『オズの魔法使』ドロシー女優の壮絶な人生。“成功”とはいったいなんなのか?

2020.3.6
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(c)Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019
文=轟 夕起夫


ハリウッド黄金期を支えたミュージカル女優、ジュディ・ガーランドの生涯を描いた映画『ジュディ 虹の彼方に』が本日3月6日に封切られる。

『オズの魔法使』でドロシー役を演じて成功を収めたジュディは、その代償としていろいろなものを犠牲にしていた――。レネー・ゼルウィガーは、本作で第92回アカデミー賞の主演女優賞を獲得。2020年を代表する“女優”映画が誕生した。

※本記事は、2020年2月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.148掲載の記事を転載したものです。


甦る名女優の生涯

まだ、記憶に新しいはずである。先日開催された第92回アカデミー賞でレネー・ゼルウィガーが“主演女優賞”に輝いた瞬間のことだ。作品は『ジュディ 虹の彼方に』。ステージ上に立ったプレゼンテーターのラミ・マレックが封筒を開け、彼女の名を呼ぶと、同時に会場に流れたのはもちろん、あのナンバーだった。

ハリウッド黄金期を代表する大スター、ミュージカル女優ジュディ・ガーランドの生涯のテーマソング「虹の彼方に」=「オーバー・ザ・レインボー」。この世紀の名曲に包まれながら、ジュディの晩年を演じたレネーは栄光のステージへと向かったのだ。

映画『ジュディ 虹の彼方に』スペシャルMV

ところで、説明するまでもないだろうが、「虹の彼方に」は1939年公開のミュージカル映画『オズの魔法使』の劇中歌。当時16歳のジュディがヒロインのドロシーとして唄い、アカデミー賞の歌曲賞を受賞している。なぜ確認したかといえば『ジュディ 虹の彼方に』は冒頭、『オズの魔法使』のエピソードから始まるのである。撮影所でのジュディとハリウッドの最高権力者、ルイス・B・メイヤーとの対話で、自我の芽生えた彼女を狡猾にコントロールしてゆく様が描かれていく。

『オズの魔法使』は少女ドロシーが、カンザスの農園から“黄色いレンガ路”を辿り、エメラルド・シティを目指す寓話だが、ルイス・B・メイヤーはジュディとレンガ路のセットを歩きながら言葉巧みに恫喝する。エルトン・ジョンが「グッドバイ・イエロー・ブリック・ロード」で歌った通り、そのレンガ路とは世俗的な“成功への道”なのであった。が、それを手にする代償としてジュディは子役時代から過密なスケジュールを押し付けられ、おまけに会社からは覚醒剤と睡眠薬の常用も課せられており、身も心も蝕まれ、後年まで複数の後遺症で苦しむことになる。

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子どもたちのためロンドンへと旅立つジュディの姿が描かれる
(c)Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

結局彼女は、47歳の若さでこの世を去るのだが、映画の中でレネー・ゼルウィガーが体現してみせたのは最期の半年間、1968年冬に挑んだ「ロンドン公演時のジュディ」である。たとえ私生活がボロボロでも、スポットライトを浴びれば最高のエンターティナーぶりを発揮。そういえばルイス・B・メイヤーは冒頭、本当のことも言っていた。

「君には誰にも負けないものがある。君のその声だよ」

そんな不世出の女優、ジュディ・ガーランドを甦らせたレネー・ゼルウィガーは天晴れの一語! 本作はジュディの光と影、そして“虹の彼方”に浮かぶ微かな希望を手に掴み取ろうと、真摯にアプローチしている。


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映画『ジュディ 虹の彼方に』

2020年3月6日(金)全国ロードショー
原題:JUDY
監督:ルパート・グールド
脚本:トム・エッジ
出演:レネー・ゼルウィガー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、ジェシー・バックリー、マイケル・ガンボン
配給:ギャガ

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轟 夕起夫

(とどろき・ゆきお)1963年東京都生まれ。映画評論家。近著(編著・執筆協力)に、『好き勝手 夏木陽介 スタアの時代』(講談社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督 塚本晋也』(ぱる出版)など。読む映画館 todorokiyukio...

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