人生を終える瞬間にあってほしい曲

──以前のインタビューで「THANKS, ALL MY TEARS」は「HAPPY TEARS」に直結している、とお話しされていましたが、『No Pressure』の曲順にはどのような意図があるのでしょうか？

Novel Core　『A GREAT FOOL』からの感情の変化を見せつつ、「THANKS, ALL MY TEARS」から「HAPPY TEARS」へ辿り着くまでの気持ちの流れを描きました。つらいことがあっても踏ん張っていく強さを歌った「THANKS, ALL MY TEARS」と、今までの不正解も今後次第では正解に変えていけるかもしれないというポジティブを歌った「HAPPY TEARS」は明確にリンクしているんです。でも、一瞬にして気持ちが変わったわけではないので、「HAPPY TEARS」に辿り着くまでの過程を詰め込む必要があった。だから、冒頭に「TROUBLE」や「JUST NOISE」が入ってきていて、「HAPPY TEARS」の前が「No Pressure」になっているんです。

──『A GREAT FOOL』では、8曲目の「2021（Skit）」に大きな役割がありましたが、今作の「Skit」が入っている位置にも何か意味があるのでしょうか？

Novel Core　実は、今作もちょっと近い部分があります。前作で「PERIOD.」の前に「2021（Skit）」を入れたのは、「PERIOD.」で『A GREAT FOOL』は完結していて、アルバムの最後に来る「THANKS, ALL MY TEARS」から次のフェーズの1曲目になると示したかったから。

今作のラストソングである「Untitled」は、「もし明日人生が終わるとしても、僕は音楽を作るだろう」という自分にとって普遍的なテーマを歌っているので、時系列的には『No Pressure』のもっと先にあるイメージなんですよ。なんだったら僕が音楽の道から退くときや、人生を終える瞬間にあの曲はあってほしい。なので「Skit」にはカセットの再生音を入れて、未来の自分が『No Pressure』を聴き返して、「HAPPY TEARS」まで再生終了したイメージにしました。想像によっては、「HAPPY TEARS」の世界線にいる僕が「Untitled」を聴いている、ということでもいいですね。そういう余白を作りたくて、8曲目に「Skit」を入れています。

──全体的にとてもきれいな流れですね。

Novel Core　自分でもこんなにきれいにいくとは、思ってなかったです（笑）。流れを気にせず1曲1曲に向き合うかたちで制作していったので、直前までどうハマるかはわからなかったんですけど、いざ全曲仕上がったら自然とあの並びになったので。その瞬間の感情と向き合って作詞したのが、よい方向に活きました。

──アルバムができ上がった、今のお気持ちを聞かせていただけますか。

Novel Core　自分の内側から自然と出てきたものがすごくよくて自信につながりましたし、もっとやってみたいことも広がった制作期間でした。『No Pressure』を作り終えてひとつフェーズを抜けた感覚もあるので、次回作以降はさらにすごいことになりそう。このアルバムは、未来への切符になった感じがしています。

──ちなみに「もっとやってみたいこと」とは、どのようなことですか？

Novel Core　バンドメンバーがジョインしたので、作曲のレンジをもう少し広げてみたいと思っています。今は投げたリファレンスをもとにプロデューサーさん主導で動いてもらって骨組みを作ることが多いんですけど、合宿とかをして、もっと感覚的に0から1を作っていくこともやってみたい。

ライブだったら、コンセプトだけで走るものもやってみたいですね。今までは「アーティスト“Novel Core”とは何者か」ということを、過去の経験や味わってきたネガティブも含めて説明していく段階だったのでストーリーテリングなライブが多かったんですけど、最近のライブではMCパートも減ってきてますし、音楽的にもっとレンジの広いライブをやっていきたいです。

Novel Core
（ノベルコア）2001年生まれ、東京都出身。ラッパー、シンガーソングライター。『BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権』にて歴代最年少で優勝し、本格的にアーティスト活動を開始。2020年、SKY-HI主宰のマネジメント／レーベル「BMSG」に第1弾アーティストとして所属することに。2021年12月にリリースしたメジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』は、各チャートで日本1位を獲得した。トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集める新鋭アーティスト。