ニッポンの社長「夏の終わりに見たあの白球」|正田真弘写真室「笑いの山脈」第25回

文・撮影=正田真弘 編集=竹村真奈村上由恵


カメラの前に立ちはだかり、ネタの瞬間ものすごい存在感でエネルギーを放出するお笑い芸人。その姿はまるで気高い山のようだ。敬愛するお笑い芸人の持ちネタをワンシチュエーションで撮り下ろす、フォトグラファー正田真弘による連載「笑いの山脈」。本業はポカリスエット、カロリーメイト、どん兵衛、Netflixなど見たことある広告をいっぱい撮っている人。

ニッポンの社長「夏の終わりに見たあの白球」

子供たちもギリギリで終わった自由研究を抱え小学校へ。楽しい夏休みも終わってしまった。
騒がしく賑やかな日々の中で、何度もポケットからスマートフォンを取り出して観ていた高校野球。
小さな画面から熱い試合が観られる素晴らしさ、海でも山でも金属バットの音が響き渡った。
今年の甲子園は3年ぶりの有観客試合ということもあって、とても素晴らしい大会だった。

そして、『キングオブコント2022』(TBS)も9月1日と2日に準決勝を迎えた。
発表された決勝進出者のリストにニッポンの社長の名前を見たとき、胸が熱くなり去年の決勝で披露されたネタ『バッティングセンター』が鮮明に蘇った。
ボールがケツさんに当たるたびに家族全員が爆笑した大好きなコントだ。
セリフも表情も抑えた表現を決勝の舞台に持ってくるこの大胆不敵さが何よりカッコよかった。

そんな『バッティングセンター』を撮りたくて大阪へ。
背景にある緑色のゴムは撮影スタジオ近くのバッティングセンターが貸してくれた。
準備は整い、辻さんがバッターボックスに立ち、ケツさんがホームに片膝をつく。
あの大好きなシーンが目の前で繰り広げられる感動は、本当に言葉にならない。

撮影の翌日、ふたりのコントを観たくてよしもと漫才劇場へ。
この日も胆力を持っておもしろさを追求するふたりがステージの上にいた。
日々投げ込んで磨き上げたその白球は、大舞台での伝説の一球になるに違いない。


ニッポンの社長
辻(1986年11月15日生まれ、京都府出身)とケツ(1990年6月11日生まれ、奈良県出身)によるコンビ。吉本興業所属。大阪NSCの先輩後輩として出会い、2013年に結成。2021年には『NHK新人お笑い大賞』優勝を飾った。2022年、『第57回上方漫才大賞』新人賞受賞。奇抜な設定のコントが評価され、3年連続『キングオブコント』(TBS)決勝進出。

正田正広写真集『笑いの山脈』
正田真広写真集『笑いの山脈』

萩本欽一から空気階段まで、お笑い芸人55組が登場。
“芸”を真っ向から撮影した、“お笑いポートレイト集”『笑いの山脈』が誕生!
お笑い芸人たちの一発ギャグ、鉄板ネタ、代表コント、その最高のパフォーマンスを4×5の大判フィルムに焼きつけ、写真で切り取るからこそ迫力と活気に満ちあふれているお笑い芸人たちの“芸”を、金箔の見返し、180度開く手製本など豪華な造本に閉じ込めました。

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