ハリウッドザコシショウ、読者の人生相談に真剣回答。「お笑いも人生も、悩みの根本は一緒」

2022.7.30

文・編集=菅原史稀 撮影=二瓶 彩

 


「ハンマーカンマー」「誇張ものまね」などで、破天荒な芸風イメージの強いピン芸人・ハリウッドザコシショウ

しかし『R-1ぐらんぷり2016』で優勝後、リニューアルした『R-1グランプリ』にて2年連続で審査員を務めた際には、その優れた審美眼と的確なコメントでお茶の間を驚かせ、大きな反響を呼んだ。また昨年放送の『アメトーーク!』「SMA芸人」特集では、AMEMIYA、錦鯉・渡辺隆、アキラ100%、バイきんぐ・西村瑞樹らの相談に乗るなど、人望の厚さが伝わるエピソードも証言されていた。

そこで今回は、QJWeb読者から募集した人生相談にハリウッドザコシショウが回答。果たして、どんな至言が飛び出すのだろうか。


これだけキャリア積んでたら、できるアドバイスはある

ハリウッドザコシショウ(はりうっどざこししょう)1974年2月13日、静岡県出身。1992年に大阪NSC11期生として入学、現在はソニー・ミュージックアーティスツ所属。『R-1ぐらんぷり2016』で42歳史上最年長王者

──『アメトーーク!』を観た視聴者からは、「ザコシさんって、人望の厚い親分肌なんだ」という声も上がっていました。

ザコシ 親分肌っていう感じでもないです。これだけキャリア積んでたら、できるアドバイスがあるっていうだけです。僕は「SMA芸人」にも出てた、だーりんずの松本りんすみたいに、売れてねえのに後輩を飲みに誘って大説教して大割り勘みたいなの、絶対しないですから(笑)。あいつはね、僕にも説教してくるくらいですよ。僕の単独ライブが終わって打ち上げに来たりんすが、酒がぶがぶ飲んだあとにニヤニヤしながら「おい、おい、来い! 俺に呼ばれてうれしそうやな!」って言ったんです。地獄ですよ(笑)。

そこへいくと錦鯉の渡辺なんかは、売れてないときから後輩には絶対に奢っていましたから。で、あいつはダメなやつに対しても「お前はおもしろいんだから、がんばれ」って言うんです。だからめちゃくちゃ慕われてる。やっぱり人望っていうのは、そういうところで如実に差が出るんじゃないですか。

──ザコシさんも、人に悩みを相談していたことがあったんですか?

ザコシ そりゃありますよ。なだぎ武さんとか、木村さん(バッファロー吾郎A)とか、(リットン調査団の)水野(透)さんとか、そういう先輩には飲みに連れて行ってもらいましたね。水野さんは極端な人だから、お手本になるかどうかは置いておいて(笑)なだぎさんとか木村さんとか、あと(千原)ジュニアさんからは、あるべき先輩像みたいな姿を教えてもらって。

──なるほど。今回はQJWeb読者の皆さんからザコシさんに相談したいお悩みを募集したので、“人生の先輩”としてお答えいただければと思うのですが。

ザコシ ああ、いいですよ。

人付き合いに疲れにくくなる方法

──よろしくお願いします。ではさっそく、ひとつ目のお悩みから。

人付き合いが昔から苦手です。ザコシさんは芸人や共演者、知人との距離感はどうやって保っていますか? また、人付き合いに疲れにくくなる方法などあれば教えていただきたいです。

ザコシ なるほどねえ。僕も「ちょっとコイツ無理だなあ」「絡みたくないなあ」っていう人、多々いますよ。でね、それはもう絡まなくていいんです。どうしても絡まなくちゃいけない人間に対しても、最小限の接触になるように努力する。無理してたら、自分が嫌になるじゃないですか。

僕はね、こういうめちゃくちゃな芸風で売れたでしょ。だからよく「適当にやって売れた」って言われるんですよ。でもめちゃくちゃな自分で売れるようになるために、いっぱい計算して努力してきましたから。それと同じで、無理しないそのままの自分でいられるような人間関係を築くためには、ある程度距離感を計算しながらやっていったほうがいいと思いますよ。誰とでも仲よくなるのなんか無理ですからね。

あと僕は、人間関係に正解ってのもないと思うんです。この前ね、収録でロケバスに乗っていたら、スタッフ同士がしゃべっているのが聞こえて。「あの人ねえ、コミュニケーションがあんまりうまくいかないんだよね。でも企画力がすごいから、一緒に仕事してるの」って言ってたんです。そういうふうに、たとえ普段の会話がうまくいかなくてもほかのところで魅力が伝われば、うまくやっていくこともできるんですよ。そうやって考えていったら、もっと楽なんじゃないですか。

特に仕事なんて、まわりはロクじゃないやつのほうが多いですから。本当、僕も「何言うてんねんこいつ」って思うこと、むっちゃありますから。それはしょうがないです。

ハリウッドザコシショウ

パートナーがいない=未熟は本当?

──人間関係に正解はない、金言ですね。それではつづいて、恋愛相談です。

好きな人ができません、ずっと一緒にいたいと思う相手がいません。 

恋人や結婚相手は無理に作らなくていいという時代にはなってきましたが、まわりの友人たちを見るとお互いを愛し合い、話し合い、尊重しながら生きていくその姿にうらやましいと思います。そして未だその経験がない自分は、人として未熟だと感じてしまいます。やはり一度はパートナーというものを作ったほうが人として成長できるでしょうか。

ザコシ いやいや、未熟じゃないよ。パートナーなんか、無理して作らんでいいしね。どうせ恋愛の話してくるやつなんか、いいことしか言ってこないんだから。そら聞いてたら、うらやましくなりますよ。

まず自分のやりたいことやったらどうですか。好きなことをやる生き方してたら、そこに合う人って出会えますから。無理して恋愛しようとしても、絶対に違和感が生まれる。自分の人生の登場人物として現れるくらいのパートナーが、自然に付き合っていけるんです。

あとね、全然出会えなくても、恋愛しなくても、俺はいいと思うんです。友達なりなんなり、自分が好きなことを分かち合えるような話し相手がいればいいでしょ。無理してもロクなことないってのは、僕の経験談です。僕もモテなかったんでね、無理してSNSで出会おうとしたこともありました。「芸人やってまっせ」みたいなダイレクトメッセージを送ったりして。そんなんで来るやつは本当、みんな地獄でした(笑)。だからいいんですよ、急がんで。

経験人数ひとり。「それでいいのか?」

──自然にいきましょうということですね。ほかには、こんなお悩みが。

旦那さん以外の人と夜の営みをしたことがないまま死にそうです。それでいいのか?と考えてしまいます。旦那さんは、以前にお付き合いしていた方がいるので、なんとなく「ずるい!」と思っています。

ザコシ ヤバいじゃないですか。そういう「不倫不倫の大不倫」に、僕は「ええやんええやん」とは言えないです。そういう発言がいまは叩かれる時代ですから。

いやええやん、旦那のことが好きなら旦那だけで。何をお前、他人の「珍棒」をいいと思っとんねんって話です。他人の「珍棒」をいいと思い始めたらあかんで。あかん!

大友康平みたいに「愛がすべてさ」とは思わないからね、別に。恋愛とか「珍棒」以外にも、いろんないいものほかにいっぱいあるよ、この世の中。だからこの人に言いますわ、「目を覚ましてください!」って。小川直也みたいに(笑)。

芸人に対する憧れの気持ちを消したい

──気合い入れ、ありがとうございます(笑)! それでは、最後のお悩みです。

私は小学生のころからお笑いが大好きで、芸人に憧れていました。ですが、ひとりでお笑いをする勇気もなく、一緒にしてくれそうな友達もいませんでした。それから25歳になった今でも、芸人に憧れています。

9月からは新しい仕事も決まって、いい加減諦めたほうがいいとは思っているのですが、ずっと頭の片隅に憧れが残って消えません。どうやったら芸人になりたい気持ちを消せますか?

ザコシ これはもう、一回(お笑いを)やるしかないね。やってみて自分の無力さを感じて、打ちひしがれないと、こういう欲求っていうもんは一生消えないですし、老人になってもずっとつきまとうと思いますよ。

『R-1』に出たらいいじゃないですか、あれはアマチュアも出れるから。そしたら「芸人さんってこんな凄いことをやってるんだ。自分には到底無理だ」って思うかもしれないし、もしかしたら「いける!」ってなるかも。もしそうだったらお笑いの門を叩けばいい話だし、どっちにしたっていいでしょう。

25歳でしょ? まずはなんかやってみればええやん、って思いますけどね。

ピン芸人のゴールは『R-1』優勝ではない


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菅原史稀

(すがわら・しき)編集者、ライター。1990年生まれ。WEBメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーシーンの分析を主な分野とする。

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