「水着グラビアで自己肯定感が上がった」根本凪が語るアイドルと水着の距離感

文・編集=森 ユースケ 撮影=飯田エリカ


見る人の数だけ存在する「アイドル」のイメージに翻弄され、時にエイジズム、ルッキズムの呪縛にかかりながらも、その言葉の枠に留まらない女性たちの心の内を聞く連載「アイドルとシスターフッド」

今回のテーマは「アイドルと水着グラビア」。登場するのはでんぱ組.incと虹のコンキスタドールを兼任し、2022年4月末でアイドルを卒業する根本凪と、プロデューサーであるもふくちゃん(福嶋麻衣子)。雑誌や写真集など、水着グラビアの分野でも活躍する根本さんは、ひきこもりを経てアイドルになった当初、「グラビアの仕事で自己肯定感が上がった」と明かす。

インタビュー前編では、グラビアの仕事を始めたことによる心境の変化や、グラビアの仕事に対する誹謗中傷、それらとどう向き合っているのかなどについて語ってもらった。

※取材は2021年秋の活動休止発表前に行いました


グラビアをやってよかったと思うこと

──写真集や雑誌など水着グラビアの分野でも活躍する根本さんですが、別の取材で「アイドルになった当初、グラビアの仕事をしたことで自己肯定感が上がった」という話を聞いて、もう少し深く聞いてみたいと思っていました。

根本 もともと中学時代にひきこもりだったので、自己肯定感も低かったんです。アイドルになったのも何かの間違いだと思ってたし、虹コンに入ってからもすぐ辞めたくなって、3カ月くらい家から出ないでお休みして。当時はご迷惑をおかけしました、本当に(笑)。

もふく 「山手線に乗れません」って謎の理由だったよね(笑)。ちゃんと理由を聞いても、当時まったく理解できなかったのを覚えてる。

根本 復帰したあとに、MV撮影で初めて水着を着たときに、もふくさんから「根本、いいもん持ってるじゃん」って言われたんですよ。他人から褒められたことがなかったので、自分にも褒められるところがあるのかって新鮮な気持ちになったのが最初です。

自分には何もないと思ってたけど、武器があるんだって思えた。自分なんか……ってゼロだった自己肯定感がちょっとだけ上がりました。初めてグラビアをやったのは、『BUBKA』だったと思うんですけど、自分のためにロケバスが出るってスゴい!って思ったのを覚えてますね。

私とぺろりん(鹿目凛、でんぱ組.inc)はふたりでグラビアをやることも多いんですけど、私たちを応援してくれるファンの中には、女の子がすごく多いんです。

もふく グラビアが好きな女の子って、実はけっこうたくさんいるんだよね。

根本 はい。グラビアに対する同性からの反応もどんどん増えていって「ねもちゃんのグラビアを見て、自分の体が好きじゃなかったけど、胸が大きいことに誇りを持てた」とかうれしい言葉がもらえるようになりました。そのほかに「服のサイズが合わなくて困ってる」って相談を受けることもあって、グラビアをやっててよかったなと思うことも多いです。

もふく ねもちゃんは「自分がこうありたい」「こんなふうに見せたい」って美意識がしっかりとあるんですよ。歌やダンスもそうだし、グラビアについても自分を客観的に見て、研究して。

根本 確かに、アイドルになってからは、自分がゲームのプレイヤーになって「根本凪」っていうキャラクターを作り上げてるイメージはあります。素のアバターだったのが、グラビアをやったことで胸のパーツがついたり、スキルをアップさせたり、衣装の着せ替えをしたり……みたいな。

グラビアでは、女の子が見てもかわいい、憧れるグラビアを見せたいって気持ちが常にありますね。

もふく グラビア業界ってどうしてもメイクや衣装が男性の理想みたいな目線を意識したものが主流ですからね。メイクをなるべく薄くして、自然体みたいな。

根本 男の人って女性のすっぴんに幻想を抱き過ぎな気もするんですよ。ほぼメイクをしないで撮って、化け物みたいな写真が上がるときもあって。

もふく すっぴんに裸足で布の小さい水着を着た状態で、スタイルがよくてかわいいヤツなんて、世の中の0.1%もいないんですけど……っていうのはわかってほしいですね(笑)。

虹コンのMVでも、特に近年は水着に合わせてアクセサリーをつけて、ヒールの高いサンダルを履いて“トータルで見てかわいい“ってバランスを目指していますね。

えなこさんの登場で状況が変わった

根本 虹コンのMVのときは、水着選びというより洋服を選ぶ感覚に近いですね。

もふく メイクも衣装も「私、かわいい!」って本人たちの自己肯定感が上がるようにしないと、表情にも如実に現れますね。

それぞれが自分の体について「ここは見せたくない」とか「こういう形の水着がいい」って考えを持っているから、たくさんの種類をフィッティングして、上下で違うのを着たり、2枚重ねたりしながら、しっくりくるものを選ぶ。毎年みんなで水着を着るMVを撮ってきたから、年に1回は事務所のレッスン場に敷き詰められた水着の中から、自分が好きなものを一斉に選ぶっていうタイミングがあります。

虹コンのメンバーは不思議と「水着はNG」って言う子はいなかったんですけど、着るものは自分で選べること、うちの事務所のスタッフは女性が多いことが関係しているかもしれません。

根本 女性スタッフが多いから、かわいいと思う基準がある程度共通してるし、褒めてくれるし、性的な目線よりもかわいさの話ができる。最初に仕事で水着になるときの状況によって、その後のメンタルが大きく左右されると思います。

もふく 最近はみなさん女性目線でかわいい感じの衣装も持ってきてくれることも多くなりましたけどね。最終的にはやっぱりナチュラルなものに落ち着いたり(笑)。

根本 男性向けの雑誌でも、えなこさんの登場でかわいいコスプレ寄りの衣装のグラビアが増えて、状況がすごく変わった感じはあります。

もふく コスプレっていうコンセプトをかませることで、女性から見てもかわいい感じの装飾やメイクができるっていうことだよね。

根本 私とぺろりんの写真集(根本凪&鹿目凛 1st写真集『ねもぺろ』/TWJ BOOKS)は、クリエイターの木村優さんに監修していただいて、自分たちのやりたいことをいろいろと詰め込んだので、女の子たちからも評判がよかったです。ぺろりんが髪の毛から体まで生卵だらけになった写真もあって、すごくマニアックでアートなテイストだったけど(笑)。

もふく あれ、本当にやるんだ……って思ったよね(笑)。

──水着グラビアをやることで、アンチコメントが多いとも語っていましたが、どのようなコメントが来るのでしょうか。

根本 それが「体はいいけど、顔がブス」とか、ひどいことを書き込む人たちもいるんですよ。

もふく 最悪。

根本 「体は何点、顔は何点」みたいな。そういう人たちって、ひとりの人間としてじゃなくて、顔と体を切り離して評価するんですよね。


性的なことをすべてネガティブに捉えるべきではない

──認知の歪んだ痴漢が、「露出度の高い服を着ている女性が悪い」と言い訳するケースと似ているように感じます。当たり前だけど、水着グラビアをやっているという理由で、セクハラの投稿をしていいはずがないという。

根本 あと、インスタグラムの質問とか、ほかの人からは見えないところで変なことを書いてくる人はすごく多いです。

もふく そういうひどいことを頭に思い浮かべるのと、実際に言葉にして伝えることはまったく違うことはわかってほしいですね。

根本 私は「水着グラビアはアートだ」と思ってやっているんですけど、それは現場のカメラマンさんやメイクさん、スタイリストさんたちと一緒に真剣に作品づくりをしているからでもあるんです。性的な刺激をするとかは考えずに、アイドルとしての衣装を着てMVを撮ってるのと同じ気持ちで作品に挑んでます。自分の体を使った表現だけど、言い換えると「描いた絵を見てもらう」感覚に近いかもしれません。

実際、撮影の裏側を見てもらったら、体のラインをきれいに見せるために、カメラマンさんがすごいつらい態勢で撮影してたり、私たちもすごい筋肉を使うポーズで体を止めていたりして。髪の毛やメイクもミリ単位で直しながら撮影をしてるんですよね。

「カメラマンも下心があるだろう」とか、エロ漫画の読み過ぎだろって思うクソリプも多いけど(笑)。人によっては撮影が終わるまで食事も制限して、メイクやスタイリストさんたちは服や髪をミリ単位で調整して、カメラマンさんもあらゆるアングルを模索して……って、かなりストイックな現場なんですよね。

──別の取材で、でんぱ組.incや虹のコンキスタドールのプロデューサーのひとりであるYumikoさんも「人間の肌よりきれいな服なんてない」と言っていましたよね。もふくさんやYumikoさんが活動してきたアートの文脈では、人体の美しさを賛美するヌードの絵や写真は当たり前に存在するわけで。

もふく そうですね。水着を着た姿に対して「セクシーだね」って思ってもらえるのは素敵なことなんですよ。露出度の高い衣装を着るビヨンセとかセレブでもそうじゃないですか。「どう? 素敵でしょう?」って、全世界をひれ伏せさせる感じ。

男性が興奮することに対して「私たち女性ってセクシーで美しい。ほら、男性のみなさん、魅力的でしょう?」ってマインド、全然いいと思うんですよ。

日本人って、性的なことに対して表ではネガティブに捉えがちだけど、あっけらかんと「セクシーで素敵」って目線があってもいいと思います。もちろん、本人がやりたくないのに事務所が強要するのは論外ですけど。

根本 そうそう。水着の写真に対して「セクシーだね」って目で見てもらったり、言ってもらうのは全然いいんですけど、そのラインを越えて、口に出すのもおぞましい、汚いクソリプを送ってくる人が多いので。

──面と向かってそれを言えるのか?ということをネットで書き込んでしまう人が多いと。

もふく いや、なんなら面と向かってすら言ってしまう人もいるんです。「セクシーだね、きれいだね、最高!」って言うのはいいけど、ラインを越えちゃう人がいる。

そういうことはやめさせていく必要があるけど、セクシーだとか、おいしそうっていうシズル感に対しては、作り手もそれを狙って作っているわけだからね。性的なことをすべてネガティブに捉えるのは違うのかなと思います。

インタビュー後編

水着グラビアは“強くなれる魔法”だった。ひきこもり経験者の根本凪が得た「自分も救われている」仕事のやりがい

根本凪ソロ公演『月と、真っ赤な目をした兎の夢』

日時:4月30日(土)17時〜
会場:東京キネマ倶楽部
出演:根本凪
ゲスト:相沢梨紗(でんぱ組.inc)、大塚望由・鶴見萌・中村朱里・大和明桜(虹のコンキスタドール)、電影と少年CQ
ナレーション:陶山恵実里
チケット料金:5,000円〜
配信視聴チケット: 2,000円(販売期間:5月3日21時まで ※視聴は同日23時59分まで)
特典画像付き配信視聴チケット:2,500円(販売期間:5月7日21時まで ※視聴は同日23時59分まで)

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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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