『半沢直樹』堺雅人らが語った演技論「芝居は労働」「自分はニセモノ」(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2020年のテレビ鑑賞記録。


『Mr.スーツマンSHOW』に堺雅人、柄本明、及川光博、香川照之が登場

『仮面ライダーゼロワン』、児嶋一哉スペシャル的な1話だった。ドラマ開始当初は小悪党みたいなキャラだったけど、いつしか主人公の背中を押すカッコいい存在に。「君が信じなくてどうする!?」。

『サンジャポ』、うまい棒の新作「のり塩味」が発売されたという話題。目の前に並べられたうまい棒をおもむろに取って無意識に袋を開け「あ、開けちゃった。食べていいよね?」とほお張る田中。その行動に驚愕しながら「本番中だよ! 食っていいって言ってないよね?」とツッコむ太田。田中「条件反射。40年間の(笑)」。

安住紳一郎によるトーク番組『Mr.スーツマンSHOW』に、『半沢直樹』から堺雅人、柄本明、及川光博、香川照之が登場。2月21日の収録ということで、最近の番組ではなかなか見られないソファに4人が隙間なく座る「密」な感じ。アメリカの番組っぽいデザインのセットに「テンション上がりますよね、だいたいミッチーは赤いカーテンが大好き」と及川。深い役者論が次々と飛び出す濃密な60分だった。中でも、「帰ろうとするのを裏で引き止めるので必死だったんです」と堺が明かした柄本明が、香川に終始イジられながらも含蓄のある言葉連発。

役作りの話題で、香川は「柄本さんと岸部一徳さんのお芝居を手本にした30代前半があって、どうしたらそうなれるのかと(考えた)。それで、とにかく『日常からの侵食である』というのが僕の結論になった、役作りではない」。

それを受け、柄本は「(役者は)書いてあることを言うんです。他人が書いた言葉ですよね。だからそれを言うとき、やっぱり言えないってことに気づく。自分の言葉じゃないから。『自然にやれ』って言われるじゃない? 不自然なことしてるのよ。不自然なことしてるのに自然にやれって言われる筋合いないよね」と笑う。

さらに香川は、ある俳優に柄本が言った言葉を紹介する。「芝居を“芸術”だと思ってるだろ? 違うよ、“労働”だ」

柄本は、芝居仲間に言われた「職業にはコンプレックスを持つべきだ」という言葉に感銘を受けたことも明かす。社会では「職業に誇りを持つべき」と言うが、そうではないのではないか。「どんな仕事にもやっぱり恥ずかしさが伴うじゃないですか。『職業に誇りを持て』と言われることが、どうもツラい感じがしてたから」。

そして柄本は「影響を受けた俳優・芸能人」という質問に「志村けん」と答える(※前述のとおり収録は亡くなる前)。そういえば柄本は『志村友達 大集合SP』に出演した際もこんなエピソードを紹介していた。あるとき記者から「この仕事をやってなかったら志村さん何をしてますか?」という質問があったそう。普通なら裏方など別の職業を答えるだろう。けれど志村の答えは「そんな根性でやってません」。これに柄本は「尋常じゃないな」と思ったという。

そんな志村けんとのコントを「怖い、怖かったですね」と振り返る。「怖くないとつまらないんじゃないかな? (出演者が)緊張と戦っている姿を我々(観客)は見るんじゃないですかね?」。

ほかにも、香川と松田優作の深い絆がわかるエピソードも、及川が美輪明宏から教えを受けた話もよかった。「舞台の上で日常生活のオーラをまとったまま出てきちゃダメ。ありのままのあなたに価値はそんなにない。想念のコントロールをなさい。感情を的確にかつテクニカルに表現しなさい。どれだけ心を込めてお芝居してもそれが観る側の人に伝わらなかったら意味がないからテクニックを磨きなさい」と言われたという及川。「寝起きで目やにがついたジャージ姿を想像させちゃいけない」と。それに「ミッチー、ジャージ着ないけどね(キラッ!)」。

最後に堺が「自分がプロの役者になっている実感がない。自分がニセモノで、なんちゃってでここにいて、(役者の)フリをしてるんだけど、すごい先輩たちに混じってそれらしくなってる」と言うと、ほかの3人も「ニセモノコンプレックス」があると口々に同意するのがとても興味深かった。柄本「ただ、生きているとどうしたって欲望だけが肥大化していくでしょ。これが困っちゃうよね。とにかくね、『しょうがないな』って思う。『しょうがない』『くだらない』っていう言葉が最上の言葉。『わからない』ってことが一番おもしろいかな」。

今日観たい番組:ウソみたいな番組「あたり前じゃねぇからな!TV」がスタート

『しゃべくり007』(日テレ)に千鳥。意外にもメインゲストとして登場するのは初とのこと。

『ストーリーズ』(NHK)は100カメ「ステイホーム」。コロナ禍の全国の家庭にカメラ100台を設置。

『有田プレビュールーム』(TBS)がスタート。ゲストはEXIT、霜降り明星、ティモンディ、藤田ニコル、ミキ。

『霜降りミキXIT』(TBS)にオアシズ。

『しくじり先生』(テレ朝)にゆにばーす・はら。

MXで『極楽山本・ロンブー亮の「あたり前じゃねぇからな!TV」』というウソみたいな番組がスタート。



  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。
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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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