『キングオブコント2020』ニッポンの社長「ケンタウロス」は日本の閉塞感を突破する大傑作だ

米光一成ジャーナル

文=米光一成 編集=アライユキコ



 「ジャルジャル」が13代目チャンピオンとなった『キングオブコント2020』(TBS/9月26日放送)。決勝1回戦で敗退しながらも強烈な印象を残した「ニッポンの社長」のコントの「リアルな叫び」にゲーム作家・米光一成は笑い、衝撃に打ち震えている。


ケンタウロスとミノタウロスの出会い

“コント日本一”を決める『キングオブコント2020』おもしろかったなー。
一番衝撃だったのは「ニッポンの社長」のコントだ。

「ニッポンの社長」は、身長の高い辻さんとコロコロっとしたケツさんの凸凹コンビ。2013年に結成。
2020年の『キングオブコント』で初の決勝進出を果たした。

「ニッポンの社長」(左:辻/右:ケツ 吉本興業)
「ニッポンの社長」(左:辻/右:ケツ 吉本興業)

ケツさんが、学生服のケンタウロスで登場し愚痴るところから始まる。あとから登場する辻さんは、ミノタウロスの姿。
上半身が人間で下半身が馬のケンタウロスと、上半身が牛で下半身が人間のミノタウロスの出会いを描いたコントだ。

何に衝撃を受けたのだろう?

「ジャルジャル」のストレートなコント。ポンポンと放たれるヤジで歌うのをやめてしまい、またやり直す。テンポのよさで何度も笑わされた。「GAG」の中島美嘉と野球選手がぶつかって入れ替わるという奇想が拡大再生産していくような展開にも魅了された。コミュニティFМを受信してしまう霊媒師とのやりとりを描いて設定のおもしろさもあるあるもパンチラインも詰め込んだ「空気階段」のコントのクオリティの高さ。結婚式の余興が過剰にズレていきどんどん盛り上がっていく「ニューヨーク」のようなスピード感のあるネタ。そういったコントとは全然違う異質な何かだった。

「ニッポンの社長」のコントは、「ここが笑うポイント」というような明確な箇所がほとんどない。
ボケてツッコむという構造がない。最初から最後までボケっ放していると言えるかもしれないが、それはもうボケじゃないじゃないか。

*ここからコントの内容を振り返りながらぼくが受けた衝撃を検証していくので、「ニッポンの社長」のこのコントを観てない人は、ぜひ観てから読んでください。

笑い泣きしてしまうのは、なぜなんだ


この記事の画像(全2枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

米光一成

Written by

米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。