YouTube最新トレンドを放送作家が解説。芸能人の参入で激変する“ヒットの法則”とは?

2020.3.18


熱量と目標設定で抜きん出た『エガちゃんねる』

YouTubeへの参入がしやすくなった一方で、「芸能人がやれば必ずウケる」という状況では決してないですよね。芸能人YouTubeチャンネルの明暗を分けるものはなんだと思いますか?

僕は「演者の熱量」がとても大きいと思っています。カジサックさんの「期限まで登録者数100万人達成できなければ芸人引退」という腹のくくり方はある種のお手本のようなものですが、川口春奈さんみたいに「ゆるくやります」スタイルであっても、自撮りをしていたりほかのメディアでは出していない部分を見せようとしてくれたり、そういうところで熱量やYouTubeへの愛を感じる。

もともとYouTubeの文化って、企画・出演・撮影・編集をすべてそのYouTuberがやるところに才能と熱量を感じて、視聴者は応援したいとか、継続して見たいとか思うような構造になっていますもんね。たとえば藤田ニコルさんは自分で撮影と編集をやっていて、その熱量にファンはついて行っている。

江頭2:50さんにしても、「俺はやりたいことを全部やってやる!」という意気込みから熱量が伝わってきて、心に刺さるんですよね。

本田翼さんも自分で編集やっているらしいですからね。それ知ったあとに見たら、確かにちょっとゲームっぽい効果音とかテロップが入ったりしていて。演者としてだけでなく、撮影・編集も含めて動画全体を愛せるようになるんですよね。

本田翼 24万8千2百円を払う日の朝

心からYouTubeを好きでやっているんだっていうのが伝わると俄然応援したくなりますよね。

すいません、遅れました!

何してたの?

渋滞してまして……。今なんの話ですか?

川口春奈さん、藤田ニコルさん、本田翼さんなどがすごい、という話題でした。

確かに。本人が「YouTubeやりたい!」って言って撮影・編集までしているものと、制作会社と組んでただ単に出演者として出ているものは差がすごいからね。

「やらされてます感」とか「一応YouTubeやっときますか」っていうのは視聴者に伝わっちゃう。本気でやらないと、残念ながら視聴者はついてこないんだよね。

江頭さんの話で言うと、演者としての熱量はもちろん、最初の打ち出しが強かったじゃないですか。「チャンネル登録者数が100万人を突破したら草彅剛さんとコラボする」っていう。あれはポジティブな目標設定だったのがよかったと思っていて。

「100万人“いかなかったら”」じゃなくて「100万人“いったら”」っていうのがYouTubeの応援文化とうまく結びついたから、信じられないスピードで登録者数が伸びたんだと思います。僕たちが見たいのはポジティブな結末ですもんね。

100万人達成でありがとうの股間大爆破!

『THE FIRST TAKE』の巧みなプロモーション戦略

ミスター都市伝説の関暁夫さんもYouTubeにかける熱意が違いました。関さんは7冊も都市伝説の本を出しているけどそのネタを一切使わないで、「ほかの都市伝説系YouTuberに謎を提供する」っていうスタンスで始めていて。

関さんが出した「緊急クエスチョン」動画を基に、水溜りボンドさんをはじめとするYouTuberが考察動画を上げていましたね。

いまや「都市伝説系」はYouTubeで一大ジャンルを築いているなか、ようやく本家が降臨して。ほかの都市伝説系YouTuberの雰囲気をなぞるのかなと思いきや全然違いましたもんね。関さんらしい新たな挑戦だと思う。YouTubeへの殴り込み的な。

収益化とかどうでもいいんだと思います。本当にエンターテイナーだと思います。

Mr.都市伝説 関暁夫からの緊急メッセージ

収益化度外視の話で言うと、『THE FIRST TAKE』っていうYouTubeチャンネルがあるじゃないですか? いろんなアーティストが登場して一発撮りでパフォーマンスを見せるっていう。あれは広告収入というよりはプロモーションの一環なんだと思います。

今まで音楽番組ではやってこなかった、ある種やれなかった新たな方向性の動画を上げていて、音楽番組とは違った価値が出てくるのではないかなと思って見ていました。LiSAさんが歌う『紅蓮華』の動画が、2000万回再生超えてるでしょ?

LiSA - 紅蓮華 / THE FIRST TAKE

番組・企業・個人に限らず、誰もがYouTubeチャンネルを持ってプロモーションしていく時代になってきていると思います。

動画を出すペースとか見せ方とか、自分でコントロール権があるのがいい。

芸能人が広告収入だけでつづけていくのは制作上、現実的に考えて難しいし。そのためには広告タイアップの案件を受けたりしないといけないけど、川口春奈さんの次の動画が案件だったりしたら笑うもんね(笑)。そういうわけにもいかないっていう。だからプロモーションにつながるものになってくるんだと思います。

一般のYouTuberに勝算はあるのか?


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原航平

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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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