とろサーモン久保田「圧倒され、吸い寄せられた翌日に」|正田真弘写真室「笑いの山脈」第24回

とろサーモン久保田「圧倒され、吸い寄せられた翌日に」正田真弘写真室「笑いの山脈」第24回

文・撮影=正田真弘 編集=竹村真奈村上由恵


カメラの前に立ちはだかり、ネタの瞬間ものすごい存在感でエネルギーを放出するお笑い芸人。その姿はまるで気高い山のようだ。敬愛するお笑い芸人の持ちネタをワンシチュエーションで撮り下ろす、フォトグラファー正田真弘による連載「笑いの山脈」。本業はポカリスエット、カロリーメイト、どん兵衛、Netflixなど見たことある広告をいっぱい撮っている人。


とろサーモン久保田「圧倒され、吸い寄せられた翌日に」

居酒屋で行われたこの撮影から、さかのぼること数日前。

キツネに扮したキャラクターが人気を博していたテレビCMの撮影に、僕はムービーカメラマンとして参加していた。
大きな撮影スタジオには4年間シリーズとしてつづいていたおなじみの部屋のセットと和気あいあいのスタッフ。
そこに、このCMに初登場となる久保田さんがスタジオ入りする。
異彩を放つとはまさにこのことか、スタジオの空気がすーっと変わるのを感じた。

CM撮影の本番、監督の「よーい、はい」で女優さんとのかけ合いが始まる。
カメラを構え、久保田さんの顔のアップを捉える。僕は大きく息を呑んだ。
コンテにある予定のセリフが終わってもしばらくつづくアドリブにハラハラと緊張が走り、カメラを通じてあふれ出る存在感に興奮を覚えた。

とろサーモン久保田「圧倒され、吸い寄せられた翌日に」正田真弘写真室「笑いの山脈」第24回

そのときの久保田さんの衣装が虎の模様だったことから、以前動物園の飼育員が「虎は大きい猫」と言っていたのを思い出した。
柵の中ではかわいく人懐っこさも見えるが、ひとたび外に出ると何をするかわからない野性味がある久保田さんはまさに虎のようだ。
後輩芸人から慕われるのもうなずける。

このCM撮影の翌日に、この『笑いの山脈』へのオファーを出した僕は、この魅力に吸い寄せられたひとりだ。

とろサーモン久保田「圧倒され、吸い寄せられた翌日に」正田真弘写真室「笑いの山脈」第24回

そして、撮れたこの写真。
間違いない、まさに虎であった。


久保田かずのぶ(とろサーモン)
1979年9月29日生まれ、宮崎県出身。吉本興業所属。高校の同級生である村田秀亮と2002年にコンビ結成。2017年『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日)で優勝。毎月第1、第3金曜『とろサーモンの冠ラジオ 枠買ってもらった。』(渋谷クロスFM)出演中。コンビのYouTube『とろサーモン公式チャンネル』、個人チャンネル『もう久保田が言うてるから仕方ないやん〆』配信中。

萩本欽一から空気階段まで、お笑い芸人55組が登場。
“芸”を真っ向から撮影した、“お笑いポートレイト集”『笑いの山脈』が誕生!
お笑い芸人たちの一発ギャグ、鉄板ネタ、〜代表コント、その最高のパフォーマンスを4×5の大判フィルムに焼きつけ、写真で切り取るからこそ迫力と活気に満ちあふれているお笑い芸人たちの“芸”を、金箔の見返し、180度開く手製本など豪華な造本に閉じ込めました。


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