深夜のコント番組『はねるのトびら』(フジテレビ)での無双、『キングオブコント2011』完全優勝、体モノマネ、100人に迫るクリエイターを紹介してきた『クリエイターズ・ファイル』……。1998年に芸人として活動をスタートして以来、独創的なネタやキャラクターでさまざまな笑いを生み出してきたロバート秋山竜次。
常に“新しい笑い”を生み出しつづける彼の源流はどこにあるのか。一方、秋山自身が「今のかたちが一番いい」と語る“変わらない”ロバートは秋山にとってどんな場所なのか──。
秋山竜次
(あきやま・りゅうじ)、1978年8月15日、福岡県出身。1998年に幼なじみの馬場裕之とNSCの同期である山本博とお笑いトリオ、ロバートを結成し、『キングオブコント2011』で優勝。個人としては自身がさまざまな職種で活躍する人物に扮する『クリエイターズ・ファイル』などを発表している。
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増えつづける携帯のメモは財産

──若手のころから多くのキャラクターを生み出している秋山さんですが、その源流は、やはり学生時代になるのでしょうか。
秋山竜次(以下、秋山) 人間観察をしようと思っていたわけではないですけど、人を見るのは好きでしたね。友達の家に行ったら、親を見たり、家庭で使っている時計を見たり、風呂を見たり、“引き”で物事を見るタイプでした。ほかにも、校舎の前に停めてある先生の自家用車をこっそりのぞいて、「あの先生、こういう座布団しくんだ~」とか、「ダッシュボードのところにクーポン券挟んでんじゃん!」とか、そんなのをよく見ていましたね。
──『史上空前!!笑いの祭典ザ・ドリームマッチ2020』(TBS)でコンビを組んだ千鳥ノブさんが、あまりにもネタ案を持ってくる秋山さんを「異常者」だとおっしゃっていました。そうした観察の数々が多くのネタに昇華されていくんですね。
秋山 アイデアは、ずーっと増えていて、なくならないですかね。常に“これ使えそうだな”と思っているというか……。たとえば、正月休みをいただいても、別に考えなくていいのに、ネタのことを考えちゃう。結局、変なことを考えてニタニタしながら携帯にメモするのが好きなんでしょうね。
──秋山さんのスマホには、ネタ案がたくさん入っているんですね。
秋山 発注が来たときに、そのストックから「どのカード出すか?」とか、「千鳥がいるならツッコミ入るし、盛り上がりそうだな」とか、そんなことをよく考えるので、メモはめちゃくちゃ大事な財産ですね。頼むから消えないでほしいです。
王者になって得た自由

──ロバートさんの活動でいうと『キングオブコント2011』優勝は、大きな節目になったかと思います。
秋山 まず「コントがおもしろい人たち」というハンコを押されたのがデカいし、ひとつの自信になりましたね。
──やはり、『キングオブコント』で披露した『忍者』のネタや自動車整備工場を舞台にしたネタは“勝つこと”にこだわられたんですか?
秋山 そうですね。(当時のシステムで)芸人が採点することはわかっていたので、芸人が見ていないネタがいいと思ったし、とにかく笑いの数やなと思っていました。たとえば、『忍者』のネタは、トリオ組みたてのころにあった設定だったんですよ。それがネタに昇華できないままずっとあって。
──芸歴55年で1800万ステージをこなした忍者役者の取材に、山本(博)さん扮する編集部員が向かうというネタでした。
秋山 当時、『ロバート企画』という企画ライブで、“人の慣れた動き”をやっていて。地元のお祭りに行くと、盆踊りをやり過ぎているおばちゃんがほぼ流して踊っているとか、クラブで踊っているヤツがとにかく慣れ過ぎていて「ほぼ静止してるだろ!」みたいな。そういったことをやっていくなかで、「忍者の手裏剣をやり慣れているヤツおもしろいな」という話になって。昔からあった忍者の設定にその案がバカっとハマった感じです。舞台では、極力少ない数で試して、本番に持っていきました。ルミネtheよしもとでも2回かけたくらいです。
──ほかの芸人さんに、あえて見せなかったと。
秋山 芸人審査になると、見せないほうがインパクトあるなと思って。それでも、ガリットチュウの熊谷(茶)さんが、すぐに「ロバートがヤバいコント作ってきましたー!」と言いふらしていましたね。注意したら「あれは言わなきゃいけないでしょ。秋山く〜ん!」って(笑)。
優勝したあとは、バキバキに仕上げなくてよくなったから、やりたいことをやろうと思うようになりました。そこからコントが広がった気がします。
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ぶれなさ過ぎる3人

──ロバートさんのコントにも紆余曲折があったんですか?
秋山 かたちになるまでいろいろあったので、若手のころは悩みました。養成所時代は講師に「もっと展開をつけなさい」とか言われたんですけど、できないものはできないので、得意な“変な遊び”をネタにしようと切り替えましたね。
──大会にも優勝し、経験も積み重ねるなかで、“今のパターンがいいだろう”と辿り着いたんですね。
秋山 そうなりましたね。いろんなことやりましたけど、今のかたちが一番いいし、僕らのネタにハマるんですよね。構成とかではなく、とにかくやりたいものを詰め込んで、尺ギリギリまでボケつづけて、残り1秒を切ったときに(山本が)「ムリー!」と言えば終わるんで(笑)。
──コントを作る際、山本さんならこれができる、馬場さんならこれができる、といった配役も考えているんですか?
秋山 博は何をやろうが“山本博”。全ネタ「山本」という名前だし、馬場はひとつのボケにプラスされた“さらに変なヤツ”。「こんなことやるヤツいないでしょ……いたー!」の役ですね。
──(笑)。そんな山本さんは、ボクシングやゲーム、馬場さんは料理と、それぞれ好きなことを仕事にされているイメージです。おふたりの印象を聞かせてください。
秋山 博も昔は「ツッコミのレパートリーが……」と悩んでいたと思うんですけど、最近は「なにー?」にかけるようになってきましたね。あと、表情で乗り越えてくるんでマジで笑っちゃうんですよ。ネタ中に相方を見て笑うことってめったにないんですけど、『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ)でネタをやったときに、マジですごい目をしていて、放送中に耐えられなくて吹いちゃいました。
──馬場さんはいかがでしょう?
秋山 馬場は突き詰めていますよね。今は料理のほうに力を注いでいて、各地方で料理番組をやっているし、商品プロデュースもしているし、本格的な料理人になっちゃっているというか(笑)。しゃべるトーンも料理人になってきているので、タレント名鑑も文化人枠にしたほうがしっくりくるんじゃないかと思っています。ただ、あいつは幼なじみで、何がおもしろいのかのバロメーターにはなっていますね。子供のときの秋山を馬場が見て笑っている感じは変わらないので、そこはネタを作る上で大事なところです。
──お話を聞くと、秋山さん含め3人共ブレていないですよね。
秋山 そうですね……。ブレていないんですけど、ブレなさ過ぎていますよね。
──(笑)。
秋山 博はボクシングでプロになっているし、『ポケットモンスター』でも弟子がいるし。馬場は、放送中のドラマ『晩酌の流儀』(テレビ東京)では料理監修としても入っているんですよ。お笑い芸人が監修って、そんなことあります!? ビックリしましたけど、でもそんな芸人いないんで、いけるところまで突き詰めてほしいですね。
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