球場飯でもわかる福岡ソフトバンクホークスが強い理由

2021.3.30
球場メシ

球春到来。プロ野球の季節が帰ってきた。
今年の開幕が例年以上に格別なのは、そこに「ファン」も同居しているからだ。まだまだ入場制限があるとはいえ、ファンの反応と拍手に包まれた開幕戦は、昨年の「3カ月遅れでの無観客開催」を思えば祝祭のようだった。

野球開幕と共に、SNSのタイムラインで賑わいを見せたのは「スタジアムグルメ」「球場飯」の投稿だ。誰よりも早く「スポーツ×グルメ」の極上の組み合わせを満喫している人たちがたまらなくうらやましい。そんな「スタジアムグルメ」「球場飯」をさらに味わい尽くすためのオススメ本を2冊紹介したい。

『スタグル大百科』の「A5ランク宮崎牛贅沢肉弁当」

Jリーグとプロ野球が開催される日本全国の「スタジアムグルメ」&「球場飯」に特化したグルメ本が今年2月に発売された『スタグル大百科』(サンエイムック ELGOLAZO BOOKS)だ。160点以上の球場グルメ写真を眺めているだけで幸せな気持ちになる。

『スタグル大百科』サッカー新聞 エル・ゴラッソ/三栄書房
『スタグル大百科』サッカー新聞 エル・ゴラッソ/三栄書房

球場飯はもはや日本のスポーツ文化のひとつ、と言っても間違いない。筆者も、かつて野球専門サイトで「野球とカレー」という連載コラムを担当したことがある。球場ごとにカレーの味が違うのはもちろんのこと、その球場・球団ごとの「カレー誕生物語」がどれも個性的でネタには事欠かなかった。

本書でも、球場グルメの代名詞といえる「カレー」はもちろんのこと、「映えるスタグル」「絶品スイーツ」「対決系スタグル」「ガッツリ系スタグル」「ご当地スタグル」……などなど、さまざまな切り口からスタジアムグルメ・球場飯が紹介されていて壮観だ。

球場グルメは値段が高いのにおいしくない!というのはもはや過去の話。近年はどの球場・スタジアムでも食に対する戦略が凄まじく、スポーツビジネスとしての視点で見ても大きな意義がある。

筆者は、この『スタグル大百科』に、そんな「スポーツビジネスにおける球場グルメの重要性」にまつわる記事を執筆している。取材先は、4年連続日本一の福岡ソフトバンクホークス。競技面だけでなく、グルメ領域でもそのトップランナーぶりに驚かされた。

象徴的な商品として取り上げたのはふたつ。「A5ランク宮崎牛贅沢肉弁当」と「栗原陵矢プロデュース・ケバブサンド」だ。

「A5ランク宮崎牛贅沢肉弁当」はデパ地下グルメなども出店する「惣菜・べんとうグランプリ」でスポーツ界初となる金賞を受賞。値段は2300円するが、毎試合完売する人気を誇っている。そもそも、ソフトバンクの球場弁当は今、高価格帯から順に売れているという。かつての「高いのにおいしくない球場飯」ではなく、「高いからやっぱりおいしい」というブランディングが成功している証といえる。

もちろん、1000円前後の手を出しやすいメニューでもヒット商品は多い。その代表例が「栗原陵矢プロデュース・ケバブサンド」だ。1日100個売れればヒット作、というスタジアムグルメで、最大650個も売り上げた大ヒット商品。昨シーズン途中の栗原選手の活躍を受け、急遽ケバブ専用器具を購入して発売にこぎつけた、という機動力。

取材したホークスの“球場グルメ担当者”大山隆太氏(事業運営本部リーシング室室長)は、「プロ野球は365日のうち、主催試合があるのは65日だけ。残り300日は現状、利益を生まない日ですが、裏を返せばブルーオーシャンでもあるはず」と、コロナ禍で無観客や入場制限がかかる今こそ、戦略的に球場グルメに取り組むことが新たなビジネスチャンスを生むと語っていた。

『スタグル大百科』該当ページ
『スタグル大百科』より

実際、ホークス球団では球界でいち早くUber Eatsによるテイクアウト事業を開始し、球場の隣接ビルには国内スポーツチームでは初となるフードホールを開業するなど、新たな動きを次々と仕掛けている。

むしろ、こうした取り組みを知れば知るほど、「食を通したファンサービスでもこれだけ先進的なんだから、競技面でも先進的なのは当たり前だよね」と、球場グルメからホークスの強さが垣間見えてきて興味深い。

『野球場でいただきます』が描く球場グルメと球団カラー

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