3. 終わってしまう儚さ
随分と楽しんできた冒険も、このラスボスを倒すと終わってしまう。まだ終わりたくない、そんな未練がましさから手が止まってしまうのも理由のひとつです。大作であればあるほど、クリアしたあとの得も言われぬ喪失感があります。
そんな私は、旅行の初日から「ああ、この楽しさも3日後には終わっちゃうんだな」などとよけいなことを考えてしまうタイプです。ややこしそうな郵便物も「いつか開けよう」と、開封するのを先延ばしにしてしまいがちです。ラスボス、関係ないですね。
もちろん、パズルゲームやスポーツゲームなどラスボスの概念がないゲームもあまたありますが、アクションやRPGなど物語をベースにした作品の多くにはラスボスが立ちはだかります。
そんななか、そのゲームは突然、私の目の前に現れたのです。そう! 「ラスボスが存在しない」不朽の名作が!
長年ゲーム番組を担当している私は、仕事仲間から口癖のように「何かおもしろいゲームない?」と聞かれます。そのため「おすすめゲーム」を数パターン用意しているのですが、その中で過去最も“スベり知らず”だった、いわば手持ちの最強カードが『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』というゲームです。

ゲーム好きなら知らない人はいない傑作サバイバルアクションで、今年、アメリカのHBOで実写ドラマ化されることが発表になったばかり。
「パンデミックが起きたアメリカで、娘を失った主人公のジョエルが……」いや、私の陳腐ストーリー紹介など野暮も野暮。内容が気になる方は今すぐプレイしてください。
この『ラスアス』は、アクションからストーリー、キャラクター描写に至るまで、ペンタゴングラフで表すならどの項目も満点に近いほどの神ゲーなのですが、私がこのゲームで最も気に入っているのが「終わり方」です。
このゲームには、壮絶バトルを繰り広げる絶対的なラスボスが存在しません。そしてその事実を明らかにしても『ラスアス』の魅力を一切損なうことなく遊べます。道中には「ブローター」と呼ばれる突然変異種をはじめ、ボスクラスの手強い敵は登場します。けっしてぬるいゲームではありません。ですが、定番の「強過ぎるラスボス戦」とは違った最後を迎えるのです。
そんな『ラスアス』の固定概念を打ち破った終わり方に痛く感動し、数え切れないくらい繰り返しプレイしてきました。
そうです。物語に必要なければヘビーなラスボス戦がなくても問題ないのです。番組もおもしろければ、旬な番宣俳優が来なくても、シズル感がどうたらこうたらのグルメ要素を入れなくても視聴率は取れるのです。たぶん。
さて、みなさん。舌の根も乾かぬうちに、ディベート対決のベルが鳴なされたがごとく、私、今から反対意見を述べたいと思います。
「ゲームには絶対にラスボスが必要である!」
いちゲーマーとしてではなくゲーム番組を担当する構成作家としては、絶対にラスボスは必要です。

私が担当している有野課長がレトロゲームのエンディングを目指す番組『ゲームセンターCX』。目的はずばり「エンディングを見ること」。その中でラスボスは、最後の大きな山場、そして明確なゴールの象徴であり、強ければ強いほどありがたい存在です。
ジャンルにもよりますが、番組で扱うゲーム選びの中で、ADさんからのロケハン報告を受け「ラスボスがイマイチだから保留にしようか」となったタイトルも少なくありません。
欲を言えば、ラスボスの「体力ゲージ」が可視化されていたり、マリオシリーズの「3回踏んだら倒せる」という明確なルールがあると、「あと1発! さぁ、行けるか有野!」など煽りやすく、また「倒しました!!」とガッツポーズをしている有野課長の前に「第2形態の真のラスボス」なんか現れようもんなら、制作スタッフとしてはシメシメなわけです。
「熱いラスボス戦なくしてゲームセンターCXなし」と言っても過言ではないのかもしれません。
というわけで、ラスボスに関して真逆の意見を展開して参りましたが、はたと気づきました。これまで、私がラスボス手前で止めているゲームの数々は、有野課長にクリアしてもらえばいいじゃないか、と。職権乱用して「このゲームやりましょうよ」って。まぁ、そのソフトがレトロゲームとして番組に登場するのは、何年後になるかわかりませんが……。
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