Creepy Nutsの異質さ
──2021年に話題になったラジオは、世間的な話題にもなった出来事が多かったかもしれません。
奥森 そうですね。でも私は、世間的な話題になることがラジオじゃないなと思っているところがあるんです。どうしても最近は、ラジオでの発言がネットニュースになったり、テレビで取り上げられたりするじゃないですか。それ自体が悪いことだとは思わないし、取り上げられることによってラジオの魅力や発言自体が多くの人に届くよさもあると思うんです。
でも個人的には、ニュースにならないようなことを話しているのがラジオのいいところだと思っています。無駄だったりとか、毒にも薬にもならない、大して実にもならないような話をしているのがラジオの魅力のひとつだと思っていて。
──それでいうと、『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)クイズ「GReeeeN or Green Day」回は、その象徴みたいなものですよね。
あの絶妙なクイズを出題した人はすごいですよね。事前準備があったわけじゃなさそうでしたし。そういうラジオこそ最高だなって思います。トークしようと思っていたことや、用意していた企画もあったかもしれないのに、それをやめてまでも「GReeeeN or Green Day」をやりたくなっちゃうっていう。やってしまう、できてしまうっていうのは、ラジオらしい自由さがあっていいですよね。
──リアルタイムのリスナーたちの熱狂が、ツイッターのタイムラインを埋め尽くしていた印象があります。
奥森 「GReeeeN」がツイッターのトレンドに入ってましたからね。それでGReeeeNのスタッフさんが反応しちゃうっていう(笑)。しかもそれで、「GReeeeNのスタッフさんは反応してくれてるけど、Green Dayのスタッフさんは反応してくれるかな?」みたいなくだりがあったのもおもしろかった。世界一のDJと国民的ラッパーがGReeeeNとGreen Dayを間違えちゃうっていう姿の親しみやすさも、好感が持てますよね。
4月から時間帯が上がって、『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』になるのも納得です。パーソナリティを始められたころはまだ今ほど国民的なレベルでの知名度はなかったのに、活躍の場が広がり、発言力も高まっていって、それらが如実にラジオにも反映されていってる。アーティストが“笑える”ラジオをずっとつづけて、知名度も上がっていって、ラジオ自体も影響力を持っていって……なかなかないことじゃないですか。もはや、実力派若手芸人と言っても差し支えない……(笑)。
──Creepy Nutsのおふたりは、ほかのパーソナリティとの交流も多いですよね。オードリー若林(正恭)さんや三四郎さん、佐久間(宣行)さんなど。
奥森 今や『オールナイトニッポン』を支える重要な存在ですよね。私が行った2019年の「ラジオパーク in 日比谷」で、佐久間さんとCreepy Nutsのおふたりがトークショーをされていたんです。そこで、松永さんがリフティングをする時間とかあって……観ている側としては「すごいDJなんだよね? この人、若手芸人じゃないよね?」みたいな気持ちになったんですけど、なんでも全力でやっている感じが最高だなって。
おふたりとも、伝えたいことは自分の言葉にして伝えてくれるし、アーティストとしてヒップホップを伝えたい気持ちも欠かさないじゃないですか。私は今までアーティストの方のラジオをあまり聴いてこなかったんですけど、Creepy Nutsさんの番組を聴くようになって「あ、この日本語ラップいいな」とか思うようになりましたから。