緊急事態宣言、東京オリンピック、プラットフォーマー…“責任”はどこにある?

2021.6.16

文=TVOD 編集=森田真規


2020年1月、20年代の始まりに『ポスト・サブカル焼け跡派』という書籍を上梓した1984年生まれのふたり組のテキストユニット、TVOD。同ユニットのパンス氏とコメカ氏のふたりが、前月に話題になった出来事を振り返る時事対談連載の第7回をお届けします。

今回は、3度目の発令となった緊急事態宣言の話題に始まり、東京オリンピックをめぐるトピック、さらにYOASOBIの「夜に駆ける」MVに警告文が表示されるようになった件から考えるウェブ・プラットフォームの“責任”について考えていきます。


米騒動リバイバル

パンス TVODの時評連載、今回は5月のいろんなトピックを思い出しながら話していこうと思います〜。相変わらず年表を作っているので、それを見ながらどんどん話題を出していきますね。まずは「5/2 3度目の緊急事態宣言から1週間:東京・大阪の人出は昨年の同時期より大幅に増加」この時点ではこんな状況でした。

コメカ 政府や各地方自治体の対応も場当たり的なものがほとんどで、国民感情としても「いつまでこんな生活をつづければいいんだ」という心情が広がってるわけでね。加えて中小企業や自営業者の多くは、事実上行政から切り捨てられてしまっている。街の人出が増えたり商売が再開されたりするのも仕方のないことで、そうさせないための補償もろくにしないまま上から目線の「お願い」をしてくる政治家、何様なんだと思うね。

パンス まったくもって同感。実際最近は街を歩いてても酒場は再開しているし、時短営業もしていないところも出てきた。とあるチェーン店が交番の前で堂々と営業しているのが「すげえ」って拡散されてたな。まあ別に警察庁関係ないんだけど(笑)、ただ普通の生活を営むだけで体制に反抗しているような印象が出てしまう状況というのは確かにすごい。僕は2018年に、今年は米騒動から100年だしそういう蜂起が起こるぞと予言して、当たらなかったんだけど(笑)、今起きているのは静かな蜂起という感じがする。

コメカ 少しずつ米騒動リバイバルに近づいているのかもしれない(笑)。あと個人的に思うのは、とにかく同調圧力の発生やその浸透を避けたいということだな。行政のもろもろの不備にはきっちり怒るべきだけど、だからと言って「反抗として外出するべき、店を開けるべき」とは自分は思わない。それは個々人が判断すればよいことで、むしろ「外出しない、店を開けない」という選択肢を奪っている(=補償をしない)国や地方自治体に対して怒るべきだと思う。不安定な雇用条件で働いている労働者が、生活のために仕方なく仕事に出て感染し、働き口を失うといったケースだって生まれ得るわけだし。

個人が自分の判断で動く・生きるという余地がなくなってきていて、上からも下からも同調圧力が強くなっていく状況には危機感がある。しかし5月7日に菅首相が言明した1日100万回規模のワクチン接種体制というのも未だ実現していないし、イメージとしての「国体」維持ばかり優先するのもそろそろ限界だろうと誰もが思っているわけだけど。

パンス 市民同士で足を引っ張り合うのはやめよう! より大きく考えると「自由」自体が問われているわけだけど、去年のイタリアからのアガンベンの議論(炎上)とかは日本ではさほど言及されていないような。

國分功一郎「新型コロナウイルス感染症対策から考える行政権力の問題」ー高校生と大学生のための金曜特別講座

東京オリンピック

パンス 日本の場合国家からの抑圧が「お願い」になってしまうし、国体もイメージの押しつけばかり。そういう中途半端な状況だからかも。そんな「国体護持」の頂点たるオリンピックはやる予定で進んでいますね。「5/5 宇都宮健児、五輪中止を訴えるオンライン署名を呼びかけ」。

コメカ 6月6日づけの読売新聞報道(「東京五輪「開催」50%、「中止」48%…読売世論調査」)では、現時点での世論は開催・中止で二分される結果になっている。読売調査においては、中止を求める声は前回5月調査よりも11ポイントほど減っていると。こういう調査結果を見ていると、このままもし本当にオリンピックが強行された場合、「やる以上は盛り上げよう」「やってみたらやはりよかった」的に、とりあえず祭り=ガス抜きとして、やはりこのイベントは機能してしまうんだろうなあとは思う。

なんだろうな、ツイッターで日々いろいろなバズが起こっているのを見ていても感じるんだけど、何がしかの「祭り」の熱狂で諸々をとりあえず乗り切ろうとするムードが、上からも下からも充満してきている感じがする。「降りる」ことがこんなに難しい社会って、いったいなんなんだろうね。

パンス 必ず「やってみたらやはりよかった」的なノリになると断言する……。この機会に明記しておきます。まあ米騒動の予言は外れたんだけど(笑)。中止を求める署名呼びかけの数日後には、池江璃花子選手のツイートが話題になっていたな。

パンス これに限らず常々思うんだけど、有名人が何を言うかそんなに期待しなくていいじゃないかと言いたいよ。自分がどう考えるかというのだけが重要なんであって、有名人が言ってるからこれは良いとか悪いとか判断するというのは単に追随しているだけじゃないか。「祭り」をやるなら、広がりやすい有名な存在に託すのがよいのだろうね。しかしそれって結局、知名度のある人=権力を持っている人の意見が通りやすいシステムを強化しているだけなんじゃないかしら。

プラットフォーマーの免責


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コメカ(早春書店)とパンスによるテキストユニット。サブカルチャーや社会についての批評活動を、さまざまなメディアで展開中。2020年1月に発売したTVODとしての単著『ポスト・サブカル 焼け跡派』(百万年書房)では、70年代以降のさまざまなミュージシャンやアーティストを、「キャラクター」としての角度か..

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