“元・王子”及川光博から“現・王子”中島健人へ「こだわりは捨てていい」(てれびのスキマ)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。


『日曜日の初耳学』

林修がじっくり話を聞く企画「インタビュアー林修」に及川光博。

子供のころの話からデビュー当初の話、「王子」転職のころの心境、俳優業やライフワークと語るワンマンショーの話までたっぷり。その話の端々でキラキラしたサービス精神で沸かせつつ、随所にミッチー哲学が飛び出していた。

『相棒』のオファーは、最初は犯人役だったという驚きのエピソードも。スケジュールが合わず断ったが、その後「2代目」のオファーがあったそう。

『半沢直樹』で共演した堺雅人を「礼儀正しい仏像」と形容するのがミッチーらしい。メイク中も現場でも「目を閉じて長いセリフを小さな声で練習してる。そのときに微笑んでた」と。

俳優業では「20代のころは自分らしさにこだわってた。未熟というか。私は私らしくありたいっていう演技によけいなパワーがかかっていた」と振り返る及川。

34歳のころに出演した『白い巨塔』で「何もしない勇気」を学び、「よけいな自我はいらない」という境地に至ったという。だから、俳優は「監督やプロデューサーに対するサービス業(=愛される努力)」だと考えるように。

また、1998年、28歳のときに「職業・王子」からの「転職」を宣言。バラエティでのイロモノ的扱いに悩んだりしているなか、「ずっとやってたらもたない。役の幅も広がらないし飽きられちゃう。自分で作り出したキャラクターが自分の首を絞めることになる。本当の自分らしさって、隠していてもにじみ出てしまうもの」と考えた末の決断だったという。

そんな及川の初対面のときの印象を、ドラマで共演した松下洸平は「バラの匂いがする人っているんだ」と思ったそう。そして、すべての演技にミッチーらしさを残していると評する。それを聞いた及川は「それがにじみ出た部分」だと語る。

及川は「若者って、自分らしさにこだわり過ぎる。社会との距離感が経験や痛みで掴めてくる」と自らの経験を踏まえて語って、こうつづけた。「それは自分のハッピーの優先順位で何番目?って。よけいなこだわりは気球の砂袋みたいに一個一個捨てていってもいい」。

スタジオには「現・王子」の中島健人が。初対面のときに「やっと会えたね!」と言われ、映画で共演した際は「今キラキラしてるけど、いつか王子を辞めなくてはいけない。僕も最初、ドラマに出たときはものすごくバカにされた。でも、地味めの役をやることでそういう声は減った。だからいつか王子を辞めるのも大切かも」とアドバイスをもらったというエピソードを披露。これに、小杉「王子の一子相伝や!」。

大学卒業からデビューまでの2~3年はフリーターのような状態だったと振り返る及川。イベント制作会社で、企画など裏方の仕事をしていたという。自分で書いた台本で、着ぐるみを着て演じたことも。

松崎しげるが歌う「愛のメモリー」に合わせて花火を打ち上げるイベントで「美しい人生よ♪」の「うつ」と「く」の間の絶妙のタイミングでスイッチを押すときは震えたと。その後、「愛のメモリー」をカバーして歌ったことを思い起こすと、とても感慨深い。

こうした経験もあり、ワンマンショーでは、企画・演出までを自らで行う。名物の「遠隔ハグ」などは「お客さんが3000人だとして、1対3000の向き合い方じゃ嫌だったんですよ。1対1×3000。それをどうやって実現するか」と考えて生まれたものだという。

本当にミッチーのライブは「1対1×3000」を体現するエンタメが凝縮されたようなライブなので、ぜひ体験してほしい。

子供のころについて「おモテになったんですよね?」と林が聞くと、「えぇ、それはもう」とキラキラの笑顔で即答する及川。

それゆえ、小学6年のころに妬まれて、初めて仲間外れにされた。このときを「初めて死にたいという感情を抱きました」と振り返る。だが、ちょうど受験勉強でその思いから「逃げる」ことができた経験から「本当につらい状況なら逃げればいい」という考えに至ったそう。

林から、なぜ常にポジティブ思考なのかを聞かれ、「壁にぶつかって乗り越えるだけ」と答える及川。

だが一方で「ぶつかって乗り越えられないほど高い壁だったら逃げる。遠回りする。やっぱり近道しようとするから壁にぶつかる」のだと語る。「現状維持すら大変な人生において、現状打破に躍起になると心を痛めることがある」と。

やはりミッチーの強さのひとつは、しっかりと考え抜かれた末の理知的なポジティブ思考なのだなと思った。

【関連】ミッチーこと及川光博「飽きさせないこと、それがエンタテインメント」


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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