お笑い芸人・かが屋の加賀翔と放送作家の白武ときおが“エロチシズム”にまつわる自由律俳句を詠み合う企画「エロ自由律俳句」。今回は、灘中高から東大理三に進学して「ベテランち」としてYouTube活動をしている青松輝さんがゲストとして登場。短歌の世界で才能を発揮している青松さんと共に、記憶に残るエロを自由律俳句にしたためる。
加賀 翔
(かが・しょう)1993年生まれ、岡山県出身。賀屋壮也と2015年に「かが屋」を結成。『かが屋の鶴の間』(RCCラジオ)レギュラー出演中。QJWebでは「カメラ部」企画で自身が撮り下ろした写真を毎週更新中。
白武ときお
(しらたけ・ときお)1990年生まれ、京都府出身。放送作家・YouTube作家。『みんなのかが屋』『しもふりチューブ』『ざっくりYouTube』(YouTube)、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)、『かが屋の鶴の間』(RCCラジオ)などを担当。【ツイッター】@TOKIOCOM 【メール】[email protected]
青松 輝/ベテランち
(あおまつ・あきら/べてらんち)1998年生まれ、奈良県出身。灘中学・灘高校を卒業し、東京大学理科三類に進学。同じく灘出身メンバーとYouTubeチャンネル『雷獣』を運営。登録者数は6万を超える。【ツイッター】@_vetechu
エロ自由律俳句に短歌の本格派が登場
ベテさんは何歳でしたっけ?
24歳です。
もしかしたら本句会最年少エロいやつかも。
(前回ゲスト、ダウ90000)蓮見(翔)くんと同学年だと思います。
すごいですね、エロ自由律も若くなりました。若い子にも届き始めて。
僕、『雷獣』っていうYouTubeチャンネルをやってるんですけど、メンバーのかべちゃんからエロ自由律がおもしろいって教えてもらったんです。前に出てた蓮見くんに教えたのもかべちゃんらしくて。
かべ君が若手エロ自由律のハブだったの(笑)?
かべちゃんにもお声がけしてあげてください(笑)。
ベテさんは本格的に短歌をやられてますけど、その出会いは?
大学で「なんか始めたい」と思ったときに短歌があって。
何か発信したくなった時期に。
中高時代から、音楽とかお笑いが好きでやりたい気持ちもあったんですけど、東大を目指しながらそれをやるのはいろいろハードルが高くて。
なるほど。
大学で、短歌っていう始めるのに手頃そうなものを見つけて、とりあえず東大の短歌サークルに足を運んでみたんですよね。
『雷獣』をやり始めたのはその後?
短歌をやってなかったらYouTubeもやってないと思います。何をやるにもずっとハードルが高いままで終わってたと思うんですよ。何かを作ってる人間がまわりにできていって、普通の人間が普通にやってるだけだと気づいてきたというか。そんな感じで今は短歌をつづけています。
短歌の本格派が詠むエロ自由律ですね。
また違う流派のエロ自由律も楽しみです。
加賀の5句「これは素晴らしい遊戯なんです」
【加賀の句①】
電球を替える爪先の白さ
相手が電球を変えるのを見てるんですよね。スツールのようなものに裸足でのぼっていて、踏ん張っている爪先がすごく白くなっている。それを凝視してしまうんですよ。少しでも小突けばすぐにでもこの人を転ばせることもできるという状態。
弱点みたいな?
電球を変える指先と足の爪先にすべての神経が集中してる、この無防備さですね。
この状況に出くわしたことがないです。見てみたい。
まあ僕もね、本当にこの状況に出くわしたかどうかはアレなんですけど。
普通は電球を替えてたら上を見ますけど、ほかの人が見てないところを見てるというエロですよね。
相手が見られている意識がないというのもエッチだなと。
足の裏とかも、ピーンって張ってたりするとエロいですよね。
足の裏はエロいね。張ってるのもエロい。
だいたいエロいときって、なんか……
張ってる!
そろった(笑)!
【加賀の句②】
古い電球を持ったまま真っ暗
つづきみたいな一句です。電球を変えるときってまず電気を切らなくちゃいけない。新しい電球をはめたあと、「(電気を)つけていいよ」って会話があるんですけど、それを無視することで暗い状況を維持できるという。電気つけてほしい側の意見は受け入れられず、真っ暗なまま。その状況がすごくよいなと。
いいですね。
これは“m”の音がつづくんですよね。「もったまままっくら」。
あー確かに。韻律の中に。
M心をふんだんに落とし込んでみました。
これは詠んでる人がSということですか?
どちらでも成立すると思います。Sだったら自分がスイッチを握ってる。Mだったら相手がスイッチを握ってる。あ、これ心理テストになりますね(笑)。
前回の句会でも加賀くんがすごいドMだって開示してて、そのあと『キングオブコント』を見たんで。
たまたまですよ(笑)。
スイッチってエロいですからね。エロ漫画とかでもありますよね。
僕、エロ漫画通ってなくて……勉強しなきゃダメだな。前にエロ自由律のファンの方からこれよかったらってエロ漫画のリンクが送られてきました。
そういえば賀屋(壮也)さんはね、エロ漫画大王ですよね。
エロ漫画大王(笑)?
2カ月で15万円エロ漫画に使ってました。
エロ漫画で破産しちゃう。
【加賀の句③】
レンタル充電器がはまってなくて一押し
レンタル充電器っていうのはあの水色とかの?
そうです。コンビニとかで借りられる充電器を返すときの情景です。
僕、借りたことないです。
え、ほんとですか? 僕めちゃめちゃ借りるんですけど。
僕もめちゃめちゃ借ります。1回300円とかで、1週間返し忘れたら3000円で買い取りとかなんですけど、ひどいときは月1万円とか払ってました。
レンタル充電器をコンビニに返すときって何かが終わる瞬間なんですよね。解散する手前の瞬間とか。返す瞬間にはまってないことに気づいた人がとどめを指すようにカシャンって押し込む。逆にはまってなかったらまだ関係は終わってない。
あれって、ちょっと力を込めないと刺さらないんですよね。ただ置くだけじゃだめで。だから、最初読んだとき、もっと挿入に対する直接的なメタファーかと思いました。
確かにそれもあるかもしれない。グッと押し込むときに、明らかに気持ちがいいんですよ。偶然では刺さらなくて、自分の意思を持たないとハマらない感覚があるよね。
充電器会社の人もそれを意識してるんじゃないですか? 快楽を与えてやろうと思って。
僕も前お付き合いしてた子の家に行ったら棚にそれが3つくらいあって。返し忘れちゃうんだと。そのだらしなさがいいなと思いました。かばんが汚いとか靴が汚れてるとかに感じる整理できないことの愛しさ。
それはなんかわかりますね。自分がきちんとしてるから逆にそう思うのかも。
たぶんそうですね。僕はそういうの借りたことない人がグッときます。
【加賀の句④】
石頭を確認させられる
石頭って触ってもわからないんです。なので「石頭なんだよ」ってどちらかが言った瞬間に頭突きが確定するんですよ。
ほぇー。
ほぇーって(笑)。
自分のほうが石頭だった場合は相手が痛がって、それはそれでかわいいです。で、相手のほうが石頭だった場合僕の「痛ってー」で確実に笑いが起こります。石頭が証明されたときって笑顔が生まれるんですよ。石頭を確認するというのは素晴らしい遊戯なんです。
え、ちょっと待ってください。向こうが石頭で僕が競り負けた場合、どこで笑いが起こるんですか?
白武さんが痛がってる姿を見て笑いが生まれます。
「ねー?言ったでしょー?」みたいな。
そんなコミュニケーション取ったことないです。プロレスラー?
加賀さんの俳句はずっと力関係の話ですよね。2者の緊張感というか。自分がこう思ったというより、状況に対する見方が強い気がします。……すいません分析しちゃって。
確かにコントを考えてる道中でエロ自由律俳句につながることが多いから、それはあるかも。
自分からは出ない句ですね。言われて初めてなるほどって思いました。僕で言ったら石頭を確認するんだったら壁にぶつかってみなよっていう発想になっちゃう。そこにある大きい野菜を割れるのかい?っていう。
白武さんは座ってて。
僕はスタジオの上のサブのモニターで見てて。
プロデューサーの考え方なんだ。
【加賀の句⑤】
終電を見送って締めたキヨスクの中
あの狭い空間で、シャッターが閉まったあとにも店員が締め作業をしてると思うと。やりたい放題じゃない?って思って。
いや、そんなことはないです(笑)。
キヨスクの建物とかシャッターって、なんかザコいというか。それもいい。
マンガみたいな揺れ方しそうだよね(笑)。
ずっと立ってなきゃいけない空間なのもいいですよね。そこで寝転んだ日には、ねぇ?
ねぇ?って(笑)。自分が入ることがない場所へのエロさというか。キヨスクには入れないしどうなっているのかわからない。宝くじ売り場とかもそうですね。
野菜ジュースを売ってるところとかも。狭いところからこっちの広いところへ来たらいいのにっていう気にもなります。ラプンツェルみたいな。
確かにちょうどラプンツェルみたい。
囚われ感ですね。
胸元から下は見えてないから、巨大なヌルヌルの触手に包まれててもわかんないですよね。
ありそうだな、「キヨスク・エロ漫画」で調べたら。