水溜りボンド「自分は何がしたかったのか?」トミーとカンタが見つけた”大切なもの”

2022.3.31

文=西澤千央 写真=時永大吾 編集=田島太陽


水溜りボンドのカンタとトミーの共通点は「お笑いが好き」「楽しいことが大好き」。それ以外、育ちも気質も真逆なふたりはコンビを組み、やがてYouTubeの世界で登録者数400万人を達成、YouTubeを代表する「コンビ」になった。

出会う前の「ひとり」だったときから、水溜りボンドとしてYouTubeを駆け上がっていく瞬間、そしてコロナ禍での報道を受けてトミーが休んだ半年のこと、改めて考える「コンビ」という存在……水溜りボンドの現在過去未来をふたりそれぞれの視点で綴った『ふたり。』(幻冬舎)が発売された。

2019年に『クイック・ジャパン』表紙インタビュー(vol.142/2019年2月発売)を担当したライターが改めて聞きたい、「人間」トミーとカンタについて。


池に落ちて、たい焼きをもらった日のこと

発売中の『ふたり。』(幻冬舎)

『クイック・ジャパン(QJ)』で初めて動画クリエイターとして表紙にご登場いただいたのが水溜りボンドさんでした。当時反響はいかがでしたか?

めちゃくちゃ反響すごかったですね。それまでも雑誌に取り上げられたことはありましたが、QJが出たときの反響はちょっとエグかった。一番大きい反響だったと思います。

QJはずっと買ってたんで……自分たちが出るなんて嘘みたいだなっていう。本屋さんで見たときはちょっと変な気持ちでした。

そのときの取材を担当させてもらったのですが、今までいろいろな密着取材をしてきた中で一番あのロケが印象に残ってます。

きつかったからですか(笑)?

普通何時から何時までここで撮影をやってとかスケジュールがある程度決まってるじゃないですか。それが本当、突然「村に行こう」となって、気づけば車で山に向かっていた(笑)。

ドラマティックだったので覚えています。あと、帰りにサービスエリアでたい焼き買っておふたりに差し入れたときにめちゃくちゃ喜んでくれて。

たい焼きが一番よかったもんね。あったかいたい焼きでしたね。

その前に俺、池に落ちてたんだよね……だからよけいに(注:真冬)。

たい焼きにこんな喜んでくれるなんて、なんて素敵な若者なんだろうと思いました。

そこでですか? やばいな、次にたい焼きもらったときのリアクションむずいね。「こいつら変わっちゃったな」って思われたくないし。

けど2回目だから、どうしてもリアクションは下がり気味だしっていう。

『クイック・ジャパン』vol.142
『クイック・ジャパン』vol.142(2019年2月発売)

(笑)。当時車の中でもずっと編集されて帰ってからもずっと編集……おふたりの生活はどこにあるんだろうとも思いました。

「生活」はなかったかもしれないです。

毎日投稿したときの自分って思い出せるものですか?

思い出せはします。

動画で残ってるっていうのはたぶん大きいですね。今も毎日はやってるんですけど、ただあのときは「毎日出す」っていうルールがあったんで、取りこぼせないっていうプレッシャーは体にかけてたんだろうなあと思います。

今回の書籍『ふたり。』には、取材のときにはわからなかった水溜りボンドの原点みたいなものも垣間見えて、幼少期のころのお話とか。すごくおもしろかったです。本を出そうと思われたきっかけは何かありましたか?

最初幻冬舎さんからお話をもらったときは、それこそ僕らの中では『クイック・ジャパン』があったんで、ちょっとハードル上がり気味というか、クリエイターとしての水溜りボンドに関してはけっこうしゃべっていたので。

なので今回の本では、まだ「ひとり」と「ひとり」だったときから、どういう物語を経て「ふたり」になって、そこから今どこに行こうとしているのかっていう話ができたらいいなと。

「同じ過ちを犯して、またカンタに会いに行く」

実際書いてみてご自身の中で変わったことはありますか?

そうですね。動画では1日ごとの出来事は残っているんですけど、自分の人生がひとつの作品になることはなかった。改めて読み返しても、確実に自分がやってきたことしか書いてないので、初めて客観的に自分の人生を見て、ひとつ自信にはなりましたね。これは自分が一番読んで楽しいんだろうなと。

そうですね。この本を制作してるときは、活動自粛してる期間とも少し被っていて。やっぱりいろいろ考えましたし、その瞬間瞬間でいうと、どうしようかなっていう気持ちになることが多くて。そういう意味では自分の人生や気持ちを文字で見ることで、自分が何がしたかったかとか、どうありたかったとか、水溜りボンドってどういう存在なのかをしっかり再認識できるなと思いました。

気づかない自分に気づけるじゃないですけど、より深く再認識して、それが今につながってるともう一度確認できて。本当にちょっと支えになりました、この本は。

すごく正直に書かれていますよね。

それは意識しました。YouTubeを6年7年やってきて、自分を大きく見せようとしたこともありましたけど、こういう本になるからこそ素直に話せたところもあります。

トミー(ロンT¥5,940/AIVER(Sian PR) パンツ¥5,940/remer(Sian PR) Sian PR 03-6662-5525)

本の中で「生まれ変わったらどうしたいか」と聞かれたときに、トミーさんが「できる限りの努力をして全く同じ過ちを犯してまたカンタに会いに行く」って、この一文に泣いてしまいました。「また出会いたい」ではなく「努力をして過ちも犯して、会いに行く」というのが。

カンタとはほんと育ち方も趣味も全然違うし、唯一の接点がたぶんお笑いにあったと思うんですけど。僕が浪人してなかったら、一個学年も違うし。最初に組んだコンビでもなく売れようと思って組んだコンビでもなく、本当になかなかない奇跡……なんていうと安っぽいけど、本当に見たことない感じで出会ったふたりだと思って。

過去のコンプレックスも、ここでコンビ組めたことで結果的には、自分にとってすごく大切なものに思えるんです。だからどこも変えちゃいけないのかなっていうのはちょっとありますね。

出会ってどれぐらいのときに「確信」を感じましたか? 水溜りボンドというコンビへの。

コンビ組んだときですかね。まわりにも言ってました。

僕はそう言い切るトミーをめっちゃかっこいいなって思って聞いてました。僕としては、おもしろいことしたい、お笑いもやりたい、映像もやりたい。で、やってみたら楽しい、将来もつづけたい、たくさんの人に見られたほうがやっぱうれしいし、自分たちってやっぱおもしろいなって思いながらがんばってきて。

すごい全力で日々やってたんですけど、確信を得たことはなかったですね。でも間違いなくやってて楽しいっていうのは常にあった。

この本を読んで、「成功」ってきっとお金じゃなくって、こういう「相棒」を見つけることなんじゃないかと思いました。そしてそういう人といざ出会ったとしても、いろいろなことが起こる中でその関係性を続けて深めていくのはすごく難しい。

私が2019年にインタビューしたときよりも、今のほうがまたずっと深いんじゃないかとも思います。

そうかもしれないですね。

僕はほんと感覚変わってないです。人気者にもちろんなりたいし、たくさんの人に見られたいけど、そのために楽しくないことをするんだったら、見られなくてもいいから、大切にすべきものがほかにある気がする。多くを望んではないかもしれないですね。

村に行ったのは「YouTuber」としての使命感


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西澤千央

(にしざわ・ちひろ)1976年生まれ。神奈川県出身。実家の飲み屋手伝い→ライター。『クイック・ジャパン』(太田出版)や『文春オンライン』、『GINZA』(マガジンハウス)などで執筆。ベイスターズとねこと酒が好き。