なぜ“第7世代ブーム”は起きたのか?|お笑い第7世代の仕掛け術


演芸が得意すぎる新世代のリーダー

実際、霜降り明星が出てくるまで、新しいお笑いの枠はぽっかりあいていました。

『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』を中心に、有吉弘行さん、ザキヤマさん、フジモンさん、おぎやはぎさん、バナナマンさんといった、40代の芸人さんたちの掛け合いが面白すぎたため、出演者の入れ替わりがまったく起きませんでした。

お笑い業界は、高齢化が進んでいます。『M-1グランプリ』は出場資格が芸歴10年から15年に引き上げられ、若手の活躍が見てもらえるネタ番組はゴールデンタイムにはない。

膠着状態がしばらく続いているなかで、霜降り明星がそこに風穴をあけ、そこからEXITや四千頭身などが続々と台頭することができた。20〜40代の幅広い世代が融合した、新しいバラエティの構造に変わっていったんです。テレビ番組の顔ぶれがどんどん変わっていくさまは、そばで見ていてすごくワクワクします。

当初は、こんなに大きな現象になって、テレビの出演者が一気に入れ替わるとは思っていませんでした。最近では自分たちを「6.5世代」だと定義したり、おじさんなのに「俺は第7世代」と言い張ったりする人たちが出てきて、さらに面白いことになっています。

クイック・ジャパン vol.145
霜降り明星が表紙を飾った『クイック・ジャパン』vol.145(2019年8月発売)

ワードがキャッチーなのもポイントですが、霜降り明星の存在がいかに大きいか。彼らが、お笑い業界が待望していた“演芸が得意すぎる新世代のリーダー”だったために、ここまでの革命が起きたのです。

霜降り明星からの提案「やるなら毎日やりましょう」

実際に霜降り明星と仕事をしてみて、20代の芸人であれだけの実力があり、二人だけで面白くできる能力が仕上がっているのは本当に凄いと思います。

まず、トークのスピードが速すぎます。いわゆるYouTuberは、トークの間をバツバツと切ってテンポよく見せる“ジャンプカット”という編集をすることが多いのですが、霜降り明星でそれをやると、逆に違和感が出てしまうくらいポンポンと素速くトークを展開する。

ただしゃべっているだけで成立してしまうので、「しもふりチューブ」に関しては「やっぱり芸人がYouTubeやると違うな」というリアクションをされることが多いんです。1年で365本作っているわけですが、素材の段階で「編集でなんとか面白くしないと!」ということがありません。

1年で365本と書きましたが、それは「しもふりチューブ」を始めるにあたっての打ち合わせのとき、二人が「やるなら毎日やりましょう」と言ったから。

もちろん、それはYouTubeをやるうえで圧倒的に正しい選択なんですが、2019年ブレイクタレント1位、テレビ出演本数307本の忙しさ。スケジュールを考えたら、こっちから言えることではありませんでした。だからその言葉を聞いてシンプルに「かっこいいな」と思いましたね。

「やるならやる」という気持ちでいてくれたので、こちらも「分かりました」とふんどしを締め直して、毎日動画を更新できる態勢を整えたんです。

1日30本撮りの「オフ旅龍宮城編」

具体的には、どのように撮影をしているのか。企画の出所は3つあって、ひとつは僕、もうひとつは霜降り明星、それから視聴者からのリクエストです。よくやっているパターンだと、まず二人の前に僕が考えた企画と、視聴者からのリクエストを書いた紙を10枚くらい並べて、どれをやるか選んでもらって進めていきます。

霜降り明星は自分たちからも話したいテーマやオリジナルゲームをどんどん提案してくれるので、熱量の高いものから撮影していきます。

簡単な打ち合わせで、今日は企画系を2つ、質問系を2つ、ゲームを2つ、あとはそれぞれしゃべりたいことしゃべりましょうかと、なんとなくのその日のスケジュールを共有したら、実際には基本的にフリーに撮影していきます。

2019年の特番時期、霜降り明星のスケジュールが取れなくなりました。その制約を生かして、1日で30本の撮影に挑戦してみようと「オフ旅龍宮城編」が生まれたんです。

30本撮影するという無茶振りにも、彼らはちゃんと取り組んでくれます。凄く真面目で「やるからには全力でやる」。軸がぶれません。

テレビではボケとツッコミの役割を分け、徹していることが多いのですが、実は、二人ともボケとツッコミができます。ラジオやYouTubeのように、二人だけのフリーの場になると、役割がスイッチして入れ替われるところも見られます。

僕たちの世代が視聴者として一番“お笑いのネタ”を見ている

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