『呪術廻戦』15巻。過去最高の特殊能力バトル!『HUNTER×HUNTER』とは逆だ


びっくりするほど「お前がやるんかい!」

もうひとつのトピックスは、吉野順平(よしの・じゅんぺい)、七海、野薔薇(定かではないが)を殺した(作中最も嫌われている)呪霊・真人と、主人公・虎杖の対決だ。頭を吹き飛ばされた野薔薇を目の当たりにした虎杖は、心が限界を迎える。ここからブチギレて、「さぁ覚醒モードだ!」と行きたいところだが、なんと真人がここで黒閃を成功させる。

黒閃とは、肉体的攻撃に呪力がキレイに乗っかること。簡単にいうとクリティカルヒットみたいなもので、これを狙って出せる呪術師はおらず、成功すると呪力への理解が深まるとされている。黒閃は、攻撃でありながら修行のような役割を果たす、主人公気質な技なのだ。過去には虎杖もこれでレベルアップしている。

虎杖が精神的に追い込まれ、漫画の主人公として覚醒しそうなシーン。なのに黒閃を見せたのは真人だ。こんなにも「お前がやるんかい」なシーンも珍しい。

真人「なぁ虎杖悠仁。殺した呪いを数えたことはあるかい?」

黒閃でハイになった真人は、虎杖に思いの丈をぶちまける。この戦いは呪いと人の戦争であること、立場は違えどお互いが似ているということ、ポリシーを叫ぶ真人はもうイケイケだ。決着をつけようとした瞬間、虎杖のブラザー・東堂碧(とうどう・あおい)が助けに来る。

『呪術廻戦』<15巻>芥見下々/集英社(125〜133話)
『呪術廻戦』<15巻>芥見下々/集英社(125〜133話)

虎杖&東堂vs真人を考える

虎杖&東堂vs真人。東堂は、柏手を打つことで呪力のある人(あるいは物)の位置を入れ替える「不義遊戯」(ブギウギ)を駆使して真人を翻弄。さらに気力を失った虎杖に呪術師として気構えを説く。これで虎杖は黒閃を決めて復活を果たす。ついでに東堂までも黒閃を放ち、この場にいる3人それぞれが実力以上の力を出してバトルに挑むことになる。

東堂は真人が生み出す超攻撃的改造人間を分析し攻略、真人は虎杖の中に潜む両面宿儺(りょうめんすくな)を刺激しないようイチかバチかわずか0.2秒だけ領域展開「自閉円頓裹」(じへいえんどんか)を発動し、東堂の左腕を切断する。トドメを刺そうと真人が接近すると、片腕の東堂は真人の右手を利用し、「不義遊戯」で自身と虎杖の位置を入れ替える。まさかの「不義遊戯」にもかかわらず、虎杖は準備していたかのように真人に黒閃を決めた。

それでも成長真っ只中の真人は、自らの魂の本質を理解し、「遍殺即霊体」(へんせつそくれいたい)という変身技を披露する。ここからは虎杖と真人の肉弾戦が展開される。しかし、勝負を分けたのは左腕を失った東堂だ。先ほどは真人の手を利用して「不義遊戯」を発動させていたが、今度は右手と左腕の切断面を使って柏手を打つ。

ネテロ「祈りとは心の所作」

『HUNTER×HUNTER』ではネテロ会長が左手を失いながら両手を合わせて能力を発動していた。しかし、東堂の場合はその逆だった。

東堂「俺の「不義遊戯」はもう死んでいる」

失った左手を使った柏手はフェイクだった。不義遊戯は発動せず、一瞬の隙をついた虎杖が黒閃を決めて、決着。

“最悪”をバトンタッチ

緻密な思考と迫力ある構図、スピーディでありながら術式のシステムをフル活用した戦い。満を辞しての真人とのバトルなだけに、これでもかと特殊バトルの醍醐味が詰め込まれていた。

最後は、味方であるはずの偽夏油(にせげとう)に吸収されるかたちで魂を失った真人。残酷で軽薄でレベル違いの嫌われっぷりだったはずなのに、最後の「知ってたさ」というセリフが物悲しい。真人から偽夏油へ、“最悪”というキャラをバトンタッチして15巻は終わった。

『劇場版 呪術廻戦 0』特報【12月24日(金)公開】

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