ひろゆきは21世紀のインターネット北方謙三!?
パンス 6月はひろゆきが話題でしたね。かつてのひろゆきの所業を知っているのか、と年長者の間では主張されているけど、なんのことはない、最近インフルエンサーとして人気だから起用しているだけなのではという津田大介の予測が妥当なのかなと思っている。
コメカ デジタル庁発足を記念した「デジタルの日」の企画立案について、政府がひろゆきから助言を受けていた、っていう話。またデジタル庁か(笑)。そして起用理由は内閣官房IT総合戦略室担当者によると、「デジタルを活用した発信に知見がある」(笑)。なんかすべてがバカバカしくなってくるけど、こういうもろもろについても国民はちゃんと考えるべきだと思うよ。こういうことが行政の一環として行われている状況に、果たして妥当性があるのか。
で、まあ確かに単に人気あるからってだけで、深い意味はないんだろうけど。裁判踏み倒してても、「デジタルを活用した発信に知見」があれば政府助言の立場に行けるんだからすごいよな~。で、そもそもひろゆき自体が今やなぜかポップ・イデオローグ化してるじゃん。YouTube動画を観てる若者にとっても、彼はスターだよな。
パンス 実は最近までスター化しているのを知らなくてびっくりした! あと「切り抜き動画」というのも知った。で、あえてかつてのひろゆきのイメージをぼやけさせながら(笑)なんとなく観てみたんだが、僕は別に惹かれないけれども、人気があるのはわかる気がしたな。
やってくるお題に対してバッサバッサと断定していくのだけど、単に強い言葉で投げかけるのとは違うのよね。自らの思想的な立場を固定しないまま断定する。これが気持ちいいのかな。というか僕は「切り抜き」しか観ていないので、原典にあたるともっといろいろ複雑なことを言ってるのかもしれないけど(笑)、でも視聴者側も「切り抜き」で消費しているわけでしょう。
コメカ お題とか悩みを斬る!みたいなキャラクターは基本的に今やりにくいからね。すぐ炎上するから(笑)。ひろゆきみたいに炎上上等みたいなキャラでしかその手の芸風を維持するのは難しいんだけど、彼はほかのその手の人たち……堀江貴文とかね……と違って、微妙に柔らかいイメージをうまく使っている感じだよね。
今のひろゆきは21世紀のインターネット北方謙三として機能しているのかもしれない(笑)。まあそういう彼の言説を切り抜き動画でもなんでも消費するのは別に自由なんだけど、90年代からゼロ年代までの歴史が忘却されていっているように見えるのはモヤモヤしますね。彼がいったいどんなことをしてきた人間なのかってことは、ほぼ不問に付されているわけでしょ。さっきのデジタル庁の案件もそれの象徴なわけだけどさ。ウルトラ近過去の歴史もすぐに忘れる国。
パンス ホントそれは思うねえ……。若い人に歴史的な記憶が継承されていない感じがする。ネットを見てると歴史の掘り起こしや再批判みたいなのは見られるけれども、ほとんどリアルタイム世代が見て盛り上がっているのではと思うこともしばしば。ってこれこそ自戒しないといけないところなのだが。
山下陽光が指摘していたけど、堀江貴文が切り抜き動画に対していつものごとくキレ芸をやったけど、ひろゆきはむしろそれを歓迎して、結果的にひろゆきのほうが有名になっているというのはいろいろと示唆的だと思った。さっきの平井卓也じゃないけど、キレとか攻撃的な振る舞いに対しては忌避感が広がってるのかもしれないな。
歴史記述を残していく必要性
パンス そんなふうに考えていくと、やっぱり過去をいかに伝えていくかが重要なのかも。自分たちもそうだけど、ゼロ年代に楽しくネットをやったりなんかしてた人たちが伝えられることはまだまだある。
コメカ 若い世代に歴史が継承されていないとしたら、それは我々みたいな上の世代に責任があると思うしね。後続の世代に対して何がしか自分たちなりの歴史記述を残していく努力は、あらゆる人がやるべきだとは思っている。TVODとしても、『ポスト・サブカル焼け跡派』はそういう作業の一環のつもりではあったわけだけど。
SNSで瞬間的にリアルタイムの話題を消費してるだけじゃ、過去から現在までの道筋は見えなくなってしまうから。「いま・ここ」でのその人間の振る舞いが優しかろうがキレ気味であろうが、そこに至るまでの歴史を知るとまた違ったものが見えてくる、みたいなことも往々にしてあるからね。というわけで、今回はこのあたりで。また次回!
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