映画版の公開(12月24日)を待ちながら『ジャンプ』大好きライター・さわだが『呪術廻戦』(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)の既刊を1巻ずつ振り返っていく企画。今回は15巻、いよいよ最終局面「渋谷事変」を解説する(以下考察は、15巻までのネタバレを含みます)。
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野薔薇の生存問題
10月4日に発売された17巻をもって累計発行部数が5500万部を突破した。主演・小栗旬で映画化もされた同じジャンプの人気漫画『銀魂』が77巻で同じ発行部数なのだからとてつもない記録といえる。正確な数字はわからないが、歴代では30位くらいだそうだ。
そんな『呪術廻戦』の読み直し連載も今回で15巻目。難解な長編「渋谷事変」も最終盤に突入、解釈の間違いに怯えながら振り返りたいと思う。
15巻の大きなトピックスのひとつは、ヒロイン的存在の釘崎野薔薇(くぎさき・のばら)の生死問題だ。14巻のラストで突入した不穏な空気の回想(唯一の友人・ふみの視点)は、野薔薇が死ぬほど嫌っていた田舎での生活について。
ふみと都会から引っ越してきた7歳上の沙織ちゃんの存在は居心地のいいものだったが、「近所のお婆ちゃんが赤飯を炊いて持ってきた時 野薔薇ちゃんの言っていたこと その気色悪さを理解できた」というふみのセリフだけで、住んでいた村の閉塞感と息苦しさを想像させる。そんな野薔薇にとって、東京で出会った虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)たちは、つまらない常識を覆す存在だった。
寂しくも温かな回想は、凶悪な呪霊・真人(まひと)との戦いの真っ最中でのこと。エピソードが終わった瞬間、野薔薇は「悪くなかった」と言い残し、頭を吹き飛ばされてしまう。作中でも指折りのショッキングなシーンだ。弾け飛ぶ野薔薇の目玉を見たかった読者なんて存在したのだろうか。
とはいえ、ハッキリと「死亡」とはされていない。治療を得意とする家入硝子(いえいり・しょうこ)もいるし、傷の状態を悪化させない術式の持ち主・新田新(にった・あらた)の「助かる可能性は0じゃない」は、どう見たって生存フラグだ。
しかし、心配なのは、生存フラグがフリである可能性。作中屈指の人気キャラ・七海建人(ななみ・けんと)は、一度死んだかと思わせてその後に生存が確認され、そしてその直後に真人にトドメを刺されている。ファンの気持ちを弄ぶように乱高下する演出はインパクトが大きかった。
野薔薇の生存問題でも、普通の漫画だったら生きているはずのフラグを利用し、読者をどん底に突き落としてくる可能性は低くない。憎たらしいことに作者・芥見下々は、漫画をたくさん読んできた層を騙すテクニックに長けているのだ。
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