YouTubeチャンネル『しもふりチューブ』や『みんなのかが屋』を手がけ、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)の企画・構成にも最年少で携わる29歳の放送作家・白武ときお。彼の書籍『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)が業界内外から注目を集めている。
“お笑い第7世代”と共に仕事をすることが多く、テレビやYouTubeといったメディアの枠を超えた仕事ぶりで、おもしろいコンテンツを次々に生み出している白武。本書には彼の視点から「YouTubeの隆盛と芸能人参入」、「第7世代論」、「コロナ禍のエンタメ事情」、「エンタメ業界で必要とされるスキル」などが語られている。
本記事では、その書籍の内容を一部抜粋して紹介。今回は「第7世代論」について書かれたパートを掲載する。
※文中の表記等はすべて本書のまま掲載していますが、一部の見出しや要約部(グレー部分)などはQJWeb編集部による追記です。
目次
霜降り明星せいやの「第7世代」発言
今や完全に市民権を得た「お笑い第7世代」という言葉。もともとは霜降り明星のせいやが『M-1グランプリ2018』の優勝後に、自身の冠ラジオ『霜降り明星のだましうち』で「第7世代」という言葉を出したことが始まりだ。
それまでにも若手芸人が中心となるバラエティ番組などは存在したものの、ムーブメントにまでは至らなかった。しかし2018年、ハナコが『キングオブコント』で、霜降り明星が『M-1グランプリ』でそれぞれ優勝し、実力を証明。そしてせいやの「第7世代」発言により、若手芸人ブームに一気に火がつくことになる。
(せいやの「第7世代」発言の)数日後には静岡朝日テレビでやっていた霜降り明星のYouTube番組『パパユパユパユ』の収録が控えていました。僕は「第7世代」というワードが面白いと思い、それを押し出していこうと、お笑い芸人を世代別に区切ったフリップを作ったんです。
第1世代から第3世代までは、それまでもなんとなく語られていましたが、4、5、6世代が曖昧だった。そこで、第4世代がナインティナインさん、爆笑問題さん、ネプチューンさんなどの『ボキャブラ天国』世代。第5世代が『エンタの神様』、『笑いの金メダル』、『M-1グランプリ』世代。第6世代に『ピカルの定理』、『キングオブコント』、『THE MANZAI』ときて、いまが第7です、という具合に定義しました。
その場でも大いに盛り上がったので、僕はテレビの会議用に「こういうくくりがあるんですよ」という企画書をたくさん書きました。
言葉のキャッチーさが大きなムーブメントにつながった
霜降り明星以外に初めて「第7世代」という言葉が使われた番組は『ネタパレ』です。そのときは、2015年結成のコンビ、かが屋に対して使われていました。『ネタパレ』は、EXIT、宮下草薙、四千頭身など、お笑い第7世代にくくられる若手芸人たちの主戦場。新たな面白さと価値観をもった代の才能あふれる芸人さんたちの存在が、ブームを加速させています。
テレビ業界は長い歴史のなかで、「どれだけの世帯が見たか」を示す世帯視聴率を重視してきました。それが近年、「性別や年齢などの項目別で誰がどれだけ見たか」を示す個人視聴率が重視されるようになってきています。
リーディングカンパニーである日本テレビは、13〜49歳をコアターゲットとして「世帯視聴率をできるだけ下げずに、若年層の視聴者層を掘り起こそう」という明確な意識改革を行っています。
ですから、テレビ局や制作者たちが“若い人たちが見る番組”を求めているところにアンダーの若い世代が出てきたことも、「第7世代」ブームの大きな要因のひとつだと思います。ビジネスの面からしても、追い風が吹いていた。
その後、2019年3月30日放送の『ENGEIグランドスラム』が大々的に「お笑い第7世代」のくくりをぶちあげたことで、その概念が一気に広まっていったように記憶しています。
「お笑い第7世代」というのは、言葉から先に生まれたある種の概念みたいなものだと思うんです。
夏目漱石が「肩こり」という言葉を作ったことで、人々は肩こりを感じるようになった、なんて話がありますが、お笑い芸人の世代交代も、先に「お笑い第7世代」というキャッチーな言葉があり、それにハマる人がたくさんいたから大きなムーブメントになった。
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