野心みたいなものは？

それはありますよ。でも「やりたくないけどやるべきだな」ということはやるけど「これ違う気がするな」ってことはやらないですね。たくさん考えた上で、近道に見えてもぶれちゃうことはあんまりやらないかな。

自分がやってて、ふたりがやってて楽しいというのが一番大事。

そうですね。視聴者さんに求められてると感じたことをやるのが正しいときもあります。「楽しい」とは何か、けっこう冷静には考えるかもしれないですね。

結局自分の人生、この本もそうですけど、振り返ったときに誇れるほうがいいじゃないですか。なのでわりと考え方は変わってはないかもしれないですね。

僕はそもそも「実は嫌だった」みたいなことは起きないタイプというか（笑）、普通に嫌なことはその場で嫌だって言ってきたし、伝えてきたし。そういう意味では、見たい景色を見るために努力はすべきだと思うんですけど、でもやりたいこと楽しいことをやることが自分たちの見たい景色につながるから、最初から自信があったんです。演者的に幸せじゃない無理はそもそもそんなに存在しなかったですね。

やっぱり……活動をつづけるにつれて、まわりに能力の高い人がどんどん現れていくんですよね。その濃度が濃くなっていく。仕事としてつづけられなくなる人も出てくる中、そのふるいにかけられて、残った人たちなので。そこで自分の強みを見出すのは難しいなと誰もが思うと思うんですけど、僕はコンビという存在として劣ってるなと感じたことはない。すごい幸せではありますね。

“YouTube界のNHK”と呼ばれていたことに関してはどうでしょうか。プレッシャーに感じることはありましたか？

トミーはそうだったかな。

僕はそもそもそういう人間ではないんで（笑）、コンビの性質としてそう見られるのかという感じでした。でも撮影のときに「それやめて」とか言われたことないんですよ。僕がちょっとガラが悪い動きをするとして、カンタが笑ってるのであればそれはそれで僕はオッケーだと思うけど、その基準とかを意識したことは一度もない。

ただそこにまわりがNHKをイメージするとしたら、僕個人としてはギャップは生まれていくという状況ではあったとは思いますね。

昔と違って、今のYouTubeは品格が上がってやっちゃいけないこともむしろ多いですよ。僕らが特別ルールを守ってたわけでもないけど、その一線を越えたことはないかもしれないですね。でもNHKらしくあろうとは思ったことはないです（笑）。

俺が下ネタを言ってそれをカンタが笑わなかったら、言っても意味がわからない（から言わなくなる）ってことです。そしたら自ずとNHKみたいな呼ばれ方をするようになったと。

私はNHKというよりマンガっぽいというかファンタジーの世界の方々という印象がありました。アニメの主人公みたいな。

『クイック・ジャパン』での特集のときには毎日投稿してて、動画尺も短かったりしたので、より明確にわかりやすい動画を作ってたんですけど。毎日投稿やめてからはもっと……人間味が出てきた気がします。

人間味。

QJのときに突然村にお連れしたのも、何か使命感があったんですよ。連れて行かなければいけないって。YouTuberって自分たちが一番わかってるじゃないですか。やっぱり取材してもらえるんだから、一番YouTubeっぽい部分を味わってほしい。それは部族のお迎えみたいな感じで……。

ああ！　儀式みたいな。

そうそう。こんぐらいするんだぜっていう感覚はやっぱあったので、それも僕らだし。でも肩の力はいい意味で抜けてきたのかなっていうのは思いますね。

ファンタジーの世界でもあるかもしれないですけど、この本は生身の言葉で書かれています。