『いいね!光源氏くん』コロナで疲れた心を千葉雄大に癒やされる

2020.4.10
2020深夜ドラマ

文=大山くまお イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


4月4日にスタートしたドラマ『いいね!光源氏くん』に注目する「深夜ドラマレビュー」第2回。「とにかく千葉雄大がかわいい」と熱いドラマ好きライター、大山くまおが「雅やかな」魅力を語る。


今、一番攻めている「よるドラ」枠

NHK「よるドラ」枠(土曜夜11時30分~)は、深夜ドラマ界隈の中でもひときわ攻めた内容のドラマを製作することで知られている。

実質的にスタートしたのが2019年1月と非常に歴史が浅い枠なのだが、これまでに地方都市で生きる目標を見失ったアラサー女子たちがゾンビの襲撃に遭って生きる意味に気づく『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』、ゲイの男子と腐女子のねじれた青春群像劇『腐女子、うっかりゲイに告る。』、地下アイドルに溺れたアラサーOLのサスペンスドラマ『だから私は推しました』、工科医大を舞台にした理系ラブコメディー『決してマネしないでください。』、RPGの形式を借りてワンオペ子育てと仕事に翻弄される母親の過酷な生き様を描いた『伝説のお母さん』と、一筋縄ではいかないドラマ群を送り出してきた。

「よるドラ」枠のドラマは、「この出演者でこの原作を持ってくれば話題に〜なるだろう」というような考え方で製作されていない。『腐女子、うっかりゲイに告る。』と『伝説のお母さん』の製作統括を務めた篠原圭は、「テレビを普段観ない層の人たちが『これは自分のことを描いた、自分のドラマだ』という感覚で観てほしい枠」「若者がいま本当に観たいもの、親や恋人に内緒ででも観たいと思えるものを探り、その本音まで掘り下げることを狙いとしています」と語っている(リアルサウンド映画部 2020年3月7日)。

『だから私は推しました』 DVD/NHKエンタープライズ

豪速球のかわいさを投げ込んでくる千葉雄大=光源氏

と、前置きが長くなったが、この「よるドラ」で4月4日から始まったのが千葉雄大、伊藤沙莉主演の『いいね!光源氏くん』だ。これまでの長めのタイトルから、急に『コロコロコミック』のマンガのようなタイトルになったが、原作は『FEEL YOUNG』に連載中のえすとえむによるもの。

『いいね!光源氏くん』えすとえむ/祥伝社

『源氏物語』の主人公・超イケメンの平安貴族である光源氏(千葉雄大)が現代のOL沙織(伊藤沙莉)の元へとタイムスリップしてきて、そのまま居候してしまうというストーリー。『ドラえもん』や『うる星やつら』から連なるマンガ界の定番ジャンル「居候もの」のひとつであり、物語の定型「貴種流離譚」のひとつでもある……なんてことは、この際どうでもよろしい。

このドラマの主目的は、千葉雄大演じる光源氏のかわいらしさと雅やかさを全力で見せることにある。とにかく、ものすごい豪速球のかわいさが画面越しに投げ込まれてくるのだ。

原作の光源氏はシュッとした顔立ちだが、捨てられた子犬のような千葉雄大の破壊力は凄まじい。優しげで、ひ弱で、突然態度が大きくなったりするが(貴族だから)、窮地になればつぶらな瞳で見つめて助けを求めてくる。抱きつくことで感謝を表現して(いい匂いがするらしい)、感動すればところ構わず和歌を詠む。

動きや仕草もいちいちかわいらしく、どんなときでも欠かさない烏帽子(平安時代の成人男性の証)を被ったままひょいと身をかがめたり、初めて触るティッシュの柔らかさを無言で味わっていたり、大きめのニットを萌え袖(平安貴族は手を極力出さないから)にしていたりする。

視聴者は光源氏がもたらすカルチャーギャップにほのぼの笑いつつ、思わずキュンとして癒やされることになる。彼のそばにいる沙織は、視聴者代表と言っていい。

抹茶ラテフロートのような光源氏


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大山くまお

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大山くまお

1972年生まれ。名古屋出身、中日ドラゴンズファン。『エキレビ!』などでドラマレビューを執筆する。

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