YouTube最新トレンドを放送作家が解説。芸能人の参入で激変する“ヒットの法則”とは?

2020.3.18
YouTube最新トレンドを若手放送作家が解説。芸能人の参入、明暗は“演者の熱量”?

文=原 航平 編集=田島太陽


昨年末に発売された『クイック・ジャパン』vol.147で行われた座談会企画「YouTube on the border 2019」では、テレビとYouTubeの双方で活躍する放送作家たちに2019年のYouTubeシーンについて語り合ってもらった。

その際に話題に上がったのは、YouTubeはとんでもなく流行の移り変わりが早いということ。それは、2020年に入りさらに勢いを増す芸能人の動画への参入を見ていても明らかだろう。

ということで本誌から『QJWeb』に場所を移し、YouTubeでの最新トレンドを語り合う座談会を開催。今回は20代の若手放送作家たち4名に集まってもらい、芸能人の大量参入やその明暗が分かれるカギとなるもの、過渡期に差しかかった一般YouTuberの勝算などについて議論してもらった。

白武ときお
(しらたけ・ときお)1990年生まれ、京都府出身。放送作家・YouTube作家。『しもふりチューブ』(YouTube)、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)、『霜降り明星のあてみなげ』(静岡朝日テレビ)、『みんなのかが屋』(YouTube)などを担当。@TOKIOCOM [email protected]

長崎周成
(ながさき・しゅうせい)1991年生まれ。『フワちゃんTV』(YouTube)など。株式会社チャビー代表。@shuuuuuusei

板倉 輝
(いたくら・ひかる)1993年生まれ。『ミュージックステーション』(テレビ朝日)、『あいちゃんねる』(YouTube)、『スイモクチャンネル』(BS-TBS)など。@57hkr

細川拓朗
(ほそかわ・たくろう)1993年生まれ。『おるたなChannel』『ホソカワ・ザ・ムービー』(YouTube)、『かみひとえ』(テレビ朝日)、『ザ・ベストワン』(TBS)など。@hosokawa_movie


川口春奈が出した“圧倒的正解”

「芸能人のYouTube参入」については昨年から徐々に増えていましたが、2020年に入りさらに勢いが増しています。まずはこのトピックについて、放送作家のみなさんはどのように感じていますか?

たまったもんじゃないっていうか……(笑)。YouTube全体で見るともちろん盛り上がっていて最高なんですけど、僕らみたいな、ここ数ヶ月とかで新しくリリースしようと準備していた芸能人チャンネルのハードルが一気に上がってしまった印象はありますね。急激に舵を切り直した裏方たちは多いと思います。川口春奈さんとか、「これは圧倒的正解を出されたな」ってくらいに衝撃的でした。

川口春奈さんが実家で赤ちゃんをあやしている動画とか、あの破壊力はなかなか出せないですよね。本田翼さんがゴチで負けて大金を払う日の朝のメイク動画も、ちょっと破壊力が違うなっていうレベル。

川口春奈 実家でまったり過ごします!【Vlog】

ローラさんも含め、このあたりの芸能人の登場で「眼福」っていう新しいジャンルが確立されたと思っていて。企画内容も大事なんですけど、「眼福」で再生回数が伸びる人もいる。カワイイは正義なんだって改めて思いました。

たとえば『inliving.』に代表されるVlogger(※)のように、「眼福」がひとつのフックになっているチャンネルはこれまでにもあったかと思います。それを現役の人気女優がやったことによって“圧倒的正解”につながったのでしょうか?

※Vlogger=ビデオブロガーを意味する造語

忙しい人のためのインリビング。

それもありますし、川口春奈さんの動画は言ってしまえば「五島列島の実家に行くだけ」だったりするんですけど、それをテレビで放送できるかっていうと難しいところがあるので。その特別感もあると思います。あの企画が実現できたことも含めて圧倒的正解でしたね。

『メレンゲの気持ち』、『今夜くらべてみました』(日本テレビ)とかテレビの引っ張りになるようなプライベートVTRをYouTubeで出している感じ。演者自身が編集権を持っていることもあって、ギリギリまでプライベートを見せられるようになった。

テレビでは編集をお任せするため「これは放送してほしくないかも……」ってところが意見しにくいはず。でもYouTubeは自分でブランディングできる安心感がありますよね。それで言うと、東野幸治さんが始めたチャンネルも「YouTubeでラジオをやる」というところに驚きがありました。放送局に頼らなくても自分でプラットフォームを選んで発信できる時代で、自由に展開することができますね。

【第1回】東野幸治がYouTubeを始めたいくつかの理由

最初に出した動画で東野さんが言ってましたけど、4月から始まる予定だったラジオがスポンサーが決まらない都合で流れてしまって、「じゃあYouTubeでやろう」となったんですよね。その「YouTubeで始めちゃおう」とすぐ届けられるのがすごい。スタッフも家族でやっているということですし。今の時代を象徴していますよね。

数年前までなら、その状況で「YouTubeを選ぶ」ことが選択肢に入ってこなかったと思うんですけど、いろんなプラットフォームやデバイスが横一直線に並ぶようになってきましたね。見る側にとって視聴環境自体は平等。演者さんは自分に一番合っていて、かつ収益を得られる場所を選ぶことができるようになった。

YouTubeはカジサックさん以降、確実に芸能人が参入しやすくなったと思います。開拓者の功績が光りますね。

熱量と目標設定で抜きん出た『エガちゃんねる』


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原航平

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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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