井之頭五郎より村崎ワカコに共感?『ワカコ酒Season5』は今季を生き残ったグルメ系深夜ドラマ

2020.5.8
『ワカコ酒 Season5』

文=大山くまお イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


ふらっと立ち寄った店のおいしい料理と1杯の酒で仕事を締めくくる。そんなささやかな幸せがない。Zoom飲みにもちょっと疲れてきた。『ワカコ酒』を観ながらのひとり酒もいいぞ。ドラマ大好きライター大山くまおが、酒好きも励ましたい連載第6回。


失われた日常のありがたさが

新型コロナウイルスによって、さまざまな日常の風景が失われた。子どもたちの学校生活、会社での仕事、友人との食事、ショッピング、旅行、帰省、ライブや演劇などのエンタテイメント……。酒好きの筆者にとって、その最たるものが居酒屋のカウンターでひとりゆっくりうまい酒とつまみを楽しむ時間である。これがなくなったのは本当につらい。

武田梨奈主演の『ワカコ酒 Season5』(BSテレ東)を観ていると、そんな失われた日常のありがたさが五臓六腑にしみわたる。原作は新久千映の同名コミック。2015年にスタートして、今年4月からシーズン5に突入した人気ドラマだ。深夜ドラマの定番となったグルメ系ドラマだが、今シーズンは本作のみ。

『ワカコ酒』<第1巻>新久千映/コアミックス

主人公は「酒飲みの舌」を持つ女・村崎ワカコ26歳。決めゼリフは「ぷしゅ~」。シーズン1からずっと26歳のままだが、主演の武田梨奈は23歳から28歳になっているのがおもしろい。冒頭のナレーションを聴き比べてみると、シーズン5ではぐっと落ち着いたトーンになっているのがわかる。どちらかといえばこっちのほうが好み。

お話は、彼女が仕事帰りにさまざまな酒場をさすらって、ひたすら女ひとり酒を堪能するというもの。原作の連載当初から「女性版『孤独のグルメ』」と言われていたが、実在する店を紹介しつつ、ワカコが料理に舌鼓を打ちながら心の内をナレーションで語りつづけるというドラマの作りもよく似ている。

両者の最大の違いは、酒を飲むか飲まないかの一点に尽きる。この違いの前には男女の違いなどあまり意味がない。この一点において、筆者は井之頭五郎より村崎ワカコに圧倒的に共感してしまうのである。

『孤独のグルメ』<新装版>久住昌之、谷口ジロー/扶桑社

背筋を伸ばして酒を楽しむ武田梨奈

『ワカコ酒』のスタッフは、酒飲みの心を知り尽くしている。それが最も表れているのは、丁寧に作られた“音”だ。ヘッドフォンで聴くとよくわかるが、天ぷらの油がはぜる音、ビールの泡のシュワシュワとした音、口に入れたときのサクッとした音など、数々のうまそうな音が酒飲みの聴覚を刺激する。音が楽しいということは、ワカコが静かにひとり酒を楽しめているということでもある。

もちろん、絵的にもぬかりはない。シーズン1の第1話を観返してみたが、あじのなめろうを作る映像だけでやられてしまった。に、日本酒冷やでちょうだい!

こぼれる笑顔で肴を慈しむように食べる武田梨奈も、もちろん素晴らしい。口からお酒を迎えに行ってもちっとも下品にならないところがいい。

これは個人的な好みなのだが、グルメドラマの主人公にはノーブルであってほしいと思っている。食欲は人間が生きていく上で必須なものだが、「欲」というだけあってちょっと浅ましい。いくら美味しいものでも、猫背で前のめりになってガツガツ食べられると、自分の浅ましさを突きつけられているような気がしてしまう。気取る必要はないが、どんなB級グルメでも、ピンと背筋を張ってスッと食べてもらいたい。

武田梨奈はちゃんとノーブルだ。体幹が通っている感じがする。さすが空手黒帯二段。原作者の新久千映からは「姿勢が良過ぎるかも」とアドバイスをもらったそうだが、すぐにお酒でくにゃくにゃになる人(それはそれでかわいいのだが)よりも姿勢の良い人を観ていたい。

Zoom飲みに疲れた人に『ワカコ酒』飲み


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大山くまお

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大山くまお

1972年生まれ。名古屋出身、中日ドラゴンズファン。『エキレビ!』などでドラマレビューを執筆する。

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