満足感と幸福感あふれる大会だった『キングオブコント2020』(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2020年のテレビ鑑賞記録。


空気階段・水川かたまり「『お笑いの日』は祝日にしたほうがいいです、最高!」

『お笑いの日2020』

8時間生特番。最初は『音ネタフェス』。渡辺直美&ハライチ岩井の「醤油の魔神&塩の魔神」がまた観られてうれしい。謎の「ケチャップの魔神」も登場。Creepy Nutsとラップ好き芸人のコラボ。ほかの芸人が事前に用意したラップをテロップどおり披露しているなか、とろサーモン久保田だけは「王者が集まる笑いの日 マスクじゃ防げないオレの笑い……」などという字幕を無視し、「ここのスタッフ全員パッパラパー」「また第7世代使ってやがるよ みんな知ってるか? 第7世代の本当の意味、犯罪者軍団」とフリースタイルのラップ。さすが。

スタジオとスタジオへのダウンタウンの移動中も、坂上忍(チョコプラ松尾)、磯野カツオ(ゆりあん)、氷室京介(チョコプラ長田)、伊佐山部長(RG)などに遭遇するという展開がお祭りっぽい感じでとてもよかった。

『キングオブコント2020』

そして8時間特番の最後を飾ったのが『キングオブコント2020』。

「コントの巨星墜つ2020年」という佐藤大輔演出の煽りVTRが最高にたぎる。トップバッターは「漆黒のダークホース」を自称する滝音。大食い選手権なのに普通のラーメン屋の接客をされてしまうというネタ。「胃袋テロリズム」とか独特なフレーズが心地よい。とてもおもしろくしっかりと笑いを取る。それゆえ、おそらく審査員も想定していた基準点より高めの点数になった感じ。それが前半に点差がつきにくくなった原因のひとつかなと思う。

そのあと、GAG、ロングコートダディと、最初の種明かしがピークだったと松本が振り返るネタがつづく。僕はロングコートダディのダンボールネタがとても好きだった。1本目のネタの中では2番目に好きなネタ。もっと長いバージョンで観たいと感じるネタだった。

そして空気階段。もぐらのキャラクターを最大限に活かしたネタで、おお、これは勝ちに来てると感じた。一度目の爆発だと思ったけど、意外に点数は伸びず。この時点でトップになったけど差は十数点差。このあと、点数が伸びやすそうなコンビが残っているので、順番と点数のあやで逆転されてしまうかもと心配してしまった。

ジャルジャルは圧倒的。まさに「しつこさの向こう側」を見せてくれた。どこがおもしろいのかわからないけど、とにかくおもしろい“放課後”的なテンションを体現している感じでいて、とてもシステマティックな部分もあって、不思議なおもしろさ。文句なしにトップへ。

1本目で僕が頭ひとつ飛び抜けて大好きだったのが、ニッポンの社長の「ケンタウロス」。バカバカしくも愛らしく叙情的。正直、ジャルジャルに匹敵する高得点だと確信したけど、この時点で驚きの4位。敗退が決まる。ここまで点数差はともかく、順位自体は自分の感覚とほぼ一緒だったのでちょっと愕然とした。2本目が観たかった……。審査員でいうと例年やり玉に挙がってしまう三村だけど、点数自体はいつも極端におかしなところはあまりない。けど、コメントを振られたときにボケだけで終わってしまったりするから、「そんなスリル楽しまないでください」みたいなことになってしまう気がする。

ニューヨークは結婚式の余興のために芸を習得した男のネタ。これで2位に躍り出て、ザ・ギースが脱落。ギースの高佐は、ネタで使うためにリアルにハープを習得。それでフェイクのネタに逆転されるという悲哀。高佐「次、なんの楽器弾けばいいんですか!」。

ファイナルは空気階段、ニューヨーク、ジャルジャルに。空気階段はニッポンの社長とやや被る「恋の尊さ」を描いたネタ。かたまりの女装も尊い。このネタも大好き。ニューヨークも1本目では潜めた彼らの邪悪さをしっかり活かしたネタでおもしろい。けれど、どちらも点数で頭ひとつ抜けていたジャルジャルを追い抜くほどの大爆発とは行けなかった。結果、13年挑戦しつづけてきたジャルジャルがついに優勝。『M-1』では悔し涙を見せた福徳が今度はうれし涙を流す。なんだか収まるところに収まった「大団円」って感じでとてもよかった。満足感と幸福感あふれる大会だった。

『内村文化祭’20 配信』

有料配信にて『内村文化祭』。コントに歌にダンスにピアノ演奏にと盛りだくさん。50代半ばを超えても「青春」を走りつづける姿に感動する。NODA MAP風一人芝居とか、絶対やってほしいと思っていた『半沢直樹』パロディなど、とても楽しい。そしてまさか現在の内村が歌う「マモー・ミモー 野望のテーマ~情熱の嵐~」が聴けるとは! 最後のピアノ演奏で号泣するウド鈴木の姿に泣き笑い。

本当に「お笑いの日」を1日堪能してめちゃくちゃ楽しかった。空気階段・水川かたまり「『お笑いの日』は祝日にしたほうがいいです、最高!」。

今日観たい番組:『おしゃれイズム』1時間SPにマツコ・デラックスなど

『半沢直樹』(TBS)、最終回。

『有吉ぃぃeeeee!』(テレ東)は『FIFA20』後編。

『おしゃれイズム』(日テレ)1時間SPにマツコ・デラックス。

『おかべろ』(フジ)にバイきんぐ。

『関ジャム』(テレ朝)は松田聖子。



  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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