なぜ“第7世代ブーム”は起きたのか?|お笑い第7世代の仕掛け術


お笑い第7世代は“お笑いマニア”

お笑い第7世代は“ナチュラルダイバーシティ感覚”をもっていると感じることが多々あります。たとえば、四千頭身の3人のほのぼのして仲が良い感じは、見ているだけで楽しいと思いませんか? 先輩からの飲みの誘いは絶対というような縦社会や、暴力・体罰のある世界に育ってないようなゆるさがある。そして、嫌なことは無理してやらない。

芸人だけではありませんが、今の20代には「ナンバーワンよりもオンリーワン」という感覚が自然と備わっていると思います。だから、他人に対しての接し方も“多様性がある”という前提だし、偏りがちな価値観も日々アップデートしていく柔軟な感覚がある。

「人を傷つけない笑い」という言葉が生まれたように、いまどきの価値観を身につけていることで、安心して見ていられるという視聴者は多いのではないでしょうか。

お笑い第7世代の特徴をもうひとつ挙げるとしたら、めちゃくちゃお笑い好きが多いこと。『M-1甲子園』みたいな大会もあったから、学生お笑いの熱量もすごくあったし、霜降り明星もそこから出てきたように、NSC以外でもプロのルートが開けていたのも大きかったと思います。

それと、これまでの歴史のなかで、たぶん僕たちの世代が視聴者として一番“お笑いのネタ”を見ていると思うんです。学生時代にテレビでは『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』のようなネタ番組が全盛期で、死ぬほどお笑いのパターンを見ていました。当時はレンタルDVDも全盛。『M-1グランプリ』や『ダウンタウンのごっつええ感じ』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』など1990年代の作品、当時の人気芸人のコントライブもほとんどソフト化されていたので、お笑いマニアのような人が少なくありません。

一緒にYouTubeをやっている、東京の若手コント師のなかではかなり期待されているかが屋の二人も、完全にお笑いマニアタイプです。

ひっそり燃える“第7世代の裏方”

いまは第7世代のターンだけど、その前には『爆笑レッドシアター』や『ピカルの定理』のターンがありました。いまでもバリバリ活躍されている方がいますし、解散されている方もいます。先人たちが作り上げたお笑いを幼少期から見て、それに憧れ、笑いの知識をマニアックに蓄積してきたいまの若い世代が、5年後、10年後、どうなっているかがとても楽しみです。

そのとき、みんなで生き残っていたら楽しいですが、もし第7世代だけで集まった番組が立て続けに終わっていったりすると、また状況は変わってきてしまうでしょう。僕もいくつかの番組で彼らと関わっているので、第7世代同士の座組みの面白さを発揮できたらいいなと考えています。

僕自身、“第7世代の裏方”といわれることがあります。自分では意識していないつもりですが、第7世代たるセンスや価値観をもっているのかもしれません。怒ったりしないし、ゆるい感じに見られることが多いけれど、「どうせやるなら結果を出したい」とひっそり燃えているタイプです。

それは、絶対にテレビの世界で勝ってやるだとか、放送作家-1グランプリで1位になりたいということではありません。

テレビでも、YouTubeでも、Netflixでも、面白そうなことができるならどこにでも行って結果を出したい。人に深く楽しんでもらえる、記憶に残るコンテンツを生み出したい。わかりやすくギラギラしているわけではないけど、心の中には青い炎が燃えています。


  • 『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』

    『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』

    著者:白武ときお
    出版社:扶桑社
    価格:1,540円(税込)

    【収録内容】
    地上波番組の放送作家として、またYouTubeの放送作家として媒体を越境しながら働く白武氏が、YouTubeとテレビの最前線の現状を分析。メディア論にとどまらず、エンタメ業界で必要とされるスキルや、白武氏が実践しているライフハックなども紹介。実践に基づいたカルチャー&ビジネス書となっている。
    第1章:YouTube 革命(YouTube年表収録)
    第2章:お笑い第7世代の仕掛け術(かが屋×白武 座談会収録)
    第3章:テレビは時代遅れか?という議論には意味がない
    第4章:コロナ禍のエンタメ事情
    第5章:裏方人生
    第6章:第7世代的仕事論

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