安倍首相“147連勤”発言から考える 本当の意味での「多様な働き方」(中川淳一郎)

2020.8.21

17日、安倍晋三首相が東京都内の病院で検診を受けたことに関して、首相の体調について記者に質問された麻生太郎財務大臣は、「あなたも147日間休まず働いてみたことありますか?」「140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったってわかんないわけですよ」と発言し、波紋を呼んだ。

フリーランスのプランナー/ネットニュース編集者として、14年間、年間364日働いてきたという中川淳一郎が、麻生大臣の発言と、そこに寄せられた批判から「多様な働き方」を考える。


政治家に必要なのは休まず働くことではなく、結果を出すこと

安倍晋三首相が病院で検査を受けたことについて、麻生太郎財務大臣が記者に対し「あなたも147日間休まず働いてみたことありますか? ないだろうね」「140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったってわかんないわけですよ」と8月17日に発言し、「147日」がネット上の大きなキーワードとなった。

安倍氏が小池百合子氏や吉村洋文氏といった知事と比べてあまりコロナ対策で会見をしないことから反安倍派からはもともと「仕事をしていない」的な批判がネットで出ていた。新聞の「首相動静」をコピペして指摘する人も。

首相動静(8月10日)
 午前10時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。
 午前中は来客なく、私邸で過ごす。
 午後1時59分、私邸発。
 午後2時11分、東京・六本木のホテル「グランドハイアット東京」着。
 同ホテル内の「Nagomiスパアンドフィットネス」で運動。
 午後5時38分、同ホテル発。
 午後5時57分、私邸着。
 午後10時現在、私邸。来客なし。  

時事ドットコムニュース

こうした例を出して「安倍は働いていない」ということを主張したい人に麻生氏は釘を刺したかたちになったが、正直「何日連続働いたか」なんてことはどうでもいい。首相は成果を出してくれればそれでいいのだ。ただ、私が麻生氏の会見にいたら「はーい! 私は147日以上連続で働いたことあります!」と言っただろう。

売れているフリーランスにとって「147日連続で働く」など普通のこと

またまた麻生氏がどうでもいい失言をしたかたちとなったが、売れているフリーランスにとっては「147日連続で働く」なんて普通のことである。私はこの14年間「364日連続で働き1日休み、また364日働く」をつづけてきた。「うるう年」の場合は「365日連続」となる。

労働問題に取り組むNPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典氏は『Yahoo!ニュース個人』で「麻生太郎副総理『あなたも147日間休まず働いてみたことあります?』 副総理、それ違法性が高いです」という記事を執筆。

〈この質問自体が愚問である。そもそも会社と雇用契約がある記者たちは140日以上も連続で働いてはいけない〉

〈麻生太郎副総理の論理が支離滅裂だとお分かりいただけるのではないだろうか。いうまでもなく、労働者は所定の休暇だけでなく、有給休暇などきちんと取得し、心身をメンテナンスする必要がある。だから労働基準法など各種労働法は労働者に大きな負荷をかけないように、最低限のルールを規定している〉

『麻生太郎副総理「あなたも147日間休まず働いてみたことあります?」 副総理、それ違法性が高いです』

このように主張したが、麻生氏の会見にフリーランスの記者がいた場合は「147日って私も経験したことあるけど……」と思ったのではないだろうか。今回藤田氏が指摘したことは雇用契約がある場合は真っ当な指摘だが、正直フリーの身からすると「うるせぇよお前」としか思えない。

さらに言うと「全員が雇用契約をもって働いていると思うんじゃねーぞ。こちとら雇用契約がないからカネをたくさん稼げるんだ。いちいち営業妨害するんじゃねぇ。お前の発言がきっかけで『フリーにも休日義務を』といった法律ができたらうぜーんだよ」とも思う。

リベラル派は「多様な生き方」を主張するが、彼らは法律を金科玉条のごとく扱いそれを盾にブラック企業をさんざん批判してきた。昨今「ブラック」という言い方自体がポリコレ的に問題視されてきたが、これまでさんざん「ブラック企業」と言いつづけてきた彼らがどう言い換えるかには注目している。

自らツッコミどころを作った麻生財務大臣


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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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