今年8月24日、歴代最長政権となった安倍政権だが、その4日後、28日に安倍晋三首相が突然、辞意を表明。現在、“ポスト安倍”の人選に大きな注目が集まっている。しかし、今後、よりよい政治を作っていくためには、この最長政権に対するじゅうぶんな批判・検証が必要だ。
ジャーナリストの古田大輔が、安倍政権の約8年間を徹底的に分析。長期政権を可能にしたメカニズム、そして、自民党内で起こりつつある変化を指摘する。そこから見えてきた安倍政権が「まったく進められなかったこと」とは。
歴代1位、選挙に勝ちまくった安倍政権
応援している人のことであれば、なんでも褒め、嫌いな人であったら、なんでもけなす。そういう態度では、客観的に人を評価することはできません。連続在任期間が2800日を超え、歴代1位となった安倍晋三首相。約8年にわたるその政権で、何を成し遂げ、何を成し遂げなかったんでしょうか。
まず最初に在任期間が2800日間を超えたということがどれだけすごいか、21世紀の首相たちと比べてみましょう。

この画像で一目瞭然なのは、小泉純一郎首相からあとの6人の首相がいかに短命だったか、ということです。ほぼ1年ごとに政権が変わりました。そして、そのドミノ倒しのスタートとなったのが、第1次安倍政権でした。
国会で話し合う国家予算(一般会計予算)は100兆円です。100兆円のプロジェクトを仕切るリーダーが、その計画から実行までを一貫して見ることもできずに1年ごとにコロコロ変わっていて、安定した運営などできるわけがありません。
国のトップである総理大臣が変わるというのは、各省庁の大臣もそれに伴ってコロコロ変わることを意味します。先日、30代の官僚たちと話をしていたときに、その中のひとりが「自分にとって、毎年トップが変わるという異常事態が終わって、初めてじっくり仕事ができると感じたのが安倍政権でした」としみじみと語っていました。
安倍首相が長期政権を築けたのは、選挙に勝ちつづけたからです。2012年に民主党から政権を取り戻した衆院選から2019年の参院選まで国政選挙6連勝。これも、安倍首相の前に在任日数1位だった佐藤栄作首相(当時)の5連勝を超えて歴代1位です。
日本はそもそもリーダーが変わり過ぎ
こう見ると、安倍首相の強さが際立ちますが、国際的な比較をすると違う姿が見えてきます。たとえば、アメリカ。

アメリカ大統領の任期は4年。多くの大統領は2期目にも立候補し、勝てば2期8年務めることになります。8年務めたら歴代1位になる日本の総理大臣と比べ、アメリカで2期8年務めた大統領は1945年のトルーマン大統領以降だけで6人います。
つまり、日本の総理大臣はあまりにも変わり過ぎでした。国政選挙に負けたり、支持率が下がって求心力を失ったり。戦後、自民党の総裁任期が3年(2年だったことも)ということもあり、衆議院の任期4年を待たずに首相が変わることが常態化していました。
そんななかで安倍政権は選挙に勝ちつづけ、自民・公明の与党で国会の議席のほぼ3分の2を維持し、国民の意見が分かれる難しい政策をいくつも実行してきました。2度にわたる消費増税、特定秘密保護法、集団的自衛権をめぐる憲法の解釈変更、安全保障関連法、アベノミクス……。
これらについては、その政策を支持するかどうかで評価は分かれます。しかし、選挙で勝ちつづけなければ、これらの困難を成し遂げることは不可能だったのは確かです。
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