいさつできるくらい、メチャクチャいい子になっていた。もうこの段階で「あの加藤が……」とチョイ泣きしてしまうのだが、そんなときに荒谷二中の旧友たちから持ち込まれたのが、卒業式ぶち壊し計画。
「腐ったミカンの方程式」で排除され、桜中学に転校したことによって加藤は立ち直ることができたが、荒谷二中に残された生徒たちは依然、暴力教師たちから虐げられ、学校に警察を呼ばれて逮捕され、相変わらずひどい締めつけにあっていた。
そこで持ち上がったのが、生徒全員で卒業式をボイコットして、教師たちのメンツを丸つぶれにしてやろうという計画。
この計画を聞かされた加藤は、関係のない一般生徒や親たちを巻き込んではいけないと、卒業式前に教師たちと話し合いの場を持って謝罪させようと考え、荒谷二中に乗り込むことに。
……が、加藤がやって来たことで調子にのった荒谷二中の不良生徒たちは、ガラスを割るわ、消化器をぶちまけるわの大暴れ。加藤の心が全然わかってないのがつらい。
加藤と付き添いの松浦はそういった破壊活動にはまったく加わらず、校長&暴力教師を連れて放送室に立てこもり、話し合いをすることに。
「オレがはじめて暴れたとき、アンタお袋呼んで『飲み屋で働いているから』とネチネチいたぶったよね」
「オレは学校が好きだったんだ。仲間もいたし、小学校からの友達もいたもんね。けどアンタたちはオレたちを鼻つまみ扱いした」
「こいつ(荒谷二中の旧友)には学校に来る権利があるんだ! そしてお前らにはたとえあと5日でも、こいつを学校に来させて、いいこと悪いことを教える義務があるんだ!」
加藤たちの表情は映さず、スピーカーから流れてくる音声のみを流して、それを聞く金八たちの表情を見せる演出もにくい。加藤たちの行動は明らかに間違っているものの、自分が教えたことを引用しながら教師たちと議論する加藤に対する気持ちはどんなものだったのか。
有名な「加藤ーッ! 松浦ーッ!」の絶叫には、怒りと共に応援の思いが込められているように感じる。
結局、校長から謝罪の言葉を引き出すことに成功するが、校内に乗り込んで来た警官隊に、暴れていた荒谷二中の生徒ともども加藤&松浦も逮捕されてしまう。
スローモーションになり、音声が消え、中島みゆきの「世情」がフェードインしてくる。7分にもわたる曲をフルコーラス流しての連行シーン。
荒谷二中の生徒たちはマヌケに逃げ惑い、松浦も多少抵抗するのだが、加藤だけはまったく無抵抗で手錠をかけられる。この悟り切ったような、すべてを諦めたような表情がホントに国宝級演技。
何度観たかわからないのに、この表情だけで毎回泣けてしまう。
初見の人は、このシーンで大号泣して画面が観づらくなるかと思うけど、そんなときは「中島みゆきの『世情』とチャゲアスの『SAY YES』はオレが売ってやったようなものだ」という、鉄矢のものすごくイヤーな発言を思い出すとピタッと涙が止まるぞ。
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