『岡村隆史のオールナイトニッポン』に期待する深夜ラジオの新しいかたち



今の時代にマッチした、深夜ラジオの新しい景色を見たい

今回の騒動は「なかったこと」にはできないし、番組が元通りになることはない。リスナーからそれを嘆く声が起こるのは当然のことだろう。自分たちが築いてきた秘密基地が壊されたように感じる気持ちもよくわかる。

ただ、時代に則した内容になっていくのは歴史を振り返っても必然。世の変化に順応しないのは“深夜の解放区”ではない。もちろん言われなき批判を受け入れる必要はないし、変えてはいけない部分もある。ただ、その時その時の放送を楽しむだけでなく、番組が変化していく様を感じるのもまた深夜ラジオの魅力のはず。

そもそも私は岡村の話す下ネタや風俗話が好きだからこの番組を聴いてきたわけではない。岡村という人間が好きだからリスナーをつづけてきたのだ。たとえ、今回のことでトークの内容が様変わりしたとしても、それでも“おもしろい番組にしてくれる”という確信めいた信用と信頼をリスナーは持っているはずだ。なにせ長い時間をかけて結んできた“共犯関係”にあるのだから。全編がフリートーク、序盤からコーナー中心、昔ながらのリクエスト番組……。どんなかたちだっていい。内容が合わなくなったらいったん番組を離れてもいいし、気になったらまた戻ってきてもいい。聴く側はそんな気楽なスタンスでもいいと思う。

『オールナイトニッポン』は「無名の人間をパーソナリティに起用し、その人が有名になっていく様をラジオという側面から伝え、リスナーがそれを追体験する」というかたちで歴史を紡いできた。2部からスタートしたナインティナインの番組もこれに当てはまる。

ならば、パーソナリティもリスナーも年齢が高くなった今の時代なら、「名のあるベテランパーソナリティが自分の内にある問題と向き合い、七転八倒しながらも新しい景色を見つける過程を追体験する」というかたちも可能ではないだろうか。そのぐらい深夜ラジオはすべてを受け入れる柔軟なメディアだ。

それは幅広い世代のリスナーが自分自身と向き合うキッカケになるだろうし、新型コロナウイルス問題で揺れる世間を励ますことにつながるかもしれない。10代のリスナーにもいい影響を与えるだろう。そこから岡村らしい生真面目さや優しさが浮かび上がってくるだろうし、何より笑いも生まれるはず。そして、新しい深夜ラジオのかたちを提示することになるかもしれない。

さまざまな問題に取り組んで、新しい景色を見つけた岡村隆史が再び横浜アリーナのステージに立ち、「POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~」を熱唱する――。いつになるかわからないが、そんな姿を私は見たい。

『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』における発言が不適切だったのは事実だと思います。ただ、ご本人が番組内で謝罪し、「このラジオを変えていきたい」と話している以上、今後の推移を見守るしかないと私は考えています。このコラムでは発言の是非やそれに関する社会問題には触れず、あくまで「深夜ラジオの歴史」という視点から書かせていただきました。

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村上謙三久_プロフィール

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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