Netflixの“+1”最右翼がディズニープラスである理由とは?群雄割拠の動画配信サービスを読み解く

2021.2.23

文=池田 敏 編集=森田真規


ウォルト・ディズニー・カンパニーによる動画配信サービス「ディズニープラス」の全世界での契約件数が、2020年10-12月期末時点で9490万件に達したと発表された。

Netflixの2億件と比較すると少ないように感じるが、Netflixが1億件に達するまで約10年かかっており、サービス開始から1年あまりでこの契約数は異例のスピートといえるだろう。

ここではディズニープラス好調の要因について、海外ドラマ視聴歴40年超えの評論家・池田敏氏が分析。“Netflix+1”の“+1”を狙う、ディズニープラスの戦略とは──。


世界中の有料動画配信サービスが目指す“Netflix+1”

世界的に“ステイホーム”が呼びかけられるなかでぐんぐん需要が高まった、有料の動画配信サービス。米国のNetflixは2021年1月、全世界合計の契約数が2億件を突破し、株式時価総額は映像大国ハリウッドでトップクラスに到達。そんな状況下、“このままNetflixの独走はつづくのか?”という疑問が湧いてくるのは当然だろう。おそらく現時点でNetflix以外の世界中の有料動画配信サービスが目指しているゴールは、“Netflix+1”の“+1”である。

改めてNetflixを知ろう。一昨年に邦訳された『NETFLIX コンテンツ帝国の野望:GAFAを超える最強IT企業』を読んで筆者が驚いたのは、NetflixがまだレンタルVHSビデオ全盛だった時期、すでにレンタルDVDの将来性に着目していたこと。創業者のひとり、リード・ヘイスティングスがレンタルVHSビデオの返却に遅れ、延滞料金を40ドルも払ったのがNetflix起業における大きな“気づき”になった。

『NETFLIX コンテンツ帝国の野望:GAFAを超える最強IT企業』(ジーナ・キーティング 著/牧野洋 訳/新潮社/2019年)

そうして発進したNetflixは先駆者として有利な状況下、レンタルDVDユーザーたちの嗜好を貴重なメガデータとして蓄積し、それらをつづくステップアップに役立てていった。

驚異的スピードで契約件数を増やすディズニープラス

では、Netflixとセットで契約したくなる“+1”の座を、世界の有料動画配信サービスはどう目指すのか。現時点で最も意欲的なのはディズニープラスだ。全世界合計の契約数は約9500万に到達し、近いうちに1億を超えるだろう。まだNetflixのたった半分、という見方もあるが、Netflixが1億件に到達するまでに約10年もかかったのに対し、ディズニープラスはたった1年3カ月でこれほどの躍進を遂げた。

理由はいくつも考えられるが、まずは娯楽ブランドとしての“ディズニーらしさ”を前面に押し出しつつ、まさに“プラス”を感じさせる充実したラインナップを実現したことだろう。ディズニー自体やその子会社ピクサー・アニメーション・スタジオ、ディズニー系列となったマーベル・スタジオとルーカスフィルム、そして20世紀スタジオ(かつての20世紀フォックス)のヒット作・名作がずらりと並んだ。これらの膨大なライブラリーから有名作品を配信できるのは大きなアドバンテージだ。

『マンダロリアン』と『ワンダヴィジョン』が牽引するディズニープラス


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池田 敏

(いけだ・さとし)海外ドラマ評論家・映画ライター。映画誌『月刊スクリーン』(近代映画社)などに寄稿し、WOWOWのアカデミー賞授賞式中継などテレビ番組の監修も。著書は、海外ドラマの初心者からマニアまで楽しめる『「今」こそ見るべき海外ドラマ』(星海社新書)など。

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