失われた居酒屋の楽しみよ、もう一度
おいしさに陶然としていると、いきなり神様やら騎士に扮したロバート秋山が登場するコント的な演出が賛否を呼んでいるが、あとは設定もストーリーも原作に忠実で、すでに公開された第1話への反響も原作者と同じくおおむね高評価のようだ。おでんをひとつ食べるたびに大谷の低音でいちいち「それはちくわだ」「それは昆布だ」「しらたきだ」と解説してくれるところが味わい深かった。
1話のラスト、異世界の人たちが身分を超えて居酒屋の料理と酒を楽しむ様子を見て、店主のノブがしみじみと呟く。
「昼間にいろいろ大変なことがあっても、夜ここでうまいものを食べて、お客さんが幸せそうな顔をしてくれる。それってとてもいいことだな、って」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、こうした楽しみが根こそぎ奪われてしまった状態がつづいている。もし、コロナが収まって、また居酒屋でキンキンに冷えた生ビールや料理を堪能できるようになったら、そのときは異世界の住人たちのように思い切り感激を味わいたいと思う。「どうだ、日本の居酒屋料理はすごいだろ?」と上から目線でいるのではなく、「日本の居酒屋料理ってこんなにすごかったんだ!」とフラットな目線で楽しめるようになるんじゃないだろうか。それまでは家の中であたりめでもかじりながらこのドラマを観ていよう。もうちょっとの辛抱だ。