ラジオ変態の女子高生、伊集院光に恋をする(奥森皐月)

2020.9.16


ラジオの帝王は、女子高生の心も掴む

奥森皐月
奥森皐月

まれに「一番好きなラジオは?」と聞かれるが、これ以上に困る質問はない。絞れないからたくさん聴いてしまうのに。しかし「一番好きなパーソナリティ」を聞かれれば明確にひとりを提示できる。

伊集院光さんである。

さまざまな番組があるが、『伊集院光 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)は最高峰の番組だと思う。ラジオの帝王は、女子高生の心も掴む。

私は伊集院さんが落語家の時代も、ニッポン放送でラジオをされていた時代も知らない。というより、生まれていない。恥ずかしながら、『馬鹿力』を聴く以前は「クイズの強い大きなおじさま」という印象しか持っていなかった。

だが、今ではまったく違う。尊敬する人も、目指す像も、好きな男性のタイプもすべて伊集院光さんだと即答する。

さまざまな“おもしろさ”がつまった『馬鹿力』

伊集院さんが好きな所以は、まず第一に知識の深さと見識の広さにある。どんなテーマであろうが、必ず関連した情報を取り出してトークにする。その速さ、的確さがとにかくかっこいい。

脳内の引き出しはどうなっているのだろうかと、いつも疑問に思う。知りたくて仕方がない。私の予想では、伊集院さんの頭の中は、おみくじ箱のような番号つきの部屋がおびただしい数に分かれた構造となっている。

知識の使い方に品があるところも好きだ。ひけらかすのではなく、あくまでツールとして活用するようなスマートさに胸がときめく。学校のテストで測る能力ではなく、人として賢い大人が一番素敵だと思っている。伊集院さんの賢明さは、まさに私の憧れそのままだ。

伊集院さんのラジオの“おもしろさ”には、いろいろな種類がある。ギャグやボケのような“笑える”おもしろさ、情報や知恵の“興味深い”おもしろさ、未知の思考や行動から感じる“奇妙な”おもしろさ。すべてが、隙間なく敷き詰められている番組は『馬鹿力』くらいではないだろうか。


伊集院さんがいなければ、今の自分もない

完璧過ぎるラジオの帝王。

それなのに、不思議と親近感も湧いてしまう。胸中のジレンマや自意識の強さも包み隠さずトークする姿に、自然と自分を重ね合わせてしまうのがリスナーの性。

本来ならば、私の父よりも年上の大御所芸能人だ。しかし、人間味のある話をされると勝手にこちらは共感してしまう。50代の男性と女子高生が同じ方向を向いて考えることもあるのだ。

『馬鹿力』を聴き始めてからは、退屈な通学も、なんでもない日も楽しめるようになった。伊集院さんの眼にはどう映るのかと、興味のなかったドラマも予習として観るようになった。私の好奇心は、伊集院光さんに刺激されつづけている。

“好き”を挙げるとキリがない。段ボールを開封した話を延々とするようなところは、好きを越して愛おしい。どのパーソナリティも言えない放送コードギリギリの単語を連呼するところもラブい。

私の伊集院光偏愛は自分でも未だに不明な点が多い。尊敬・理想・恋愛感情、すべて当てはまるような、どれも違うような。少なくとも、伊集院さんがいらっしゃらなかったら今の自分もいなかった。それだけ私にとって偉大な存在だ。いつか直接告白してみたいものである。

女子高生の絵空事でも

奥森皐月
radikoを利用して移動中にラジオを聴くことが多い

ラジオは廃れる文化なのだろうか。私はそうは思わない。いくら新しいメディアができようと、ラジオはラジオにしかない魅力であふれている。それを愛する人がいて、私のように感銘を受ける若者もたくさん存在する。

大切なことはラジオが教えてくれた。
大切ではないこともラジオは教えてくれた。

ラジオにもらった元気と希望を、私もラジオを通して伝えたい。私の抱く、大きなひとつの目標だ。一介の女子高生の絵空事と思うかもしれないが、きっと叶う、叶える。

未来のハガキ職人のラジオネームを読み上げる日を夢見て、今日も私は周波数を合わせる。

奥森皐月の「クイックジャーナル」は毎月1回の更新予定です。


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(おくもり・さつき)女優・タレント。2004年生まれ、東京都出身。3歳で芸能界入り。『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」、『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活動していた。現在は『にほんごであそぼ』(Eテレ)にレギュラー出演中。多彩な趣味の中でも特にお笑いを偏愛し、毎月150本のネタ..

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