音声コンテンツの収益化はどうなっていく?石井玄×小御門優一郎 対談【後編】

2022.8.3

音声コンテンツ収益化の未来

──常々疑問だったのですが、ラジオリスナーとポッドキャストリスナーって、意外と被っていない層がいますよね。あれはどういう現象なんでしょう?

石井 両方聴いている人もいると思いますけど、ポッドキャストから入ってくる人が増えてきてますよね。ラジオまで辿り着いていない人もいる。むしろポッドキャストとして『オールナイトニッポン』を聴いている人もけっこういるみたいですよ。全然違う文化として捉えられ出したのが最近だと思います。

──もともと有名な方だけではなく、最近はポッドキャストをきっかけに有名になる人や番組も増えてきていますよね。そういった状況をどう見ていますか?

石井玄

石井 素晴らしいし、おもしろいことだと思いますよ。そこを目指してニッポン放送も「JAPAN PODCAST AWARDS(ジャパンポッドキャストアワード)」もやっているわけですから。僕もポッドキャストがおもしろいと思うから作りたい気持ちがあって。生じゃないからこそのおもしろさを追求する文化があると思ってます。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』とか『奇奇怪怪明解事典』とか、ほかの番組もですけど、尺に捉われないから内容が盛りだくさんなら長尺にできるし、別にそれがつまらなかったら聞き手も途中で切り上げられる。そういう部分が、ラジオとポッドキャストで大きく違ってきたなという感覚がありますね。

小御門 なるほどなあ。

石井 話す内容が一般化しないんだよね。狭く狭く作っていけるようになったから、数千人でもいたらそこに向かって話せる。その内容が、好きな人はすっごく好きなものだったりする。ラジオはどうしても通りすがりに聴くことを多少なりとも考えるから、一般性を持たせるところがあって。

──ラジオとポッドキャストというふたつを挙げましたが、音声配信アプリなど、いろいろあるじゃないですか。盛り上がりを見せているような気がしますけども、どうなっていくのでしょう。

石井玄、小御門優一郎

石井 こんなことを僕が言うのもなんですけど、もうピークは過ぎていて。(プラットフォームとして)増えつづける時期はもうほとんど終わったと思います。ポッドキャストを始める人とかはいても、プラットフォームは淘汰されていく。聴く人を増やしていく体力がないところは、終わってしまうでしょうね。

だから、業界全体としてここがピークとならないためにどうしたらいいのかって話なんですけど、投資して作る時期はもう終わって、いかにお金を稼いでいくか。ここからフェーズが変わる。2年、3年とか先の話ですけど、(お金を稼げる)強いコンテンツが生き残っていくんだろうなと思います。

もしかするとYouTubeみたいにもっと一般の方がガンガンしゃべるようになる可能性もまだありますけど、そこは僕が見ている限りはなかなかそんなに広がっていない気はしていますね。

──石井さんが考える「強いコンテンツ」ってなんですか?

石井 やっぱりファンがいるコンテンツですよね。『奇奇怪怪明解事典』がいい例で、本を出したらそこそこ売れている。ラジオ番組にも呼ばれていますし。『コテンラジオ』がポッドキャストをきっかけに(話し手として)有名になったようなケースは理想的ですよね。

もともと人気がある人がしゃべって人気番組になるのは普通なので、そうじゃないものが生まれてきていることが大きい。文化として根づいてきた気がしますけど、ファンがいる番組はそのうち大きいイベントとかやるんじゃないですか? 我々もやりますか。

小御門優一郎

小御門 お、『滔々あの夜咄』ファンイベントですか。

石井 イマジンスタジオから100人くらいで始めようか。人気ポッドキャスト番組は、本気でイベントをやれば1000人、2000人くらい集められると思いますし、ポッドキャストの場合は熱狂的なファンが割合として多いと思うんですよね。ほかのメディアよりも。

まだYouTubeにおけるHIKAKINさんみたいなスターは生まれていませんけど、もうちょっとお金を稼げる仕組みが出てきたら、生まれるとは思いますね。

──収益化の仕組みにもいろいろありますが、理想的な形はどんなものなのでしょう。

石井玄

石井 結局は一緒なんですよね、何かを与えてお金をもらうっていうのは。グッズとか、イベント参加とか。あとはより深い話が聴けるようなファンクラブ的なことも。

チャットで乱暴にお金をもらうようなことは、音声コンテンツでは向かないような気がします。あれはしゃべりというよりも、しゃべっている人にお金を渡すような感じなので。内容としておもしろいということに対してお金を払うケースばかりじゃない。ひろゆきさんとかは質問をするためにお金を払う仕組みになっているので、ちょっと違いますけど。

あとは、広告を貼りつけてもいいんですけど、なにせ音声コンテンツは広告がほかのメディアに比べると全然売れないし、注目しているスポンサーもすごく少ないので、なかなかラジオ含め未来がない道筋ではあるかなと思いますね。

個人でも企業でもいいので、お金によって応援してもらう仕組みをどう作るかが重要ですけど、難しいところでもあります。儲けなきゃいけないですけど、儲けることが目的になってはいけないので。

なので、おもしろいから、好きだから、という理由で、お金を生み出すことを考えている最中です。なんとかこの『滔々あの夜咄』を盛り上げて、ポッドキャスト、ラジオ含めた音声コンテンツ全体を盛り上げていきたいですね。そのためにも、小御門くんがおもしろい話をしないとダメです。

小御門 僕にやれることであれば、なんでもやります。

石井 いろいろやってもらいましょう(笑)。

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  • 滔々あの夜咄

    滔々あの夜咄

    石井玄と小御門優一郎のふたりが日々の出来事や最近気になるコンテンツ、脚本家である小御門が思わず嫉妬してしまった作品などについて、なぜ面白いかなどを滔々と語るポッドキャスト番組。

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