#8103とワンストップ支援センターを知っておこう
そして。このような密室での知り合いからの被害の場合は特に、被害の立証に難しさがあります。
よく「女がレイプされたと訴えれば問答無用で有罪になる」なんて言われたりしますが、日本は「法治国家」ですので、ンなわけない。強制性交等罪、強制わいせつ罪の構成要件には「暴行・脅迫」があるため、警察や検察は被害者にどのような状況があって抵抗ができなかったのか詳細に聞きます。
加害者が否認した場合(同意があったなどと主張した場合)、裁判でもめちゃくちゃ聞かれます。
「確かに抵抗できない状況だった」「加害者は被害者が抵抗できないことに乗じてレイプした」と客観的に認めてもらうことが必要です。
『連ちゃんパパ』で描かれた強姦シーンの場合であれば、もし裁判になったら「声を上げて被告人の子どもを起こせば被告人の行為を止められたはずのところ、そうしなかったのはなぜか」といった内容を絵里が聞かれるのではないかと心配です。
浩司の証言があればいいのですが、浩司寝てましたし。親から実子への性虐待裁判で「隣に寝ていた家族が一度も気づかなかったのは不自然」という理由で無罪になったケースもあります(※4)。
ちなみに、もし性被害に遭った場合はどうしたらよいのか。
警察庁では「#8103」という、性犯罪被害の専門ダイヤルを設けています(全国共通)。警察にひとりで行くのは不安があるという人は、すべての都道府県に設置されている性被害者のためのワンストップ支援センターで同行支援を得られる場合があります。いずれにしても、警察への相談は早いほうがよいことは間違いありません。
また、警察に行く気になれないという場合でも、緊急避妊や感染症検査が必要なので医療機関は必ず受診してください。ただ、すべての医療機関が性被害者の対応に長けているわけではないので、これもワンストップ支援センターや、各地の犯罪被害者支援センターで相談するのがよいかと思います。
(※4)たとえば、2019年3月28日静岡地裁判決。実子への強姦と児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた男に対し、強姦については無罪。控訴審で検察は新たな証拠を提出している。
もし絵里が現実の性被害に遭っていたら……
嫌な話ばかり書いてしまいましたが、私は『連ちゃんパパ』の強姦シーンについての感想をツイッター上で検索していて、これを「強姦」であると認識している人が多くてちょっとホッとしました。強姦シーンに「興奮する」という人も中にはいましたが、ほとんどが進のやったことを許さないという反応だったことにもホッとしました。
性暴力の記事を書いていると、「同意がない性交がレイプ? これからはいちいち性交承諾書を交わすことが必要ですね笑」などというコメントを寄せられることがしょっちゅうだからです。しょっちゅうっていうかデフォ。
もしも絵里の被害が報じられたとしたら、ネット上ですぐにセカンドレイプが始まることは容易に想像がつきます。
<例 ※想像です>
(ヤフコメ)
「大人の女性として男を泊めたのは無用心でしたね」
「まあ男が悪いけど、この女の人も男の性欲を甘く考え過ぎ」
(5ちゃんねる)
「正義の女教師さんレイプされるwww」
「これ最初に女が子どもを拉致したのが悪いだろ」
(ツイッター)
「冤罪」
セカンドレイプの弊害はすでに書きました。
フィクションの世界では被害者はセカンドレイプから守られます。そもそも非実在だし。そして現実の性被害者に対して冷たい社会でも、フィクションの中の被害者には想像力を持てる……こともある。
フィクションに描かれる性暴力や被害者の描写について「リアルじゃないな」と思うこともときどきあるのですが、普段は性暴力について考えたことがあまりない人が被害者に対して想像力を持てるとしたら、フィクションの力とは、こういうところにあるのかなと感じています。
編集部追記(2020年9月19日):株式会社KADOKAWAが『連ちゃんパパ』を単行本として1巻・2巻を発売した。3巻と4巻も10月12日発売を予定している。
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